「それぞれが上(上位)で戦っていたと思いますし、狙ったとおりに今の力は出しきれたと思います」

 10月18日に行なわれた第102回箱根駅伝予選会で、中央学院大に続き、2位に入った順天堂大の長門俊介監督は、こうレースを振り返った。

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 スタート30分前の午前8時の段階では、気温が16.3℃と秋らしさも感じられたが、陽が差してくるとやはりまだ暑いなかでのレースが予想された。

「(レースを走る12人中)うしろの5人に関しては、涼しければ(5km)15分00秒くらいのペースで、周りの様子を見ながら判断しようと話しましたが、結果的には15分15秒ぐらいで走ったかなと思います。残りの7名に関してはある程度、力もついていたので『自分たちの感覚を大事にしなさい』ということで、あまり細かい指示を出さずに行かせました」(長門監督)

【前回シード権を逃した11位が力に】

 前回の箱根駅伝では、予選会10位通過ながら往路で一時8位に立つ好走を見せた。しかし、最終10区のシード権争いで敗れ、10位の帝京大に7秒差の11位でシード権を逃した。長門監督は、その悔しさとシード権が見えていた自信が今のチームを作っていると語る。

「選手たちはそれから悔しさを持って取り組んでいたと思いますが、一方で『やれる』という実感も持ってくれていたと思う。前を向いてスタートできたのが今のチーム(の形)になってきている要因。

 夏合宿もそれぞれがしっかりと、ベースとなるジョグのボリュームを増やしたなかで、練習を積めていました。夏の暑いなかで取り組んだので質が高まったというか、しぶとい走りができるようになったと思っています」

 今回、チームトップの1時間02分34秒で全体26位に入った吉岡大翔(3年)もまた、前回の箱根駅伝についてこう振り返る。

「悔しさもありましたけど、もしシード権が獲れていたら、『予選会10位でもシード権が獲れるんだ』という甘い考えが生まれたかなと思います。正直、獲れなかったからこそチームとして変われたところがあると思っています」

【今年のチーム状況は?】

 現在のチーム状況について、吉岡はこう話す。

「去年は、(予選会で)日本人2位になった浅井皓貴さん(現・トヨタ紡織)も、ケガをしていてうまくチームがまとまりきれず、本当にギリギリの状態でした。でも今回の予選会は、いい意味で誰を使おうかと迷うくらい(メンバーが揃っていた)。今回走れなかった野崎健太朗(2年)や三宅勇希(2年)も調子がよくて、僕も彼らの走りを見てみたいと思うくらいでした。

 今回走ったメンバーがそのまま箱根の16人にエントリーされるかはわからないので、もっと切磋琢磨しながら本戦に向かっていきたいと思っています」

 選手層が厚くなってきている状況だからこそ、予選通過を目指して走るというより、その先の本戦を意識した予選会であった。

長門監督も「だからこそフリーで走らせられる選手が7人いたということです」と笑みを浮かべる。

 そんな意識の変化は吉岡の走りにも出ていた。

「今回は正直あまり調子もよくなかったし、去年の(暑さによる)失速のことが頭にあって『攻めて足を引っ張りたくないな』と思っていました。日本人トップも頭のなかにはあったし、狙えたら狙うくらいの気持ちでいましたが、スパートをかけられた時も僕はうしろのほうで給水を取っていて対応できませんでした。

 できればトップは獲りたかったけど、まだ狙うのはそこではないというか、本番で勝てればいいかなって思っているので。ちょっと逃げのような感じになってしまうけど、そこは本番にとっておく感じで未来の自分に託そうかなと思います」

【箱根本番の目標は打倒・5強】

 こう話す吉岡は箱根本戦へ向けて、「(周りは)『2区を走ります』って言ってほしいかもしれないですが、前回走った7区をもう一回走って、駒澤大の佐藤圭汰さん(4年)の記録狙いに行くのもいいかなと思っています。自分の走りの特徴からすれば3区か4区が合っているかもしれませんが、どの区間にも対応できるのが自分の強みだと思っているので、そのつもりで準備していきたいです」とも話す。

 長門監督は箱根駅伝の目標を「やっぱり5強(青学、駒澤、國學院、早稲田、中央)を崩していきたいというのはあります。距離は全然違うけど、出雲駅伝の結果を見れば、崩れるポイントは必ず出てくると思いました。そこをしっかり目指してやっていきたいなと思っています」と話す。

 今回の予選会で10番手だったメンバーが1時間03分58秒という結果でまとめられたことは、「底上げができている」という手応えにもなった。

「総合力というところで言えば、今回は間に合わなかったけれど、春のトラックシーズンで頑張っていた池間凛斗(2年)や山﨑颯(4年)もいます。

吉岡以外にも流れを作れる選手を作っていかなければいけないけど、なかなか難しい2区を前回走った玉目陸(2年)が、今回状態の悪いなかでも1時間3分台でまとめる走りをしてくれたので、彼が経験者として上がってきてくれるといいなと思います。

 あとは特殊区間の経験者は残っているので、とにかく総合力で戦えるようなチームにしていきたいと思います」(長門)

 主将の石岡大侑(4年)は、「チームで目指すのはやっぱり本戦で、『そこに向かうために予選会は通過しないといけないよね』という感じの雰囲気で取り組んでいたので、今回(予選会)は目標を立てませんでした。そこがチームとして目指している箱根駅伝5位以上というところに繋がっていけるように、全日本、箱根と頑張っていきたいなと思っています」と言う。

 前回、7秒差に流した涙を吹き払うためにここまで過ごしてきたが、まずは力むことなく予選会通過を果たした。選手たちは明るい表情で、自分たちがどこまで戦えるのか期待に胸を膨らませている。

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