2歳王者の行方を左右する一戦のひとつ、GI朝日杯フューチュリティS(朝日杯FS、以下同。阪神・芝1600m)が12月21日に行なわれる。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は4勝、2着2回、3着2回。その信頼度は高く、比較的"堅い"レースと言える。現に3連単の配当を見ても、10万円を超えるような高額配当は1回(2016年)しか出ていない。

 そして今年も、重賞勝ち馬が不在だった先週のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神JF、以下同)と違って、重賞勝ち馬が4頭出走。それらが中心となって上位争いが繰り広げられることになれば、"荒れる"可能性は低いかもしれない。

 ともあれ、好メンバーが集った今年の朝日杯FS。見応えのあるレースになることは間違いなく、デイリー馬三郎の吉田順一記者もこう見ている。

「同じ舞台で行なわれる阪神JFと朝日杯FSにおいて、世代、世代による牡馬と牝馬のマイラーレベルが色濃く出ることが多いのですが、今年は朝日杯FSに出走する、1着アドマイヤクワッズ(牡2歳)と2着カヴァレリッツォ(牡2歳)との一騎打ちとなったGⅡデイリー杯2歳S(11月15日/京都・芝1600m)が2歳コースレコードで決着。パフォーマンスレベルとしては、牡馬のほうが高いと見ます。

 あくまでも天候や馬場、流れなどによりますが、この時期に多頭数で行なわれる2歳GⅠが緩いペースになることは稀。先週の馬場と同等なら、阪神JFの勝ちタイム1分32秒6より速い決着になるのではないでしょうか」

 そうなると、高速決着に対応できる馬が有力、ということか。吉田記者は「ただ」と言ってこう続ける。

「週末の天気は下り坂の予報。レース中に雨が降らなければ、そこまで馬場が悪くなることはないと思いますが、先週の日曜日より芝のクッション値が下がるようだと、多少は時計がかかる可能性もあるでしょう。

 そういう意味では、馬場状態次第で狙い目も変わってきます。基本的に、時計の速い馬場でスピードとキレを生かしたいのは、GⅡ京王杯2歳S(11月8日/東京・芝1400m)の勝ち馬ダイヤモンドノット(牡2歳)。逆に、少し時計のかかる舞台で持ち前のパワーを生かせるのが、GⅢ新潟2歳S(8月24日/新潟・芝1600m)を圧勝したリアライズシリウス(牡2歳)です。

 そして、馬場を問わずに高いパフォーマンスを発揮できるのが、先述のデイリー杯2歳Sの1、2着馬と、GⅢサウジアラビアロイヤルC(10月11日/東京・芝1600m)を快勝したエコロアルバ(牡2歳)といったところでしょうか」

 そのなかで吉田記者が中心視するのは、カヴァレリッツォだ。

「有力5頭のなかでも、相当な伸びしろがありそう。1週前のフォトパドックでははちきれんばかりのトモを誇示。意欲的な攻めも施されていて、状態はますます快調です。

 デイリー杯2歳Sでは、スタートから3角くらいまで少しチグハグ競馬でした。それでも、アドマイヤクワッズとの叩き合いの末にアタマ差惜敗なら、その価値は高いです。今回はその時以上の雰囲気が馬体と攻め馬からも感じられ、連軸には同馬が最適と見ています」

 実績やポテンシャルからして、有力5頭の優位は動きそうもないが、そこに割って入るような存在はいないのだろうか。

吉田記者は「若駒の争いゆえ、何が起こるかわからない」と言って、速い馬場、多少時計のかかる馬場、それぞれのパターンで大駆けが見込まれる伏兵候補をピックアップした。

「それほど雨が降らず、先週の阪神JF同様、馬場が乾いて速い決着となれば、タガノアラリア(牡2歳)が面白そうです。

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 回転の速いピッチ走法で、前走の1勝クラス・秋明菊賞(11月22日/京都・芝1400m)では好位の内で我慢して、一瞬のいい脚を使って差し切り勝ち。それほど速いペースにはならなかったのですが、きちんと折り合っていたことを考えれば、時計の出るマイル戦なら十分に守備範囲でしょう。内で脚をタメる形を作れれば、上位に食い込めるかもしれません」

 一方、馬場が渋った場合に楽しみなのは、「ストライドがしっかり稼げる走法のカクウチ(牡2歳)です」と吉田記者。

「馬体は450kg前後と大きくはないのですが、トモがふっくらとして丸みがあり、いい脚を長く使えるタイプ。発馬からの行き脚のよさが目立ち、このメンバー構成なら前づけして主導権が握れる算段です。

 1週前の追い切りもハードにやられて、しぶとい伸び脚を披露。父アドマイヤマーズ、母父フレンチデピュティからスピードとパワーを兼備し、時計を要する馬場、展開になれば、粘り込みはありそうです」

 ハイレベルな戦いが見込まれる朝日杯FS。有力馬たちが上位を独占するのか。はたまた、思わぬ伏兵の台頭があるのか。注目の一戦から目が離せない。

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