福田正博 フットボール原論
■FIFAワールドカップ2026の組み合わせが決まり、サッカー日本代表が勝てるのか否かが話題となっている。福田正博氏に組み合わせ決定を受けての感想を聞いた。
【南米勢との対戦がないのはよかった】
厳しいグループになったというのが率直な感想だ。
サッカー日本代表の来年のW杯グループリーグでの対戦相手は、オランダ、チュニジア、そして欧州プレーオフB組の勝者に決まった。最後の1チームが決まるのは3月。ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニアのいずれかになるが、どこも簡単な相手ではない。
今大会から出場国は48に増えた。そのため32カ国で争った前回大会までよりもグループリーグは楽な戦いになるとイメージしていたが、蓋を開けてみたらそうではなかった。「死の組」というほどではないものの、実力差の小さいグループになった。FIFAランクで言えば、日本の18位に対し、オランダは7位、チュニジアは40位で、プレーオフ組のウクライナは28位、スウェーデンは43位、ポーランド31位、アルバニア63位。オランダ以外は日本よりも下位にランクされているが、FIFAランクは実力を示すものではなく、あくまで目安に過ぎないことを忘れてはいけない。
ただ、日本にとってポジティブな要素もある。それは日本が戦うグループFに南米勢がいないことだ。11月の強化試合で、ブラジル(3-2)、ボリビア(3-0)と勝利したので忘れられがちだが、過去日本がW杯で南米勢に勝利したのは、2018年ロシア大会のコロンビア戦(2-1)しかない。
日本が初めてW杯に出場した1998年フランス大会グループリーグでのアルゼンチン戦(0-1)、2006年ドイツ大会グループリーグのブラジル戦(1-4)、2010年南アフリカ大会決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦(0-0、PK3-5)、2014年ブラジル大会グループリーグでのコロンビア戦(1-4)と分が悪いのだ。
しかも、日本が過去に決勝トーナメントに駒を進めた大会を振り返ると、2018年ロシア大会を除けば、2002年日韓大会、2010年南アフリカ大会、2022年カタール大会とも、グループリーグでの南米勢との対戦はなかったのだ。
根底には、日本人選手と南米勢の気質の違いがあるだろう。日本選手は教科書どおりにサッカーをやる傾向が強いのに対し、南米勢は教科書に載ってないプレーをやってくる。そのため南米勢の臨機応変で緩急自在なサッカーに翻弄されやすいのだと思う。
その点、ヨーロッパ勢は日本選手と同じように教科書どおりのサッカーをしてくる国が多い。個々の体格やパワー、技術などで劣っても、組織力でカバーすることに長けている日本にとっては、南米勢との対戦よりも相性がいい。
【気候は追い風にならないか】
オランダと欧州プレーオフ組に加え、チュニジアもスタイルはヨーロッパ的だ。アフリカ勢というと、今大会に出場する国でいえば、南アフリカ、セネガル、ガーナ、コートジボワールなど、個々の選手たちの高い身体能力を生かしたサッカーをイメージしがちだ。しかし、チュニジアは一線を画す。これは地中海に面する北アフリカに位置するモロッコ、エジプト、アルジェリアにも言えることだが、彼らはヨーロッパ的なサッカーをしてくる。
もうひとつポジティブな材料を探せば、欧州プレーオフ組がイタリアのいるグループではなかったことだ。FIFAランクは実力ではなく目安とはいえ、同12位のイタリアが同組だった場合の気の重さを味わわなくて済んだ。
日本の試合は、初戦がオランダとテキサス州ダラス、2戦目がチュニジアとメキシコのモンテレイで、3戦目は再びダラスのスタジアムで戦う。
気候的な面でいえば、高温多湿の日本で育った日本代表には有利に働くような気がするが、ダラスのスタジアムは屋根で覆われているため室温調整が効く。メキシコでの試合会場は、屋根はないものの対戦相手はチュニジアのため、ヨーロッパ勢よりは気候への適応力はあるだろう。試合会場が違えば日本への追い風と捉えられたのだが、残念ながら風は吹いてなかったようだ。
【48カ国方式の変化は】
これまでの32カ国方式のW杯では、グループリーグ突破の目安は勝ち点4だった。1勝1分け1敗の結果を残せれば、ほぼ決勝トーナメントに進出できた。もちろん、例外はある。前回大会のチュニジアは、初戦でデンマーク代表に0-0で引き分け、2戦目でオーストラリアに0-1で敗れ、3戦目でフランスから1-0の大金星をあげながらもグループステージ敗退の憂き目に遭っている。得失点差までもつれ込むケースもあったが、基本的には決勝トーナメント進出の条件は勝ち点4以上だった。
しかし、今回は各グループ3位のうち成績上位の8カ国も決勝トーナメントに進めるため、勝ち点3が目安になる。さらに言えば、得失点差が大きな比重を占める。
たとえばグループAの3位が1勝2敗の勝ち点3だとしても、よほどの大量得点で勝たない限り、得失点差は2敗の失点が響いてマイナスになるはずだ。対して、グループBの3位は3分けの勝ち点3だった場合、彼らの得失点差はゼロ。
このためグループステージから守備を意識した試合が増えるのではないかと予想している。もしかすると、EURO2016でポルトガル代表が、グループリーグ3戦3分けで勝ち上がった決勝トーナメントを制したようなケースも、起こる可能性はある。
「3分け」は、日本にもありえることだ。初戦のオランダは強豪国であるのは間違いないが、強豪国というのは決勝トーナメントを意識しているため、グループステージの初戦にコンディションのピークを合わせてこない。そのため日本が粘り強く守れば、勝ち点1を手にできる可能性がある。チュニジアはアフリカ予選で無失点だった堅守のチームだけに、引き分けで終わることも想定できる。2分けで迎える3戦目は、1勝して勝ち点3を奪うことも大事だが、試合展開によっては引き分け狙いにして、3戦合計の勝ち点を3にすることに切り替える考えもありえるだろう。
【上位進出は強豪国を3つ、4つ倒さなければ実現できない】
よく言われることだが、日本がグループ何位で決勝トーナメントに進出すると、次の対戦相手は◯◯になるから厳しいなどの意見がある。今回なら日本のいるグループF1位と2位は、決勝トーナメント1回戦ではグループCと対戦する。Fの1位ならC2位と、F2位ならC1位だ。グループC突破が有力視されるブラジルやモロッコは決して楽な相手ではないし、3位通過したところで対戦相手のレベルは高い。
ただし、強豪国との対戦は遅かれ早かれやってくるものだ。前回大会はグループリーグでドイツ、スペインと強豪国をふたつ倒したが、W杯での上位進出は強豪国を3つ、4つは倒さなければ実現できない。これを誰よりも森保一監督は理解しているからこそ、強化試合では選手層に厚みをもたせるべく取り組んできたわけだ。
日本代表が目標とする「これまで見たことのない景色」を見るために楽な道などないのだ。それを肝に命じ、代表チームのW杯までの道のりをしっかり見守ってもらいたいと思う。
>>後編「サッカー日本代表の今後のレベルアップのポイント」につづく

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