森脇良太が選ぶ対戦して嫌だったFWトップ10
昨シーズンを最後に現役引退した森脇良太氏に、自身がこれまで対戦してきたなかで嫌だったFWを10人挙げてもらった。スピードのある選手、ポストプレーがうまい駆け引き上手な選手たちに苦しめられたという。
>>前編「森脇良太が選ぶJリーグ最強ベストイレブン」
【動画】森脇良太が選ぶ対戦して嫌だったFWトップ10↓↓↓【スピードが脅威、ドリブルで苦戦】
10位 永井謙佑(名古屋グランパス)
彼の特徴はスピードで、背後に抜ける速さは対戦していて嫌でした。前にプレッシャーに行って後ろに広大なスペースを空けると、永井選手がそこに入っていくんじゃないかという恐怖がありましたね。90分間、気を休める時間を作れないプレーヤーでした。
ポストプレーをする時はガツガツ行けましたが、スペースを与えるとめちゃめちゃ怖い。僕がプレーするチームは前からプレッシャーを掛けるチームが多かったので、背後を突かれるシーンが多かったですし、永井選手は大きな脅威でした。
宇佐美選手はトップ下や2列目でのプレーが多いけど、FWでもプレーすることもありますし、対戦する時はものすごく嫌でした。彼はドリブルで仕掛けることができるので、その対応で苦戦を強いられました。
プレーの幅が広いので、シュートを打たれると思って全力でアプローチしたら簡単に切り返されて運ばれるシーンがありましたね。パスも出せるし、シュートもワンステップで逆サイドにおしゃれなゴールを決めることができるので、どうやってマークしたらいいのかずっと試行錯誤しながら対戦していました。宇佐美選手にボールが入る時にできるだけ寄せて、しつこく納豆のような粘り強さを出したいと思ってプレーしていました。
現日本代表のコーチですが、遼一さんの何に苦しめられたかというと、ポストプレーですね。受けに行くタイミングがめちゃめちゃ上手。中盤の選手がボールを持って顔を上げてパスを出す時にボールを受けに行くので、タイミングと間合いが絶妙でした。
あとはポストプレーをしつつゴール前にも入っていけるので、「いつの間にゴール前にいるの!?」というシーンがたくさんありました。DFにとって何が嫌かって、クロスがあがる時に常に背後を取られることです。DFはボールと相手を見ながらプレーしなければいけないんですけど、背後を取ってくる相手につこうと思ってどんどん下がってしまうと今度は前にポジションを取ってくる。駆け引きが非常に上手でした。
【駆け引き、ポストプレー、裏抜け】
7位 田中マルクス闘莉王(元浦和レッズ、名古屋グランパスほか)
FWもやってましたから! 登録はDFかもしれませんが、FWとして挙げさせてください。オーラがすごいんですよ。近寄ったら火傷してしまうんじゃないかというくらいの熱さが体中から出ているので、大変です。闘莉王さんに激しく当たろうものなら「触ってんじゃないよ! 正々堂々とプレーしろよ!」と言われて、メンタル的にやられてしまうところがありました。
闘莉王さんが競り合いに強い分、DFは先に飛ばなくちゃいけない感覚になるので、自分のタイミングで飛べないんですよ。だから闘莉王さんとマッチアップする相手はボールを後ろにそらしてしまうんですよね。そんな時に闘莉王さんは飛んでいなくて、簡単に胸トラップしてシュートを打る。「そういうパターンもあるのね。
大迫選手のポストプレーは異次元でした。何度もマッチアップしましたが、インターセプトできると思うタイミングでも全くできなかったです。インターセプトしようと思うと反転されて僕らのゴールにボールを持ち運ばれるシーンがたくさんありました。得点感覚もすごいですし、いろいろなことができるプレーヤーですね。
スピードもパワーもシュートセンスもあるし、パスも出せる。世界でも活躍しましたし、日本で彼を止められる選手はなかなかいないと思います。僕には「誘ってんじゃん」という迷言なのか珍言なのかわからない言葉がありますが、大迫選手は相手に「ハンパない」と言わせるくらいですし、どの相手も大迫選手には四苦八苦したと思います。
5位 佐藤寿人(元ジェフユナイテッド市原、サンフレッチェ広島ほか)
