【駅伝】箱根駅伝総合優勝を目指す早大 花田勝彦駅伝監督が出雲...の画像はこちら >>

前編:花田勝彦・早稲田大学駅伝監督インタビュー

 今季の前半戦、学生長距離界で大きなインパクトを残したチームが早稲田大学だろう。トラックでは駅伝主将の山口智規(4年)が学生の枠を超えた活躍を見せ、佐々木哲と鈴木琉胤というふたりのスーパールーキーがチームに勢いをもたらし、ロードでは"山の名探偵"こと工藤慎作(3年)が存在感を示した。

夏合宿中に異例の合同取材日が設けられたほど、注目度が高く、学生三大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)では15年ぶりの頂点も視界に入っている。

 駅伝シーズン開幕を前に、9月28日のThe Road of WASEDA(ロード5km)で、選手たちは上々の走りを見せた。花田勝彦駅伝監督に、まずはこのレースの評価を聞いた。

【中間層の選手がロード5kmで13分台】

★The Road of WASEDA(ロード5km)の主な記録
工藤慎作(3年)13分44秒 PB 
吉倉ナヤブ直希(2年)13分44秒 PB 
堀野正太(1年)13分49秒 PB 
伊藤幸太郎(4年)13秒57秒 PB 
宮岡凜太(4年)13分57秒 PB 
小平敦之(3年)13分58秒 PB
間瀬田純平(4年)14分03秒 PB 
鈴木琉胤(1年)13分58秒 PB 
山﨑一吹(3年)14分38秒
*13分台及び箱根駅伝経験者の記録。PBは自己ベスト

――9月28日のThe Road of WASEDA(ロード5km)では、7人が13分台をマークするなど、手応えがあったのではないでしょうか。

「そうですね。走ってほしい選手が走ってくれて、全体的によかったと思います。なかでも、前回の箱根駅伝のメンバーに入りながらも走れなかった吉倉ナヤブ直希(2年)と宮岡凜太(4年)、また、伊藤幸太郎(4年)や小平敦之(3年)といった中間層がしっかり13分台で走ってくれました。本人たちにとっても、夏の練習の成果が出せたという手応えがあったと思います」

――吉倉ナヤブ選手は、工藤選手と同タイムでしたし、同じ組を走った中央大学の主力選手とも遜色ない走りでした。

「彼は練習では結構上のほうなんです。でも、今まで(5000m)13分台の試合を経験していないからか、最後に気持ち的に余裕がなくなることがありました。今回ようやく13分台で走ったので、(駅伝に向けて)少し目処が立ちました」

――工藤選手はチーム内1着。さすがの走りでした。

「前日は『(体が)ちょっと重いので動くかわからない』って言っていたので、『14分±10秒くらいかな』と工藤とは話していました。でも、走ってみたら後半上げることができました。走り終わった後はすごくいい顔をしていましたね」

――「体が重かった」ということは、工藤選手に限らず、このレースにバッチリ調子を合わせたわけではなかったということでしょうか。

「そうですね。約1週間前までは夏合宿を行なっていて、ある程度距離を踏んでいたこともあります。疲労を抱えたなかでどれぐらい走れるかが、今回のテーマでもありました。ナヤブや工藤らがしっかり13分台で走った一方で、疲労が抜けていなかったのもありますが、調子があまりよくなかった1、2年生もちょっと多かったかな」

【4年生中心に「一般組」も自信をつかむ】

――1年生の堀野正太選手もしっかりと存在感を示しました。ルーキーは鈴木琉胤選手、佐々木哲選手が、前半戦は目立っていましたが、いいアピールになったのではないでしょうか。

「堀野は、スタミナはあるものの、スピードが課題でした。(申告タイムが)一番速い組だったので、私には『いけます』と言っていたものの、周りには少し不安も漏らしていたようです。最後は少し置いていかれましたが、各大学のエースがいるなかで13分40秒台の自己ベストですから、すごく自信になったと思います。やってきたことがつながっているなと感じました」

