識者たちの箱根駅伝総括 後編

(前編:青山学院大の驚異的な強さ、及ばなかった大学の「予想外」について語った>>)

 レース前に順位を予想した識者たちによる箱根駅伝の総括。後編もふたりの識者が、予想どおり、予想外だった展開について語った。

【箱根駅伝2026】識者が「来季の優勝に期待」「奮闘に目を奪...の画像はこちら >>

■酒井政人(スポーツライター)

(予想)     (結果)

1)青山学院大  1)青山学院大

2)駒澤大    2)國學院大

3)中央大    3)順天堂大

4)國學院大   4)早稲田大

5)早稲田大   5)中央大

6)創価大    6)駒澤大

7)帝京大    7)城西大

8)城西大    8)創価大

9)順天堂大   9)帝京大
 
10)東洋大     10)日本大

 青山学院大はエース黒田朝日(4年)が5区に入ったことに驚かされたが、その爆発力も想像以上だった。2区で順位を押し上げた飯田翔大(2年)と、11番目の選手だった4区の平松享祐(3年)の走りも素晴らしかった。そして、トップに立ったあとの強さは例年通り。天候にも恵まれ、大会記録がまた塗り替えられた。

 駒澤大は山川拓馬(4年)、佐藤圭汰(4年)、谷中晴(2年)の故障が痛かった。それでも佐藤は10区で区間新記録。彼のポテンシャルを考えれば、理想のオーダーを組むことができれば往路を独走していたかもしれない。青学大に勝てるチャンスがあっただけに今回の結果(6位)は非常に悔やまれる。

 5位に終わった中央大も4区までは完璧に近かった。しかし、5区の柴田大地(3年)が想定タイムより「1分16秒」遅れ、エースの吉居駿恭(4年)には故障があった。当初予定していた1区・吉居、7区・藤田大智(3年)という配置になれば、青学大を苦しめたのではないだろうか。

 國學院大は大会新で過去最高の2位。

5区以外の9区間の合計タイムでは青山学院大を上回った。2区の主将・上原琉翔(4年)が目標タイムに38秒届かず、3区の野中恒亨(3年)はコースに乱入した犬にリズムを狂わされた。ただ、5区の髙石樹が区間4位、9区の野田顕臣が区間3位と1年生も活躍。来季の初優勝に期待したい。

 早稲田大は2区の山口智規(4年)と4区の鈴木琉胤(1年)は上々だったが、5区の工藤慎作(3年)は動きがよくなかった。"山の名探偵"が狙い通りの「1時間8分台」を出せていれば往路Vが見えただけに惜しかった。

 8位の創価大は、4区の山口翔輝(2年)が区間15位のブレーキ。6区の小池莉希(3年)は区間記録に1秒差と素晴らしかったが、目標の「3位以上」を狙うには総合力が少し足りなかったような印象だ。

 帝京大は、一斉スタートとなった復路で全体5位と"5強崩し"を実現して、総合でも9位に滑り込んだ。3区以降は持ち味を発揮しただけに、1、2区の出遅れが残念だった。

 7位の城西大は2区ヴィクター・キムタイ(4年)の区間新が圧巻だった。5区の斎藤将也(4年)も悪くなく、ほぼ狙い通りのレースができただろう。

 順天堂大はシード権を確保すると思っていたが、全体的に予想以上だった。2区の吉岡大翔(3年)が好走して、3区の井上朋哉(1年)も区間4位。復路は7区の玉目陸、8区の永原颯磨、10区の山本悠という2年生トリオが区間2~3位で走破した。今回のメンバー9人が残るため、来季が非常に楽しみだ。

 10位に入った日本大は、2区のシャドラック・キップケメイ(3年)で9位に浮上。そのあとは一度もシード圏内を外れることがなかった。ここまで安定感のあるレースをするとは思わなかった。

 一方、東洋大は前回4区で区間3位の岸本遼太郎(4年)が欠場するなど、4年生がかみ合わずに連続シードを死守できなかった。

■杉園昌之(スポーツライター&編集者)

(予想)     (結果)

1)國學院大   1)青山学院大

2)駒澤大    2)國學院大

3)青山学院大  3)順天堂大

4)中央大    4)早稲田大

5)帝京大    5)中央大

6)早稲田大   6)駒澤大

7)創価大    7)城西大

8)城西大    8)創価大

9)東洋大    9)帝京大
 
10)中央学院大   10)日本大

 過去最高成績となる総合2位の國學院大は、ほぼ額面どおりの実力を発揮したのではないか。1区の青木瑠郁、7区の高山豪起(ともに4年)がいずれも区間賞を獲得し、懸念材料の山は1年生の髙石樹が解決。1時間10分05秒の区間4位は期待以上だろう。

 復路の追い上げも見応えがあった。

それでも、悲願の総合優勝に届かなかったのは、青山学院大を褒めるしかない。山に"怪物"が現れなければ、事前に予想した優勝もあったかもしれない。

 2位と予想した駒澤大が、総合6位まで沈むとは思わなかった。大エースの佐藤圭汰に加えて、エース格の山川拓馬(ともに4年)もコンディションが整わず、そろって復路に回るとは......。手薄になった往路で出遅れ、最後まで巻き返せなかった。

 青学大を3位と予想した記者の目は節穴と言われても仕方ないが、"シン・山の神"が生まれたのは想定外。往路の当日変更でオーダーを見て、目を丸くした。

 黒田朝日(4年)が5区へ。4区終了時点で、先頭とは3分24秒差の5位。さすがに絶対エースでも逆転は難しいかと思ったが、すいすいと山を駆け上がり、往路1位でフィニッシュ。1時間07分16秒の区間記録は異次元である。さらに勢いづけたのは、1年生で山下りの6区に抜擢された石川浩輝の快走。

未知数と書いた山区間は、とんでもなかった。

 大きな驚きだったのは、順天堂大だ。シード圏外と予想してしまったが、予選会から大躍進して総合3位。エースの吉岡大翔(3年)が2区で区間9位と粘り、山上りでも小林侑世(3年)が区間5位と、その奮闘に目を奪われた。往路を6位で終えた時点で、すでに長門俊介監督に謝りたい気持ちになった。

 目を引いたのは復路の奮起。7区の玉目陸(2年)が区間2位の好走で流れを引き寄せると、勢いそのまま襷は流れ、最終10区では山本悠(2年)の奇跡的な追い上げ(区間3位の走りで順位をふたつ上げる)で表彰台へ。あっぱれな襷リレーだった。

 中位に収まったチームは、ほぼ予想どおり。中央大、早稲田大は往路で上位争いをする強さを発揮しながらも、復路でつまずいた。創価大、城西大は上位に届かなくても、安泰のシード圏内でフィニッシュ。

 思いもよらなかったのは、5位に予想した帝京大の出遅れだ。

ただ、復路一斉スタートの17位から巻き返し、総合9位でシード権を獲得した粘り強さには目を見張った。

 伏兵として注目した中央学院大は、復路のアンカーでシード圏外に脱落し、惜しくも11位に。「思いどおりにいかないものです。これが箱根駅伝」。大手町で聞いた川崎勇二監督の言葉が、ずっと胸に残っている。順位予想もうまくいかないものです。

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