同じ無失点でも、早川友基の表情は4日前とは違った。

「個人のパフォーマンスよりも、自分はそっち(無失点)をより重視していたところではある。

やっぱりこの代表の舞台で、GKがいきなり変わったから失点したとかじゃ話にならないので。この2試合でまずGKの部分として、しっかり役割を果たすところはできたかなと」

 11月14日にガーナと、18日にボリビアとテストマッチを戦った日本代表は、正GKの鈴木彩艶が負傷でメンバー外だった。また、森保一監督のもとで第2GKの位置づけにある大迫敬介も、所属するサンフレッチェ広島が16日に天皇杯準決勝を戦ったことで招集外となった。

 GKは早川、小久保玲央ブライアン、それに野澤大志ブランドンの3人がピックアップされ、7月のE-1選手権で国際Aマッチデビューを飾った早川が2試合連続でスタメンに指名された。9月、10月の活動にも招集されていたことが、森保監督の判断の裏づけになったと考えられる。

サッカー日本代表「GK枠」争い激化 鹿島・早川友基が2試合で...の画像はこちら >>
 ガーナには2-0で勝利した。試合後の早川は「とりあえず、無失点で勝つことができてホッとしています」と、安堵の表情を浮かべた。

 日本が押し込む展開で、守備機会は多くなかった。GKからすると、プレーのリズムを作りにくい展開である。そのなかで、DFラインの背後を狙ってきたボールをケアしつつ、至近距離からのシュートをしっかりと防いだ。自陣からのビルドアップでは「プラス1」となり、落ち着いてボールを配球した。

「今まではJリーグだったりアジアだったりっていうなかでの戦いでしたけど、アフリカという身体能力も優れている相手に自分のプレーがどれだけ通用するのかとか、いろいろと感じられるホントにすばらしい機会でした」

 言葉に充実感がにじむ。

しかし、満足感はなかった。

「欲を言えば、もっとやれたかなと思っています。パスの質の部分や、長いボールを使うか短いボールを配球するかの判断は、精度も含めてもう少しやれたかなと思います」

【鹿島は4バック、代表は3バック】

 豊田スタジアムから国立競技場へ舞台を移したボリビア戦は、「この前の試合よりも、落ち着いてゲームに入れた」と振り返る。1-0の時間が長く続くなかで、ミスなくプレーしていった。シュートの軌道を最後まで見極め、ゴール前へ入ってきたクロスも球筋をしっかりと追いかけて対応していた。ひと言でまとめれば、安定感があった。

 ビルドアップも冷静だった。ボリビアが前からプレスをかけてきたことで、早川にボールが下がってくるシーンが少なくなかった。自身にプレスが迫ることもあったが、味方選手の立ち位置と相手の狙いを見定めながらパスの供給先をチョイスしていった。

 3バックの谷口彰悟、板倉滉、瀬古歩夢にボールを配るだけでなく、左シャドーからうまく落ちてくる南野拓実の動きを生かした。ボリビアが南野へのパスコースを消してきたら、右サイドからの前進を促した。

 最前線の小川航基へ蹴ることで、相手のプレスを置き去りにすることも意図した。スコアや時間帯を考えながらボールを配り、3-0の勝利へつなげていったのである。

 所属する鹿島アントラーズは、4バックで一貫している。それに対して日本代表は、3バックを主戦術としている。システムだけでなく、セットプレーの守り方なども同じではない。コンビを組むDFが変われば、お互いがカバーするエリアも変わってくる。

 そうした違いが、早川の成長意欲を刺激する。

「自チームとここのサッカーは、かなり異なるところもある。両方できるようになれば、選手としても成長できるというのは感じています」

 日本代表で正GKに君臨してきた鈴木は、今月9日のセリエAで左手を骨折し、少なくとも3カ月は戦線離脱する見込みだ。来年6月の北中米ワールドカップには間に合うはずだが、完全復帰までのプロセスを慎重に追跡していく必要がある。

 鈴木を追いかける第2、第3の立場を巡る争いは、最後まで競争が繰り広げられそうだ。

【鈴木彩艶と大迫敬介を追いかける】

 小久保は2024年のパリ五輪で名をあげた。所属するシント・トロイデンでは、昨シーズンから正GKとして出場機会を積み上げている。

 今夏にベルギーへ進路をとった野澤は、新天地ロイヤル・アントワープで10月からスタメン出場を続けている。

森保一監督のもとでは、2024年のアジアカップでメンバー入りを果たした。

 ふたりとも国際Aマッチ出場はまだ記録していないが、北中米ワールドカップでのメンバー入りは射程圏内と考えていい。

 国内組では大迫が、森保監督の信頼をつかんでいる。早川は小久保、野澤、それに谷晃生らとともに、鈴木と大迫を追いかける立場と考えられる。

 7月のE-1選手権以来の出場となったガーナ戦後、北中米ワールドカップについて聞かれた早川は、「目指しているところはホントにそこですし、そこに対してブレることはないですけど、今日の試合が終わって感じたのは、もっと自分のプレーをやれればよかったかな」と話した。目指す場所へ確かな一歩を踏み出したとの実感を得ながらも、改善の余地があるとした。

 ボリビア戦後も、満足感は漂わせていない。ただ、4日前はささやかなものだった自信に、芯が通ったと言うことはできそうだ。

 ワールドカップについて再び問われると、迷いのない口ぶりで答えた。

「ホントにもう、自分がいいパフォーマンスを続けるだけだと思います。あとは今回の代表活動でやれたことを自分の経験にして、いつ出てもやれるっていうことを証明し続けることが大事かなと思います」

 9シーズンぶりのJ1リーグ制覇へ接近する鹿島で、早川は存在感を示していく。

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