――最初に名前が上がった伊藤選手と宮岡選手は一般組(*)の4年生です。スポーツ推薦組に負けじと、駅伝のメンバーに入ってきそうです。

「そうですね。ふたりは14分から14分10秒の間ぐらいと思っていたので、少し上振れしたかなと思いますが、うまくレース展開に乗れたのもよかった。

 宮岡はハーフマラソンの実績(自己ベスト1時間1分59秒)がありますし、夏もほぼ完璧に練習ができていました。幸太郎は練習の成果をなかなか試合で発揮できないことが続いていました。宮岡と共に練習量が豊富な選手ですが、試合前も不安のあまり練習量を落とせずにいたんです。そういった点を指摘して、『ここを走れないと先が見えてこないから、大事にいこう』と話をしていました。

 ふたりとも箱根駅伝を走るとしたら復路になると思うので、あとは単独で(5kmを)14分30秒から40秒で刻む力が必要です。そこに向けて一歩前進できたかなと思います」

*一般組/スポーツ推薦ではなく、一般入試や指定校推薦で入学した選手、または、附属校、系属校出身の選手

――小平選手も早稲田実業高出身の"一般組"の選手ですが、この夏は選抜合宿で見かけませんでした。底上げという意味では、そういった選手が13分台をマークしたのは大きかったのでは?

「小平は、妙高合宿でいっぱいいっぱいになって後半崩れてしまい、その後に体調不良で練習が抜けていました。また、就職活動で企業にインターンに行ったりしていたこともあって、全体とは少し流れを変えて、最後の選抜合宿には行かずに、(拠点としている)所沢で自分なりの調整をしてきました。

 去年もこの試合で自信をつけたので、今年もこの試合には調子を合わせてきました。記録としてはよかったと思います。

ただ、同じ組では箱根で争う帝京大の選手に負けていますので......(組1~9着を帝京大の選手が占め、小平は10着だった)。とはいえ、去年は最後に息切れしたので、これをきっかけに秋に上がってきてくれればと思います」

【駅伝への意識づけを強めたルーキー・鈴木琉胤】

――小平選手と同じ組では主力のひとり、間瀬田純平選手(4年)が14分3秒とタイムはまずまずでしたが、組13着でした。花田監督はどう評価されたのでしょうか。

「2kmぐらいで差し込み(腹痛)がきたらしいです。本当は13分台を出しておきたかったと思うんですけどね。間瀬田は、今シーズンの前半は就職活動をしていましたし、故障や体調不良もあってなかなか走れていませんでした。それを考えると悪くはないと思います。原因がはっきりしていますし、秋になると調子が上がってくる選手なので、そこまで心配はしていません」

――今年の箱根駅伝で6区を好走した山﨑一吹選手(3年)も気になりました。14分38秒かかっていましたが、なかなか調子が上がってきていないのでしょうか。

「山﨑も春に比べればよくなってきています。去年も夏までは全然よくなかったのですが、去年の今の時期と比べると、まずまずというところです。この夏は『箱根に向けた練習ができる体づくりをしよう』と話して、取り組んできました。

まだ3カ月あるので(調子が上がってくるのは)これからです」

――ケガ明けの鈴木選手は、7月の日本選手権以来の実戦。それでも13分台にまとめたのはさすがでした。

「妙高合宿では、少しロング走を入れつつも、ジョグがメインでした。紋別合宿の後半から全体練習に加わり、最後の菅平合宿はほとんど一緒にできていました。

 前半戦は試合が多かったので、当初は「秋は駅伝だけにしようか」と話していたんです。でも、思ったより調子が上がってきたこともあり、また、出雲の前に1本レースを走っておきたいという本人の意向もあったので出場しました。ただ、出力があまりにも大きいと出雲に合わなくなるので、(申告タイムが)一番遅い組で前半を、余裕を持ってゆっくり入るようにしました。

 どのレースでも鈴木は、最初から自分でレースを作ってきましたが、駅伝では周りの流れに乗って入ることも大事です。そういった点も意識して走っていました」

――3kmまで抑えて、残り2kmで一気にペースアップしたのはそういうことなんですね。それにしても、もう全然不安はなさそうですね。

「でも、まだ8割ぐらいです。出雲、全日本と試合をこなしていくごとに、もっと調子は上がってくると思います。

走り込み自体はほかの選手よりも少なかったので、全日本が終わったあとに少し走り込む期間を設けたい。ケガなくいけば、(箱根では)かなり走れるんじゃないかなと思います」

つづく

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