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後編:瀬川琉久(千葉ジェッツ)インタビュー

 京都・東山高校3年生だった2025年1月に千葉ジェッツに加入した瀬川琉久(せがわ・りく)は、与えられたチャンスでBリーグにすぐさま適応し、その潜在能力を存分に発揮。昨シーズン後半には先発ポイントガードを務めてきた。

 今シーズンは自身が思い描くようなプレーができていないというが、11月下旬から行なわれるFIBAワールドカップ2027アジア地区予選Window1の日本代表チーム・直前合宿メンバーに選出。将来的にNBA入りが目標という19歳に、NBAへの憧憬、そして日本代表への想いを聞いた。

前編〉〉〉19歳の至宝・瀬川琉久の現在地とバスケットボール

【名前がある選手のほうがやりやすい部分はあります】

――富樫(勇樹)選手の故障があり、昨シーズン終盤のららアリーナ 東京ベイでの宇都宮ブレックス戦(2025年4月16日)、で瀬川選手はプロ初先発をしています。その際、2年連続シーズンMVPのDJ・ニュービル選手にマッチアップする場面もありました。リーグ屈指の選手であるニュービル選手にやられてもやり返そうとする姿勢について、試合後、トレヴァー・グリーソンHCは称える言葉を述べていましたし、渡邊選手も「決められたら決め返すメンタリティは日本人としては珍しい」と話していました。そういった「やり返してやる」という意識はご自身でも自覚していますか。

「そうですね。結構、自分はポーカーフェイスというか、試合中にあんまり感情を表情に出さないタイプなんですよね。けど、シュートを決められたり、スティールをされたあととかはイラつくというか、やり返してやろうという気持ちにめちゃめちゃなります。感情的には、そのとおりだと思います。顔に出さないだけです」

――ニュービル選手のような名前のある選手が相手でも、その名前を意識しすぎることもない。

「そうですね。むしろ、名前がある選手のほうがやりやすい部分はありますね。

負けて当然というか、負けて失うものってないじゃないですか。例えば比江島(慎、宇都宮)選手やニュービル選手など、テレビごしにずっと見てきたトップの選手が相手でも、自分は今年、プロに入ったばかりで負けても別に失うものはないと思っていたので、そのぶん全力でいけますし、むしろそっちのほうがやりやすいなと思っています」

――瀬川選手はNBA入りが目標であることを公言しています。昨年からNBA挑戦中の河村勇輝選手などはコートを離れてもバスケットボールのことを考えているような印象がありますが、瀬川選手の場合はどうでしょうか。高い目標のためにコート外でもなにかしら努力を重ねているのでしょうか。

「英語の勉強などはやっていますが、一日中バスケットボールのことを考えているとかはまったくなくて、休むときは休むし、やるときはやるようにしています。(一日中、バスケットボールのことに関わることをしていると)たぶん、全部中途半端になってしまってストレスも溜まってしまいますし、むしろ集中できなくなると思っているので、そこのメリハリをちゃんとつけるようにしています。そんなに、ずーっとバスケのことだけを考えてやっているわけではないです」

――富樫選手に近いですかね。

「そんな感じ......いや、あそこまでじゃないですけど(笑)。間くらいです。(河村選手と富樫選手を)足して二で割ったくらいです」

――NBAという高い目標のためにチームの練習以外に、個人のメニューなどを加えて取り組んでいるのでしょうか。

「そうですね。チーム練習が終わったあとは、ほかの選手たちもワークアウトをします。

ただほかの人たちが1回のワークアウトのところを、僕の場合は練習前と練習後と2回やるようにしています。それは僕がお願いしてやっていることなのですが、人と一緒の量をやっていては絶対にダメだと思っているからです。オフシーズンも海外でやるようなプログラムをGM(池内勇太氏)が組んでくださったりして、自分の成長のためにチーム活動だけではなくいろいろ助けてもらっていると感じています」

【NBAは目指していますけど......】

【Bリーグ】瀬川琉久(千葉ジェッツ)が見据えるこれからの青写真「19歳だから大丈夫という感覚にはまったくなっていません」
積極的なドライブを見せる瀬川琉久 photo by Yutaka Makino

――シュートが課題とのことですが、今シーズンはペイントエリアへ侵入する意識の高さは感じますが、一方で3Pシュートの確率が上がってきていません、それについては、どのような理由があると考えていますか。

「一番はシュートフォーム、リリースを早くするなどの改善をしている最中なので、まだそこに慣れていない部分があるんじゃないかと思っています。河村選手が取材されている映像をYouTubeで見たんですけど、彼もシュートも変えているときに目先の結果だけじゃなくてもっと先を見据えながら、いまは我慢の時だと言っていました。自分はいま、その時期だと思っています」

――リリースを早くしようと試みているのですね。

「そうですね。海外で通用するためのシュートフォームに変えています。キャッチしてからリリースまでのスピードを上げる感じですかね。あとはバランスの部分とかいろいろやっています。最近はだいぶ固まってきて、練習では入るようになってきているので、あとは試合で決めるだけです。気持ちの問題だと思うんですけど、自信を持っていかに打てるかかなとは思っています」

――瀬川選手は、シーズン中は自身のプレーで忙しいでしょうが、NBAはご覧になっているのですか。

「NBA......見ないですね、あんまり」

――見ていないんですか?

