宮部藍梨(ヴィクトリーナ姫路)インタビュー 前編

今シーズン、バレーボール日本女子代表の活動を経て、所属チームのヴィクトリーナ姫路では、ミドルブロッカーからオポジットへとポジションを変えて活躍をしている宮部藍梨選手。その経緯を含めて、2シーズン目を迎えたSVリーグの変化について語ってもらった。


 
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【オポジットへ挑戦の理由】

――今シーズンのSVリーグが始まり約2カ月が経ちましたが、ここまでいかがですか?

宮部藍梨(以下、宮部) まず、リーグのレベル自体がすごく上がっている印象です。今までは対戦カードである程度結果が見えている試合もあったのですが、今シーズンは全然読めません。選手の立場としても「絶対に今日は勝てる」と思えるような試合はないです。毎週、毎試合、勝つか負けるかわからない。外国籍の選手も増えて、日本人選手が持つ巧さに外国籍選手の高さや別のスキルが加わって、いい形ができて、勝利数を増やしているチームもあるし、本当に読めないです。

――外国籍選手が増えたことでの変化は、具体的にどんなところで感じますか?

宮部 外国籍の選手は若い選手もいますが、キャリアを重ねている選手がコート内でリーダーシップを発揮しています。身近なところだと、私たちのチームのカミーラ(・ミンガルディ)選手はまさにそう。すごく元気でポジティブな選手なので、「頑張ろうよ」と引っ張ってくれますし、監督にも必要であればどんどん意見もしています。

 言葉の壁があるからか、今までの外国籍選手は一歩引いてチームを見て、自分の役割を果たすというタイプが多い印象でしたが、彼女は違う。意見を言って、要求するだけでなく「私ができることがあれば言ってほしい」という姿勢なので、私たちからすると学ぶことだらけだし、本当に来てくれてよかったと思う選手です。カミーラだけじゃなく、私たちと同じ目線に立ってチームのためにどうしようか、と行動して働きかける、そうした意識が高い外国籍の選手が増えている印象が強いですね。

――宮部選手ご自身も今季は変化がありました。日本代表ではミドルブロッカーとして活躍、近年は姫路でもミドルブロッカーとしてプレーしていましたが今季はオポジット。

どのような理由があったのでしょうか?

宮部 気になりますよね(笑)。簡潔にお答えするのが難しいんですが、前提として姫路に入団させてもらう時点ではミドルとしてプレーする考えはほぼなかったんです。当時はアウトサイドだったかな。アメリカの大学でもレフトとライト、いずれにせよアウトサイドとしてプレーしてきたので、むしろ、姫路に入団してミドルでプレーし始めたことがゼロからというかイレギュラーというか......。

 ただ、オリンピックを目指して代表でやるうえで、ミドルとしてプレーするほうが可能性は高いと思ったので、そこで頑張ろうと。日本代表という場で頑張りたい、入りたくても入れない選手がたくさんいるなかで自分がチャンスをいただけたなら、自分が目指す場所へたどり着く確率をどれだけ上げることができるか。私の場合、その方法がミドルでプレーするという選択でした。

 その後しばらくは、まだミドルのプレーを始めたばかりだし、練習して経験を積んだほうがいいと考えて、姫路でも代表でもミドルとしてプレーしてきたんですが、代表も監督が代わったので、自分もまた新しいチャレンジもしたいな、と。できるなら、ミドルとアウトサイド、今はオポジットですけど、両方同時進行でやってみたいな、と思ったんです。1年前の年末年始の頃にはチームに「オポジットでやりたい」と話しをしていたので、急に思いついたわけではなく、考えてのこの選択でした。

 代表は、監督が代わって1年目のシーズンだったので、新しいこと、違うことをいきなりするのは難しかったのでミドルとしてプレーしましたが、今年で27歳になって大きな変化、チャレンジをして新しいスキルや経験を得るにはそれなりに時間もかけたい。ゆっくり、長い目で見ながらチャレンジしたいと思った結果、今に至る、という流れです。

――とはいえ、代表を終えてからオポジットとしてプレーするのは時間も限られていました。大変だったのでは?

