日テレ・東京ヴェルディベレーザ
眞城美春インタビュー(前編)

 細身の身体ではあるが、しなやかにボールをコントロールする。ポニーテールが揺らぐその背に刻まれるのは、憧れてやまない長谷川唯(マンチェスター・シティ)が背負ってきた日テレ・東京ヴェルディベレーザの背番号「14」。

そのエース番号を引き継いだ眞城美春は昨シーズン、2種登録ながらWEリーグでもプレー。その後、順調にトップ昇格を果たし、今やチームの心臓部を担うまでになった恐るべき18歳である。

 ピッチ上ではスキルフルなパス、全方向的な視野で攻撃を司る眞城だが、ふだんのその口調からは18歳の等身大の軽やかさ、芯のある物怖じのなさを感じる。その言葉から伝わってくるのは、彼女のサッカー観がいい意味でかなり成熟していること。それが力みなく自然体で伝わってくるのが、彼女らしさなのだろう。そしてそれこそが、眞城美春のプレーを支える芯の強さに通じているのかもしれない――。

日テレ・東京ヴェルディベレーザの「若きエース」眞城美春 WE...の画像はこちら >>
――昨年は、U-17女子ワールドカップ(ベスト8)を戦って、WEリーグデビューも果たし......ご自身でも当初、「チャレンジの年」だと話していました。

眞城美春(以下、眞城)昨シーズンの初めは、こんな年になるとは想像していなくて......。最初「チャレンジしたいな」って思っていたのは、ユース年代でしっかり結果を出すことだったんです。

 それが意外にも、WEリーグの試合にも出ることになって。チャレンジは、WEリーグでどこまできるか、ということに変わっていきました。まだまだですけど、(そのWEリーグでは)自分のテクニックやアイデアのところでは、通用する部分もあったし、自分のやりたいことはできるなって感じました。

――チームメイトとの"連係"は眞城選手の得意とするところですが、メニーナ(下部組織)からベレーザに昇格した際、強度面でも戦術面でもまったく躓かなかったというか、スムーズに移行したように見えました。

眞城 メニーナでも、基本的なサッカー観(や志向するサッカー)はベレーザと変わりませんから。フィジカル的にはメニーナのほうが弱いので、(周囲の選手との)距離感はメニーナのほうが近いですが。

 それで、ベレーザの試合では自分ひとりになっても(ボールを)奪われないように、個人のところの強度を意識してプレーしていました。

――WEリーグを1年間戦ってきて、ご自身が一番変化したのはどのあたりでしょうか。

眞城 昨シーズンは(当初)2種登録で出場していましたから、トップリーグでどれだけできるか、というメンタルでやっていたんですけど、(トップチームに昇格して)試合を重ねるうちに「チームの勝利のために」という責任感も出てきて。ただテクニックだけじゃなくて、球際での強さなども見せていけるようにならなきゃいけないなっていう意識もありました。

――眞城選手......成熟するテンポの速さがエグいです(笑)。

眞城 まだ18歳です(笑)。

――パス、ドリブル、シュート、FK......多くの見せ場を持っていますが、18歳の今、最大の強みは何でしょうか。

眞城 遊び心!

――いやいや......ですから、その域に入っていくのが早すぎますって(笑)。

眞城 自分はもともと、ロナウジーニョ選手や(長谷川)唯さんが好きなので、そういうのをやっちゃうというか(笑)。

――その遊び心を表現するためには、スキルが必要です。眞城選手はそれをどうやって身につけてきたのでしょうか。

眞城 小学生の頃は男子と一緒にプレーしていたので、自分がうまいと感じていなかったし、メニーナに入ってからもそうでしたから......。そういう自覚はあまりないんです。

 ただ、自分が得意で、自分のいいところを出せるのはゴール前とかですけど、左サイドからゴールに向かっていく角度、というのは自分でも好きなポイント。そこでなら、自分が好きなようにプレーできます。

――そこは、いわゆる"美春ゾーン"。そこで好きなプレーをするにしても、足元のスキルがないとできないと思います。

眞城 う~ん......小学生の頃、身体が小さかったので、スキルで勝負するしかなかった、というのはあります。あと、ドリブルスクールに通っていたので、そこでうまくなったのかな? シザースはずっと練習していましたから。止まったボールを速く跨ぐ、といったことをお父さんから「やれ」って言われて(笑)。

――これからまだ変わっていくと思いますが、今までで成長の濃度が濃かった時期はいつ頃でしょうか。

眞城 それははっきりしていて、中3~高1にかけての頃です。中2~中3にかけてはまだ(身体が)すごく小さくて、その後にコロナ禍で身長が伸びて、プレースピードが上がったのはあります。そこから、プレーの選択肢も増えました。

 中3の時って、メニーナが皇后杯でベスト4に入った年なんですけど、その年の夏の全国大会(日本クラブユース女子サッカー大会〈U-18〉)で早くに負けてしまって......。それ以降、皇后杯までの間が成長の期間になりました。

