10月10日に韓国と、14日に日本と戦うブラジル代表のメンバーは以下のとおり。

GK
ベント(アル・ナスル)、ウーゴ・ソウザ(コリンチャンス)、ジョン・ヴィクトル(ノッティンガム・フォレスト)

DF
カイオ・エンリケ(モナコ)、カルロス・アウグスト(インテル)、ドゥグラス・サントス(ゼニト)、エデル・ミリトン(レアル・マドリード)、ファブリシオ・ブルーノ(クルゼイロ)、ガブリエウ・マガリャンイス(アーセナル)、ルーカス・ベラウド(パリ・サンジェルマン)、ウェズレイ・フランカ(ローマ)、ヴィチーニョ(ボタフォゴ)

MF
アンドレ(ウォルバーハンプトン)、ブルーノ・ギマランイス(ニューカッスル)、カゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)、ジョアン・ゴメス(ウォルバーハンプトン)、ジョエリントン(ニューカッスル)、ルーカス・パケタ(ウェストハム)

FW
エステヴァン(チェルシー)、ガブリエウ・マルティネッリ(アーセナル)、イゴール・ジェズス(ノッティンガム・フォレスト)、ルイス・エンヒキ(ゼニト)、マテウス・クーニャ(マンチェスター・ユナイテッド)、リシャルリソン(トッテナム)、ロドリゴ(レアル・マドリード)、ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)

サッカー日本代表との対戦が楽しみなブラジル国民 アンチェロッ...の画像はこちら >>
 多くのスターを生み出し、唯一ワールドカップ全大会に出場し、最多の5つのタイトルを誇るブラジル代表。
だが2002年以降はたび重なる挫折を味わってきた。6度目の優勝は、23年間、幻に終わり続けている。それどころか最近では出場権を手に入れるのさえも危うくなり、今回の予選では永遠のライバルであるアルゼンチンに屈辱的な1-4の敗戦を喫している。

 そんなブラジルの問題のひとつが監督だった。2014年以降、5人の監督が誕生しては去っていったが、失われた魔法を取り戻すことのできる監督はいなかった。特に2022年のカタールワールドカップ後にチッチが去ると、ブラジルのベンチは目まぐるしく変わり、なかには世界の強豪を率いるにふさわしくない者もいた。

【落ち着きを取り戻した選手たち】

 今年5月、この監督問題はやっと決着した。ブラジルの名にふさわしい名将がベンチに座った。数年越しのラブコールの末にイタリア人のカルロ・アンチェロッティが外国人として初めてブラジル代表監督に就いたのだ。

 もちろん、アンチェロッティが来たからと言ってすべてが劇的に変わったわけではない。滑り出しも決していいものではなく、初戦のエクアドル戦は0-0のドロー。過去のブラジル代表監督で、デビュー戦で引き分けた者はひとりもいない。そして本大会の出場権はどうにか手に入れたものの、予選の順位は5位。

南米予選で本大会に直接駒を進めることができるのは6チームだったから、ほぼギリギリだ。

 ただ、アンチェロッティが来るまでの5試合ですべて失点していたブラジルが、アンチェロッティ就任後の4試合は失点をたった1に抑えている。

 そして何より変わったのはピッチでの選手のありようだ。以前はまるでピッチで迷子にでもなったかのようだったのが、今ではその表情に自信が感じられる。

 アンチェロッティがブラジルベンチに座ってまずしたのは、選手たちと1対1で話し合うことだった。おかげで今、ロッカールームの空気は目に見えて落ち着いている。選手たちはアンチェロッティのことを「真のプロフェッショナル」「多くのアイデアを持っている」と称賛する。

 ブラジル代表監督はとんでもないプレッシャーにさらされる。勝利への義務、ミスを犯すことへの恐れ、マスコミからの非難、サポーターからの批判......。しかし百戦錬磨のアンチェロッティは、そんなプレッシャーにさらされても泰然自若としている。彼がブラジル人監督よりも優秀かどうか、セレソンに合っているかはまだわからない。しかし、少なくとも彼は選手たちに希望を与えた。

落ち着いた監督の姿に誰もが安堵し、だからこそ選手も冷静にサッカーができるようになった。

 サポーターやメディアの反応は概ね良好だ。サポーターは好奇心と期待の入り混じった視線を向け、ブラジルに来た日から彼のことを、親しみをこめて「カルリーニョ」と呼ぶ。メディアはピッチでの動きが組織的になったと評価し、解説者たちもみな、ブラジルは変わったと言う。

 カテナチオの文化を持つアンチェロッティのサッカーは、まずは堅実さを求め、そしてそのあとに華麗さが来る。創造性豊かなサッカー文化を誇ってきたブラジルのアイデンティティの危機になる可能性があるという危惧もあったが、そういう声は思った以上に小さい。

【新世代が才能を爆発的に開花】

 ただし、ブラジルの問題はもちろん監督だけではない。

 今回の遠征メンバーにネイマールは選ばれていない。ネイマールは10年にわたりブラジル中の期待を一身に背負ってきたが、人々の期待に応えることはできなかった。才能は間違いなくあった。しかしケガやピッチ外での論争、さらにメンタルの弱さが成長を抑えてしまった。

 ネイマールは長いこと代表で90分プレーしていない。

2026年6月までに、彼が世界の舞台に立てるレベルに復活している可能性は、ほとんどないと考えられている。つまり、かつてペレ、ジーコ、リバウド、カカらが纏ってきた背番号10のカナリア色のユニフォームには現在、正式な持ち主がいないことになる。10番のいないブラジルは、本当のブラジルではない。

 誰がその後継者となるか。これはブラジルサッカー界が直面している問題である。ネイマールに可能性がないとなれば、若手こそが希望だとも言える。

 確かにこの2年ほど、ブラジルは新世代が才能を爆発的に開花させている。アメリカで開催されたクラブワールドカップでは、パルメイラスの選手としてプレーした18歳のエステヴァンが世界にその名を知らしめ、その後、優勝したチェルシーに移籍した。その少し前にブライトンからチェルシーに移籍したジョアン・ペドロも、今やロンドンのアイドルである。レアル・マドリードと契約し、ブラジルの才能あふれるサッカーの未来を代表するエンドリッキもいる。

 アジア遠征の代表メンバーでいえば、レアル・マドリードで輝きを放つヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴやアーセナルのマルティネッリ、トッテナムのリシャリルソンがそうだ。

 ブラジルは急速に生まれ変わりつつある。

若い選手たちは新しいブラジルを築こうとしている。新生ブラジルにまだ明確なアイデンティティはないが、ひとつ確かなのは、今の若い選手たちの質の高さは前代未聞だということだ。これはアンチェロッティにとって何よりの朗報だろう。

 ブラジルのサポーターは何年も幻滅させられ、結果も美しさもないサッカーに疲れ果てていた。代表の試合でスタジアムは半分も埋まらず、テレビの視聴率も低下していた。だが今、セレソンは再びスタジアムを満員にし始めている。まだかつての熱狂はないにせよ、人々は自国の選手たちの活躍を見るために戻ってきている。

 韓国、日本との対戦も、多くの国民が楽しみにしている。

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