宮部 めちゃくちゃ大変でした(笑)。リーグが始まる2週間前ぐらいにチームに合流したので、スッと変わるのは難しくて、ごちゃごちゃした状況からのスタートでした。

――代表や姫路でもミドルとしてプレーしてきた経験がオポジットとして活かされていることはありますか?

宮部 今のところ、それほど具体的には感じられていないのですが、今まではミドルでブロックに跳んでいたので、「今はBクイックを使いたいだろうからここでヘルプに行こうかな」とか、「私がヘルプに入ればミドルの選手はライトのブロックに行きやすいよな」といったことは、考えられるようになったかもしれないです。

 実際に試合でも「私が(クイックの)ヘルプに行くから、もうちょっとライト側見ても大丈夫やで」と言うこともあります。代表でも(古賀)紗理那さんがブロックについて「ここで跳んで止めるからこうしてほしい」と具体的に話してくれたことがあって、その会話があるだけで楽になることも多かったので、そこは私もやりたいなと思う部分でもあります。

――ミドルからオポジット、特別なことのように感じましたが、前例には2012年ロンドン五輪の決勝で試合中にミドルからオポジットに入った(ドミトリー・)ムセルスキー選手(ロシア)の例もありますよね。

宮部 「オポジットでプレーしたい」と話をした時、ムセルスキー選手の話を(前姫路コーチで現クインシーズ刈谷コーチの)長江(祥司)さんから聞きました。長江さんは女子のコーチになる前、男子のコーチだったのでそういう情報も持っていて、私は知らなかったのですごく新鮮でした。しかも、試合の流れをガラッと変えたと聞いたので改めてすごいなぁ、と思いますね。

【プロとして生き残るための意識】

――外国籍選手が増えれば、日本人選手がコートに立つためにいろいろな役割ができたほうがいい、というのもひとつの考え方。その観点で言えば宮部さんの選択もこれからはスタンダードの発想になるかもしれないですね。

宮部 そうですよね。外国籍の選手が増えることで競争が激しくなる。少し話が変わってしまうんですけど、そういう意味でもやっぱり、SVリーグが「世界最高峰のリーグを目指す」と言うからには、見せ方とか、もっと考えないといけないことがあると思うんです。外国籍の選手が増えたからすごいリーグになったじゃなくて、私たちも一緒にそういう空間をつくっていかないといけない。

 チームメイトではないですけど、日本にロザマリア(・モンチベレル)選手(デンソー/ブラジル代表の中心選手)がいる。しかも何年もいるってすごいことじゃないですか。同じコートで戦えることがすごく幸せで、ありがたいことだと思うし、こんなすばらしい環境だからこそ吸収できることがたくさんあると思うんです。

――1人ひとりの意識も問われますね。

宮部 言い方が少しよくないかもしれないですが、今までは実業団主体だったので、守られている意識が強かった。でも(SVリーグになって)プロとして、自分のパフォーマンスでご飯を食べて行かなければならないと考えたら、もっとやらなきゃいけないことがあるし、今試合に出られているからといって、そのポジションも確約されているわけじゃない。サバイバルですよね。常に危機感を持って、自分に付加価値もつけないといけない。

そういう意識で臨める選手がどれだけ増えるかというのも大きいと思います。

 バレーボール選手という仕事、プロ選手として憧れられる職業になるためには、それなりの危機感も大切。ぬくぬくしていちゃダメだな、って思います。

 実際私は姫路でも代表でも、いつ自分の居場所がなくなるかわからない、という危機感や意識は常に持っているつもりです。私も前はそうじゃなかったですけど、そういう意識のままだと厳しい現実を突きつけられる。もっと必死にならなきゃダメだな、って思います。

後編に続く>>女子バレー・宮部藍梨「オシャレもSNSでの発信もプロ選手なら当然。女子バレーをもっと盛り上げていきたい」

Profile
宮部藍梨(みやべ・あいり)
1998年7月29日生まれ、兵庫県出身。身長181cm。小学3年生からバレーボールを始め、金蘭会高校進学後は、1年生からレギュラーで出場し、インターハイ、国体、春高バレーの高校3冠を達成している。ミネソタ大学大学院卒業後、地元である兵庫県のヴィクトリーナ姫路で活躍している。日本代表としては、2015年の高校生の時に代表入りを果たし、その後2022年からはコンスタントに日本代表に召集され、世界を舞台に活躍をしている。

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