SVリーグ注目選手インタビュー: 後藤陸翔/東京グレートベアーズ(前編)

 2024年4月19日、2024-25シーズンのSVリーグ・クォーターファイナルでジェイテクトSTINGS愛知に敗れ、セミファイナル進出が断たれた東京グレートベアーズの後藤陸翔は、コート上で人目もはばからずに涙を流した。

 顔を覆って肩を震わせ、なだめるチームメートの言葉にさらに大きくうなだれる。

その姿からは、この一戦に賭けていた熱い思いがひしひしと伝わってきた。

【男子バレー】後藤陸翔は半年前の号泣を経てさらなる高みを目指...の画像はこちら >>

「泣きましたね。懐かしいですね。ずいぶん前みたいに感じますけど」

 24歳のアウトサイドヒッターは少し照れくさそうに当時を振り返った。あれから半年、後藤にとって内定時代を含めると3度目のシーズンがスタートした。

「昨シーズンが開幕する前は代表に選ばれていなかったので、夏には練習する時間が存分にある。そこで自分の身体と向き合って、長いプランで考えたトレーニングをしたり、技術練習をしたりするんですけど、今回は短かったなと感じますね」

 バレーボールネーションズリーグ2025(以下VNL)を終えたあと、1週間の休暇を経て沖縄合宿からグレートベアーズに合流した。

「休みの間は(日本製鉄堺ブレイザーズの)森愛樹さんと、ポーランドでプレーしている中野倭さん(バルコム・カザニ・リヴィウ/元ウルフドッグス名古屋)と3人で和歌山に遊びに行きました。サウナに入ってリフレッシュできましたね」

 同じ近畿大出身の仲間と他愛もない話をし、笑い、リラックスした時間を過ごしたという。そんな後藤が今シーズン、最も力を入れて練習してきたのはディフェンスだ。

「特にサーブレシーブですかね。もちろん昨シーズンも力を入れて練習した部分ではあるんですが、今年はより一層、サーブレシーブに力を入れてきたという感覚です。

プレシーズンマッチなどでも成果がしっかりと感じられるので、充実した時間になったと思っています」

 もともと攻撃面ではスパイクの幅の広さに定評がある後藤だが、今シーズンに向けてはスイングのスピードを意識して練習を積んだ。「自分の長所を生かすスパイクが打てるように、フィジカルの向上にも力を入れてきた」と自信をのぞかせる。

【「手応えを感じています」】

「僕たちは"速いバレーボール"をコンセプトとして戦っていますが、試合やセットの終盤になると、トスが上がる選手って相手もわかるじゃないですか。ブロックが2枚、3枚来るのが当たり前なので、そこでどうやってスパイクを決めていこうかと考えたときに、ブロックより0コンマ何秒でも早く打ちたい。もちろんスパイクがしっかり打てる範囲ではありますけど、そうやってもっと決定率や効果率を上げていく必要性があるかなと」

 もうひとつ、後藤が心がけたというフィジカル面の強化は、見た目にも着実に表われている。トレーニングの成果で、体重は昨シーズンに比べて4キロ増えた。チームの栄養士、トレーナーの指導のもと、毎日、筋量や水分量などの数字をチェックして増やしたという。

「もうちょっと増やしてみた時期もあったんですけど、プレーして『身体が重いな』と感じたので、そう感じない程度に維持しています。今が今シーズンのベストではないかなと思っています。トレーニングの成果でジャンプ力はもちろん、スパイクの際に早く到達点まで上がれるようになった。手応えを感じています」

 目標設定をする上で刺激を受けたのが、日本代表での活動時に見た諸外国のチームだった。

 後藤は今年、初めて日本代表に選ばれ、VNL2025のメンバーにも登録された。

「いちばん印象に残っているのは、フランスです。

これまで映像で試合を見ていた印象では、日本にとても近いスタイルで、テクニカルなバレーボールをする国だなと。でも実際に近くで(トレボール・)クレブノ選手を生で見たときは、想像以上で驚きました。すべてのプレーのクオリティーが高くて。やっぱりすごいなあ、と。他の選手ももちろんうまいんですけど、彼は突出していますよね」

 クレブノは東京オリンピックで金メダルを獲得し、今年のVNLではベストアウトサイドヒッターにも輝いた選手だ。

「とにかくミスが少ない。こういうシチュエーションでは無理をしないで、こういったプレーをするんだなとか、参考になるプレーが多かったです。やっぱりフランス代表はオリンピックで、2大会連続でチャンピオンになっているだけあって、勝ち方を知っている。無理をしなくていい場面では、無理しない。すごく熱そうに見えて冷静なんだなと」

【今シーズンはさらなる高みを狙う】

 第三者的な視線を持つ冷静さと、勝利への執着心を兼ね備えた、メダリストたちのメンタルの強さを痛感した。

 昨シーズン、グレートベアーズは設立から初となるチャンピオンシップ進出を決め、今シーズンはさらに上位への進出を周囲から期待されている。

「クォーターファイナル以降の試合もすべて見ました」と語る後藤は、昨シーズン、優勝したサントリーサンバーズ大阪や、優勝決定戦まで進んだSTINGS愛知の姿を見て何を感じたのだろうか。

>>>【後編】後藤陸翔が語る東京グレートベアーズの戦略と基本方針 今季はSVリーグ優勝を狙う

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