寿人さんは裏抜け、ワンタッチゴールがすごいと感じました。身長は高くないですけど、ポストプレーもうまいですし、相手がポストプレーに行くんだろうと思った時に、ボールを受けるふりをして背後を突く動きが抜群にうまい。後ろのDF陣は相手の背後にボールを送りやすかったですね。
例えば4バックでセンターバックがふたりいたら、常にその中間ポジションを取るのも寿人さんのうまさだと感じました。相手が「どっちがつくの?」という状況を作れるのが、よさのひとつだと思います。
シュートもめちゃめちゃ上手ですし、そのセンスを出せていたのは日々の努力。毎日のようにシュート練習をしていたので、努力しなければ成功をつかみ取れないと、寿人さんを見て感じることができました。
【片手だけで跳ね除けられた】
4位 大久保嘉人(元ヴォルフスブルク、川崎フロンターレほか)
川崎の嘉人さんのイメージが強烈に残っていますが、対戦していて嫌でしたね。ゴール前に入っていくすごさもありますけど、ミドルシュートも打てますし、シュートのバリエーションが豊富でした。ゴリゴリ仕掛けてくるのも嫌でしたね。ゴリゴリ来られると体力も奪われますし、キツい時にそういうプレーが出てくるのは相手にとってものすごく嫌です。
プレーヤーとしてのテクニック、シュートセンスは抜群なんですけど、ちょっと怒りっぽいところがあるので(笑)。レフェリーからイエローカードをもらったりしていました。だけどあのエネルギーが嘉人さんのゴール量産にもつながっていたと思うので、エキサイトするのはひとつの大きな魅力だと思っています。
3位 ジュニーニョ(元川崎フロンターレ、鹿島アントラーズほか)
ジュニーニョさんは強烈でしたね。スピードは異次元でした。
シュートセンスも抜群ですけど、右利きなのに左足で上げるクロスがめちゃくちゃ上手なんですよね。DF目線で言えば、右利きの選手が左サイドに入った時には、カットインからのシュートや右足のクロスが嫌なので、どちらかと言えば相手の右を切るんですけど、ジュニーニョさんは左足でピンポイントのクロスをあげられるので、異次元だなと。
ジュニーニョさんとの対戦では、中盤でボールを持った時は冗談抜きで10メートルくらい間合いを取っていました。ゴール前でそれではやられるのでもうちょっと寄せますけど、それくらい怖い選手でした。
2位 フッキ(アトレチコ・ミネイロ)
最初に川崎でプレーしている時に、キャンプで初めてフッキ選手を見ました。僕も当時は広島ユースでキャンプに帯同させてもらって、トップチームの試合にフッキ選手も出ていたんですけど、風格もプレーも28歳くらい。川崎がすごい選手を連れてきたと思ってメンバー表を見たら、「18歳!? 自分と同じ!? 嘘でしょ!?」って。こんな選手がJリーグにいて、自分はJリーガーとしてやっていけるのかと不安を抱きましたね。
それから僕も広島でプロになって、1年目に試合に出られず愛媛FCに武者修行に行って初めて対戦しましたけど、筋肉がさらについていました。2、3人で行きましたけど、片手だけで跳ね除けられてゴール前に行かれたので、やっぱりJでやっていくのは大変だと思いました。
ACLでは何年ぶりの対戦だったんだろう? 「もうやれるぞ」と思っていきましたけど、やられましたね。
【別次元のプレー】
1位 興梠慎三(元浦和レッズ、鹿島アントラーズほか)
仲がいいという情が少し入っているかもしれないですけど(笑)、それを除いても興梠慎三は別次元でした。全部がすごいです。
同学年で鹿島時代も対戦していましたけど、僕が広島ユースで慎三が鵬翔高校だった時に高円宮杯で対戦しました。彼に広島ユースはかなり苦しめられました。当時はスピードやドリブルで勝負していましたけど、プロになって、そして浦和に行って、ポストプレーやゴール前でのワンタッチシュート、コンビネーションをさらに極めていったプレーヤーだったと感じています。これからプロを目指す選手には、興梠慎三のようなボールを受けるタイミング、ゴール前での駆け引きをしっかり見て学んでもらえたらうれしいですね。
体の無理が利くことも慎三のよさだと思います。難しいボールをトラップできる、収められる、ワンタッチで出せるというのが興梠慎三のよさだと感じています。体は硬いんですけど、プレーはしなやかで体の無理が利くのは、慎三の数あるすごいプレーのなかのひとつです。
森脇良太
もりわき・りょうた/1986年4月6日生まれ。