識者たちの箱根駅伝総括 前編

 青山学院大が史上初となる2度目の3連覇を成し遂げた第102回箱根駅伝。レース前、トップ10を予想した識者たちが、実際の順位と比べながらレースを総括する。

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■折山淑美(スポーツライター)

(予想)     (結果)

1)駒澤大    1)青山学院大

2)國學院大   2)國學院大

3)青山学院大  3)順天堂大

4)中央大    4)早稲田大

5)早稲田大   5)中央大

6)帝京大    6)駒澤大

7)創価大    7)城西大

8)東洋大    8)創価大

9)順天堂大   9)帝京大

10)城西大    10)日本大

 戦力的には若干優位な立場にいたはずの駒澤大だったが、佐藤圭汰(4年)と山川拓馬(4年)が12月に故障して万全でなくなった。そのうえ、そのふたりが往路を走れない場合に主要区間を務めるはずだった来季エース候補、谷中晴(2年)も不安を抱えて復路に回り、勝機はなくなった。

 対して、優勝した青山学院大の原晋監督の戦略は見事だった。レース前、駒大の藤田敦史監督は「黒田朝日(4年)君を5区で使われるのが、他大学にとっては一番嫌な配置」と警戒していたが、それまでの区間記録を2分弱も更新する激走には、驚くしかなかった。

 原監督も、黒田の5区が最もアドバンテージを得られて効果的だと考えたのだろうが、区間2位より2分以上速いだけでなく、総合優勝争いをすると思われた國學院大を3分弱、駒大と中央大を4分以上も上回る走りをされては、他大学も対応できなかった。

 1区では、予定していた荒巻朋熙(4年)の"代役"小河原陽琉(2年)が区間16位と出遅れるなど、3区までは流れがよくなかった。しかし、4区の平松享祐(3年)が区間3位の走りで5位まで上げ、黒田の逆転劇の下準備をした。

 平松は、荒巻のアクシデントがなければ走る予定はなかったというが、突然の出走にもかかわらず、控えの選手がこれだけの走りをできるのが、青学大の強さであり総合力の高さだと言える。

 2位になった國學院大も、復路は優勝した青学大に39秒遅れただけで従来記録を更新。課題だった5区も、1年生の髙石樹が区間4位で走っただけにチャンスはあった。

 痛かったのは2区だ。区間10位までが1時間06分30秒を切るハイレベルで、上原琉翔(3年)が区間12位。

昨季の平林清澄(ロジスティード)クラスの"大砲"がいれば、展開が変わったかもしれない。さらに、出雲や全日本では留学生ランナーと対等に張り合っていた3区の野中恒亨(3年)が、その時のような爆発力を発揮できなかったことも響いた。

 復路で5位に落ちた中央大も、主将でエースの吉居駿恭(4年)が直前に足を痛めた影響が大きかった。1区の藤田大智(3年)が、早々にライバル校を振り落とそうという意図のある走りで吉居の区間記録を更新し(区間2位)、その後の区間もうまく機能してトップに立った4区までは万全だった。ただ、4区までのどこかに吉居が入っていれば、さらに加速できていた可能性が高い。

 3位の順天堂大は、往路での爆発力は今ひとつだったが、ミスのない駅伝で復路で順位を上げた。それは伝統の力でもあり、素質のある選手たちが揃っている証拠でもある。ここ2大会は序盤で流れに乗れないレースだったが、今回は4年生がひとりだけのチームだったこともあり、3年生以下の選手たちがこの3位を自信にして、来年は往路のレベルも上げてきそうだ。

 最後に、往路17位と沈んだ帝京大が、復路で逆襲してシード権を獲得したことも、今大会に花を添えた。

■佐藤俊(スポーツライター)

(予想)     (結果)

1)駒澤大    1)青山学院大

2)中央大    2)國學院大

3)青山学院大  3)順天堂大

4)早稲田大   4)早稲田大

5)國學院大   5)中央大

6)創価大    6)駒澤大

7)帝京大    7)城西大

8)城西大    8)創価大

9)東洋大    9)帝京大

10)順天堂大   10)日本大

 ここ数年で、最も順位を読むのが難しい箱根駅伝だった。

 区間配置の段階で、主力がある程度走れるという前提で順位を考えたが、駒澤大は故障者続出で"野戦病院"化し、山川拓馬(4年)、佐藤圭汰(4年)、谷中晴(2年)らが万全の状態で走れなかった。優勝した青山学院大とは、その差がもろに出た。

 今回の箱根は、青学大5区の黒田朝日(4年)がすべてを持っていった。ただ個人的には、その前の4区の平松享祐(3年)の好走が非常に大きかったと思う。8位で受け取った襷を5位まで上げて黒田に渡したことで"イケるムード"を醸成した。それが黒田の異次元の走りにつながった。

 早稲田大は、5区に工藤慎作(3年)を擁して往路優勝をつかみかけた。だが、その工藤が19km過ぎに黒田に抜かれるとは、花田勝彦監督も想像していなかったはず。自分も同様だった。とはいえ、工藤の状態が万全ではなかったことも含めて、山のエースで敗れたので「仕方がない」という思いだろう。ただ、総合3位は狙える展開だったので、4位はもったいない結果だった。

 中央大も4区までは理想的な駅伝だった。3区の本間颯(3年)が区間賞でトップに立った時は、このまま中央大がいくかと思ったが、やはり5区で黒田に差されてしまった。圧倒的な力を持つ山上りの選手の前では、平地でいくら貯金を作ろうが、ほとんどすべて吐き出してしまう。

あらためて山の怖さ、山の重要性を痛感させられた大会だった。

 事前の予想では10位とした順天堂大が3位に入ったが、トップ3に入ってくるとは驚きだった。7区の玉目陸(2年)の区間2位の快走で勢いづき、じわじわと順位を上げていった。いい意味でのサプライズだったが、来季は優勝争いにも絡んでいけそうで、非常に楽しみなチームになった。

 一方、14位の東洋大は20年間維持したシード権をあっさりと失った。チームが活力を失っている感があり、このままズルズルと後退し、低迷してしまうのか。

 レース全体では、往路は1km2分50秒ペース、復路は2分55秒を切るペースでないと、箱根は戦えなくなってきている。高速化が進み、区間新記録が5区間も出た。記録ラッシュ、そして順位変動も大きく、観ている側にとっては非常に面白い箱根駅伝だった。

(後編:「来季の優勝に期待」「奮闘に目を奪われた」大学は? 事前の順位予想と比較しながらレースを振り返った>>)

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