「人の試合を今まで見てこなかったんです。

小学生の時などはNBAもちょっと見ていたんですけど、中高くらいからもう、人の試合を見ることが少なくなりました。なんかこう、応援しないと見られないというか。例えば東山で後輩が出ている試合を見るのは好きなんですけど」

――では、好きなNBAのチームや選手も特にいない感じでしょうか。

「チームはあまりないですけど、選手でいうとカイリー・アービング(ダラス・マーベリックス)は、ちっちゃい頃から好きです」

――八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)選手や河村選手もNBAにいますが、それでも......なんですね。

「見ないです。ハイライトは見るんですけど。1試合通してっていう見方はあまりしないですね」

――渡邊選手や富樫選手は結構、NBAを見ていますよね。

「めっちゃ、見てますね。まわりはめっちゃ、見ているので、絶対に見ないととは思っているんですよね。見て勉強できることもたくさんあるじゃないですか。IQとかもものすごく高くなりますし、プロに来て余計にそういう人たちの試合を見て学ばないとなって思っているので、そろそろ見ます(笑)」

――世界という意味では日本代表も瀬川選手の目標です。ただその感じだと日本代表の試合も、もしやあまり見てこなかった感じでしょうか。

「日本代表は、たくさん見ています。今、NBAという目標も掲げていますけど、自分のなかでまずは日本代表に入りたいという気持ちが一番強くて、そこをクリアして次のステップとしてNBAだよねっていうことなので」

――日本代表の試合を見始めたのは、いつごろからでしょうか。

「えっと、高校2年生の時の春くらいですかね。その頃、U18の練習があってその後に日本代表の試合に招待してもらって見たんですけど、その時に『こんな歓声のなかでプレーしたいな、カッコいいな』と思いました。そこからどんどん気持ちが強まって、ここでプレーしたいなとなりました。もとから日本代表には入りたいと思っていたんですけど、実際に生で見て、より本気になったという感じです」

――それ以前も、テレビなどで少しはご覧になっていた。

「いやあ、見ていたんですかね......。たぶん、一番最初に見たのが沖縄でのワールドカップ。あれが初めて全試合を通して見た試合かなと思います」

【いかに早く結果を出すかを求めながらやっています】

――今夏のアジアカップ前の代表活動でも瀬川選手は招集の可能性がありましたが、故障で見送られたと聞きます。今月末のFIBAワールドカップ・アジア地区予選Window1の代表候補に晴れて名を連ねました。正式に試合の登録メンバーに選ばれた暁にはどのようなプレーを見せたいと考えていますか。

「もちろん、トム(・ホーバスHC)さんの求めるバスケット、求める役割を遂行しようと思っています。

それが一番大事だと思うんですけど、自分の武器であるジャンプシュートや攻撃的なバスケットはブラさずに見せていければと思っています」

――アジアカップ前の代表活動に参加できなかったことについては、若いからその先もまだまだ機会はあると考えていたのか、それとも悔しさがあったのか、いかがでしょうか。

「ケガをしてしまってコンディションが上がらなかったんです。トムさんが若手でいくと公言していましたし、せっかくのチャンスだと思っていたので、そのチャンスをつかみきれなかったのは本当に悔しかったです」

――今回の代表候補には6人と多くのPGが選ばれていますが、そこは意識していますか。

「ものすごく意識しています。正直、(これまでの)結果だけでいったら自分が一番(今回のWindowのロスターに選出される)可能性は低いと思いますが、将来への投資というか、経験をさせようという気持ちがトムさんにもあると思います。厳しいでしょうが、少しの可能性を信じて、できる限りのことはやって、小さい可能性を信じて頑張ろうと思っています」

――瀬川選手は日本代表に定着して2028年のロサンゼルスオリンピックでの出場、活躍を目指しているのでしょうか。

「そうですね。ですが、まずオリンピックに出るためには前年のワールドカップの本戦には絶対、入りたいです」

――ワールドカップは2年後の2027年。先ほどは今回のウインドウで試合のメンバーに選ばれる可能性は一番少ないけど、とおっしゃっていました。この2年は十分な時間なのかそれともそうではないと感じていますか。

「めちゃめちゃ短いですよね。まずジェッツで勇樹さんからスタートを奪うくらいの気持ちでやっていかないと思っていますし、2年という時間は長いようですごく短いと思っているので、この2年は勝負だなと感じています」

――19歳というご自身の年齢についてプロのバスケットボール選手としてはどのように感じていますか。

「日本でプレーをしているぶんには一番若い部類なので若いという感覚はありますけど、世界を見た時に18歳、19歳でNBA入りする人もいますから全然、若くない、19歳だから大丈夫という感覚にはまったくなっていません。河村勇輝選手がNBAに入った時も年齢的にギリギリと言われました。周りから見たら焦らず頑張ったらいいという感じかもしれないですけど、自分のなかではものすごく焦っているといいますか、いかに早く結果を出すかを求めながらやっています」

Profile
せがわ・りく/2006年8月14日生まれ、兵庫県出身。小学校時代からバスケットボールを始め、全国ミニバス、全国中学、ジュニアウィンターカップとそれぞれの全国大会を制覇。東山高校(京都)に進学後も1年時から主力として活躍し、3年時には夏の全国高校総体(インターハイ)優勝の原動力に。2024年にはU18アジア選手権日本代表に選出され、チームのベスト8進出に貢献した。2025年1月に千葉ジェッツに加入。主力にケガ人が続く状況のなか、4月以降は先発PGとして起用され、CS(チャンピオンシップ=プレーオフ)でも全5試合に出場を果たし、Bリーグの最も印象に残った選手に贈られるMIPを受賞した。卓越したボールハンドリング技術とキープ力、得点力、守備力を備えた万能性が特徴。

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