【「トップはきっと駒大の伊藤さんだろうな...」】
第102回箱根駅伝、「5強」崩しも期待されていた創価大は総合8位に終わった。7年連続でシード権を獲得したものの、目標に掲げていた3位(以内)には遠く及ばず、榎木和貴監督も「うーん。厳しい結果ですね」と、なかなか言葉が続かなかった。
往路は、1区から思うような走りができず、次代のエースとして期待される山口翔輝(2年)も4区で区間15位に沈むなど、8位に終わった。トップの青山学院大には5分54秒の大差をつけられた。
だが、復路には「意地を見せよう」と臨んだ。その起爆剤が6区の小池莉希(3年)。昨年7月の日本選手権5000mで決勝に残るなど、積極果敢な走りが持ち味のムードメーカー的存在だ。
榎木監督がこう明かす。
「小池の6区は、昨年6月ぐらいから考え、最終的に復路は小池を軸に(オーダーを)つくりました」
その小池はレース前、前回区間2位、駒澤大の伊藤蒼唯(4年)しか見ていなかったという。
「伊藤さんはめちゃくちゃ意識していました。伊藤さんとのマッチレースになるんだろうなと予測していましたし、区間賞は最後まで伊藤さんとの争いになるなと。(コースの)どこが勝負になるとかではなく、全部が勝負だと思っていました。伊藤さんに勝って56分台(※区間記録は56分47秒)を出すためには、(序盤の)上りも下りも最高のペースでいかないと出ないと思っていたので」
右足に青、左足に赤のシューズを履き、深呼吸してスタートした。
上り基調の序盤で早くも調子のよさを感じ、「ヤバい。
そのため、6区初挑戦の小池は「これでも区間賞じゃないのか。トップはきっと伊藤さんだろうな」と思いながら走っていた。13.8kmの大平台をすぎてからは「あー、区間2位かぁ」と悔しい気持ちも抱いた。それでも最後まであきらめず、「最高のペース」で走りきった。
「最後まで、自分が区間賞だというのはわからなかったです。中継所に飛び込んで、自分が区間賞だと聞いて初めて『よっしゃー』と思いました(笑)」
小池と伊藤の勝負を分けたのは、小田原中継所に至るラスト2kmのゆるい下りの直線だ。5kmすぎの芦之湯から一気に駆け下りてきた選手にとっては、フラットに感じられるほど苦しいその2kmでも、小池は勢いそのままにぶっ飛ばした。
結果は、伊藤の56分50秒を2秒上回る56分48秒で区間賞を獲得。前回大会で青山学院大の野村昭夢(当時4年)が出した区間記録にあと1秒と迫る好タイムだ。
「最後の2kmをまくり上げたので区間賞を獲れましたけど、(区間記録更新まで)あと2秒でしたね。
10月の出雲駅伝も11月の全日本大学駅伝も、小池は2区で競り合う展開を経験した。悪くない走りだったが、区間賞は獲れなかった。また、箱根では1年時に8区15位、2年時に10区13位といい思い出がなかった。それらすべてを払拭する力走を見せ、「創価に小池あり」とアピールすることができた。
【「これだな」と思った、國學院大の選手の言葉】
だが、チームの総合8位という結果について聞くと、途端に表情が厳しくなった。今回の創価大は、往路復路ともにあってはいけないブレーキ区間が出るなど、前評判ほどの走りを見せられなかった。小池はこう話す。
「今回の箱根を見て思ったのは全体のレベルの高さです。箱根はもう1km3分(ペース)では勝負にならない。
僕は、(昨年卒業した)吉田響(現・サンベルクス)さんの"人間の限界を超えていく走り"に影響を受けたんですけど、あらためて響さんの『限界を超えて、やっと普通』みたいな意識で全員がやっていかないとダメですね。『自分はこのくらいで走れればいいや』みたいな甘い考えでは、箱根は戦えないぞと思います」
創価大は、出雲駅伝で過去最高の3位を達成したが、そのレースに出場した6人に続く中間層の底上げも課題だ。
「全日本の時にチームとして(中間層の力不足を)痛感して、それからハーフ(マラソン)に多くの選手が出るなどしてきましたけど、結局、箱根では結果が出なかった。これは次のシーズンに向けての大きな課題です」
小池自身は、まずチームの雰囲気を変えていきたいという。
「ウチのチームは、みんな仲がよくて、風通しもよいですけど、チーム内での突き上げというか、もっと強くなろうという雰囲気が足りないように感じます。みんなでバチバチに争う、誰にも負けないといった"魂"ですね。上位校と同じように、自分たちもそういうチームになっていかないと」
そう強く思ったのは、ある選手の言葉がきっかけだ。昨年11月の上尾シティハーフマラソン後、小池は國學院大の吉田蔵之介(3年)と話をする機会があった。上尾ハーフは箱根に出る大学の多くが、学内のメンバー選考レースと位置づけている。吉田は11位(1時間02分01秒)とまずまずの結果だったが、「これじゃあ俺は、箱根を走るのはもちろん、メンバー16名にも入れないわ」とつぶやいたという(※吉田は箱根で10区にエントリーも当日変更)。
「これだな。これが創価大と國學院大の差だなと思いました。蔵之介君のタイムなら、ウチでは間違いなく箱根を走るメンバーに入る。でも、國學院大では1回走れなかったら次はもうない。そういう厳しさはウチにはない」
自分がやる、自分が成り上がる、といった意識の不足については、奇しくも昨年の全日本後に吉田響も指摘していた。駅伝を走る選手と走らない選手の気持ちに温度差があり、「全員で勝つぞ」という意識が醸成されていない。競技力以前にそこが他大学との差であり、創価大の課題だと、彼は厳しい言葉を残して卒業していった。
小池は、チームを変える役割を4年生となる次のシーズンに担っていく覚悟だ。
「もう仲よし集団じゃ勝てません。競い合うなかでお互いの信頼が生まれ、全員で戦うぞという意識が生まれてくると思うんです。今のままだと、箱根の優勝争いはおろか、シード争いに巻き込まれる可能性もあります。ここで意識を変えて、どこまでやれるかでしょう。
このシーズンは5強と言われていましたけど、そこに創価大が入っていないのは本当に悔しかった。個人としてもチームとしても、もうちょっとスポットライトを浴びたいです。個人的には、来年も(箱根含めた三大駅伝)3位(以内)を目指してやっていきたいので、もう言っちゃいます。バチバチ厳しくいくしかない」
小池の気持ちを、今回箱根を走った同学年の織橋巧(3区9位)、齊藤大空(10区17位)、さらに2年で悔しさを味わった山口、榎木凜太朗(9区18位)が共有して、スクラムを組んで進んでいけるか。今回の箱根の厳しい結果は、創価大がワンランク上のチームに脱皮し、5強に食い込んでいくためのきっかけになるだろうか。
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