東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第28回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。この連載では、その育成の秘密に迫っていく――。

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 東京ヴェルディのアカデミーは、これまでにJクラブ屈指と言ってもいいほど多数のプロサッカー選手を育ててきた。

 だが、アカデミーのヘッドオブコーチングの中村忠や、ユースチーム監督の小笠原資暁は、「選手育成の"虎の巻"はない」と口をそろえる。

 ならば、実際にそこで育ち、プロとなった選手はどう感じているのか。

 2014年にユースチームでキャプテンを務め、翌年トップ昇格を果たした中野雅臣は、ヴェルディのアカデミーに特徴的だったこととして、「スタッフとの試合」を挙げる。

「選手とスタッフがまじって試合をするんですけど、スタッフも本気だから、僕らはなかなか勝てない。そこでどうやったら勝てるかを常に考えながらやっていましたね」

 試合だけではない。全体練習前後のちょっとしたボール回しでも、腕利きのスタッフは選手たちの輪に加わり、いつも実戦テクニックの手本を示してくれた。

 中野は「そこで学ぶものが多かった」と言い、こう続ける。

「自分の年代だけでやっていると、ちょっと余裕がある感覚になってきますけど、(スタッフが練習に入ることで)常に上を意識しながらやっている感覚はありました」

 大人たちを相手に、どうやったら勝てるのか。アカデミーの選手たちは、単に技術を磨くだけではなく、常に考えることが求められていたのである。

「大人とプレーしたら、ふつうに考えて勝てないので、どうやったら自分の得意なプレーを出せるか、ということをすごく考えながら、何回もチャレンジするということをずっとやっていました」

 そう語る中野は、必死に考え、挑み、はね返されていたからこそ、「そこで(スタッフに)勝った時の気持ちよさがすごかった。大人たちもすごく悔しがるんで(笑)。

今思うと、本当にいい環境でサッカーをやらせてもらっていたなと思います」。

 中野によれば、ヴェルディのスタッフは「みんなヤバいんですよ(笑)。体型はもうめっちゃおじさんなのに、めっちゃうまい人がいっぱいいました」。

 なかでも中野が「あの人、天才です」と言い、強烈な記憶として残しているのは、かつて自身も選手として読売クラブやヴェルディで活躍し、現役引退後はユースチーム監督なども務めた、菊原志郎である。

「(菊原から)もうふつうに『下手くそ!』とか、『そんなんじゃダメだ!』とか、めっちゃきついことを言われるんですけど、うまいので何も言い返せない(苦笑)」

 中学生や高校生にとってみれば、菊原が見せる技術の数々は「すごい衝撃でした」。中野が続ける。

「何がすごいって、もう全部ですよね。ボールを取りにいけない間合いとか、目線とか、キックの種類もたくさん蹴れるし、とにかく盗むところがいっぱいある。スピードがあるとかっていう、そういうフィジカル的な要素じゃなくて、技術的な部分でたくさん見習うところがありました」

 中野は当時を思い出したのか、楽しそうに口を開く。

「もう練習が始まる前から、みんなでボール回しをやるんですけど、何ならそれが一番楽しかったくらいです。そこで学ぶことが一番多い、みたいな感じでした」

 中野には、菊原をはじめとするアカデミーのスタッフから、手取り足取り技術的なことを教えてもらった記憶はない。

 それでも、「ウォーミングアップがてらやるような、ちょっとした技術練習みたいなのがあったんですけど、そこで大人たちのプレーを見て、『これがこういうボールタッチにつながっているんだ!』みたいな感覚はありました。

"見て学ぶ"と、"やりながら感じる"。その機会は多かったと思います」。

 だからだろうか、中野は自分自身の成長を日々実感していたわけではなかったが、"やりながら感じる"ことで、自然と自信をつけていくことができたという。

「自分がうまくなっているっていうのも......、結果的に、みたいな感じです。『あ、オレ、こんなプレーもできるようになってる!』みたいに感じることは多かったです」

(文中敬称略/つづく)

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