 夏の大会で負けた時の失点に自分が絡んでいて、結構怒られましたから(苦笑)。おかげで、守備力も上がりました。あと、攻撃で(前への)推進力がついたのもこの時期だと思います。

――そうして積み上げてきたものを引っ提げてWEリーグへ。昨季の活躍もあって、今季は相手のケアが増していると感じますか。

眞城 自分はあまり、そういうのを感じていなくて......。でも、1年目は「楽しい!」っていう思いだけで、ミスしてもチャレンジしまくれる年だったんですけど、2年目はしっかり結果を出さないといけないと思っています。

 昨年はポジティブなことは多くあって、それがあるから理想を高く持って「(自分は)どんどん上に行きたい!」と思っちゃうところもあったんですけど、2年目の今季は、チームを勝たせたい欲が出てきました。それを、自分が中心になってやっていきたいです。

――その思いの表れかもしれませんが、先ほどの"美春ゾーン"での難しい状態からのシュートでも、今シーズンはすごく落ちついているように感じます。

眞城 正直、点を決める時は何も考えていないんですよ。それでも、今までは結構(シュートを)外していたんですけど、今シーズンは落ちついて決めることができていて。自分でも何でなのか、ちょっとわかっていないんですが、決められる時は決まって"無"です(笑)。

――今季ここまでで、得るものがあった試合、いい課題をもらったなという試合などはありますか。

眞城 第6節のセレッソ大阪ヤンマーレディース戦。これまで、拮抗した試合では最後に決められて引き分けたり、負けたりする試合が多かったんですが、勝ちきることができました。

 また(チームの)課題として、ブロックを引かれた相手に対してどうするか、というのがあるんですけど、その試合ではハーフタイム中に選手たちで話し合って、ちょっと(いい形に攻撃を)変えることができたんです。

――そういう状況下にあって、眞城選手は意見を出せるタイプですか。

眞城 意見があれば、言うタイプですね。

この試合の時も、自分たち2列目の選手がもっと(前に)抜けたほうがいいんじゃないかって思って、それを伝えました。それで(後半は)自分がアクションを起こしたことで、いいリズムが生まれたんじゃないかなと思っています。

――今シーズンの目標について、眞城選手は「ふた桁ゴール」と言っていました。

眞城 あの......それは、自分としてはゴールとアシストを合わせてふた桁、というつもりだったんですが(笑)。でも、ゴールだけでふた桁、いきたいです!

――ベレーザは若い選手が多いですが、よく話をする選手は誰ですか。

眞城 同い年のミユ(松永未夢)です。けど今、(彼女は)ケガをして戦列を離れてしまっているので、モカさん(樋渡百花)といることが多いです。

 モカさんはFWですから(ピッチ上でも)そこへのタテパスを意識していて。実際、試合でも1回、いいパスが出たんですよ。だからこれからもっと、そういう関係を......え~と、なんて言うんでしたっけ、そういうの? 

――あうんの呼吸?

眞城 ちょっと違う(笑)! そういう感じの......。

――ホットライン?

眞城 それ! ホットラインを作りたい!

――今シーズン、ベレーザはWEリーグ、WEリーグカップ、皇后杯、AFC女子チャンピオンズリーグ(AWCL)の四冠を狙っています。ズバリ、それを達成するためのポイントとなるのは何ですか。

眞城 やっぱり浦和(三菱重工浦和レッズレディース)とINAC(神戸レオネッサ)に勝つこと。それぞれ、WEリーグではすでに1度負けてしまっているんですけど、AWCLを見据えてチームを作っていかなければいけないなかで、浦和とINACを圧倒したい、というのはあります。

 それには、チャンスを決めきる力は絶対に必要。ゲームのなかで押さえるべきポイント......ボールを失わなかったり、奪えたりっていう勝負強さも。それがないと、力のある相手には圧されちゃいますから。

 個人的には、試合のなかで「カウンターが来そう」「(ボールを)奪いたい」っていうところで、(相手に対して)もっと力強く行きたい。そういう意識は常にあって、以前よりも行けるようになってきている部分はあると思います。そこをさらに高めて、四冠、獲りに行きます!

(つづく)後編◆次世代のなでしこジャパンを担う眞城美春が描くビジョン>>

日テレ・東京ヴェルディベレーザの「若きエース」眞城美春 WEリーグでの躍動の理由は「遊び心」
眞城美春(しんじょう・みはる)
2007年2月5日生まれ。東京都出身。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属のMF。大田クラブ、バディーSCを経て、中学1年生の時に日テレ・東京ヴェルディメニーナ入り。2024-2025シーズン、2種登録ながらWEリーグに出場。2025年2月、トップチームに昇格。チームのWEリーグ初優勝に貢献し、自身はベストヤングプレーヤー賞を受賞。各世代別の代表でも活躍し、2022年U-17女子ワールドカップ、2024年U-17女子ワールドカップに出場。

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