2026年のソフトバンク投手陣は、「有原の180イニング」を奪い合うことになりそうだ。
3年間所属していたソフトバンクを退団し、自由契約となっていた有原航平だが、昨年12月26日に古巣である日本ハムへの復帰が発表された。
有原はこの3年間で38勝を挙げ、昨季まで2年連続でパ・リーグ最多勝にも輝いている。また有原といえば、球界屈指のイニングイーターとして知られ、2024年は182回2/3、2025年は175回を投げた。言うまでもなく、チームの大黒柱だった。
ただ、小久保裕紀監督は「戦力としては痛いのは当たり前」としながらも、次のように言葉を継いだ。
「でも、大チャンスじゃないですか。だって、180イニングが空くわけです。つまり、180イニングを投げられるチャンスが生まれるということ。チャンスを得る選手のほうが圧倒的に多い。だからこそ、このオフは大いにトレーニングに励んでほしいですね」
【ファーム記録の46回2/3連続無失点】
有原が抜けたとはいえ、ソフトバンクの先発陣は依然として強力だ。昨季は「10勝カルテット」を形成。パ・リーグMVPのリバン・モイネロ(12勝)を筆頭に、リーグ最高勝率を誇った大関友久(13勝)、上沢直之(12勝)と、好投手の名前が次々と挙がる。
だが、有原の180イニングを埋めるには、単なる穴埋めではなく"上積み"が求められる。そのためには、先の3人とは別の投手の台頭が不可欠だ。
プロ3年目の前田悠伍である。
昨年7月13日の楽天戦で、6回無失点の好投でプロ初勝利を飾った。昨季の一軍登板はこの試合を含めて3試合にとどまり、白星もこの1勝のみだったが、ファームでは圧巻のピッチングを披露。ウエスタン・リーグ新記録で、プロ野球ファーム記録に並ぶ46回2/3連続無失点と無双したのだ。
プロ入り当初から、その完成度の高さは群を抜いていると評されてきた。評価はピッチングだけにとどまらない。物事の考え方や取り組み方においても、同年代の選手と比べて頭ひとつどころか、2つ、3つ抜けている印象を受ける。
ドラフト時に、ソフトバンクの関西地区担当・稲嶺誉(いなみね・ほまれ)スカウトが「高校生なのに、和田毅と話しているような錯覚に陥る。それくらいしっかり者で、大人びている」と話していたが、まさにそのとおりだ。
【今オフは千賀滉大に弟子入り】
このオフに、3年目となる今シーズンへの意気込みを尋ねた時もそうだった。
「ここまでめちゃくちゃ早いなと思います。3年目も、きっとすぐに終わってしまうんだろうなと思っています。
このままでも一軍で投げられるかもしれませんが、一軍と二軍を行き来する選手になってしまうなと......。やはり突出したものがなければ、一軍の舞台で長く活躍することはできないと思いました」
近頃の若い選手のなかで、これほどはっきりと危機感を口にできる選手は、じつはなかなかいない。また、前田のこんな言葉にも感心させられた。
「自分の甘さを潰すには、まず気持ちかなと思います。『今日しんどいな』と思っても、何年後かの自分を想像すれば、やらないといけないですし。今日1日をサボってしまったら、5年後も二軍でずっと過ごしているとか......そういうことを考えると、やっぱり今やるしかないと思うんです。あとは継続ですね。練習をやめてしまうと、感覚を取り戻すのに時間がかかってしまう。そのふたつを、自分のなかで大事にしています」
自己分析力と将来を見据えた設計力を備えている点は、たしかに和田に通じるものがあるように感じる。それを、まだ20歳の若者が実行しているのだから驚きだ。
思い描く未来の自分に近づくため、オフの自主トレにも余念がない。
前田は昨年9月末に左ヒジのクリーニング手術を受けている。そのことも、千賀に心酔する理由のひとつとなっている。
「もともと、自分はどうしてもヒジに負担がかかる腕の振りをしていたと思います。そこで、肩の柔軟性や安定性をあらためて見つめ直し、ヒジに負担のかからないフォームを常に考えています。千賀さんとは、プロ1年目のオフにも3日間だけ一緒に練習させていただく機会があり、今オフも食事に連れて行ってもらいました。そこでも、ヒジに負担のかからないフォームについて話をしてもらいました」
【悪しきジンクスを打破できるか】
千賀のアドバイスを踏まえ「お腹から投げる感覚を養っている」という。筆者も千賀から以前、サッカーのゴールキーパーを例えに出し、体全体を使って投げることを説明してもらったことがある。そのことを前田に伝えると、こんな答えが返ってきた。
「そうですね。野球のボールは小さいので、どうしても腕で投げられちゃう。
千賀とのトレーニングは昨年12月から福岡県内でスタート。1月には温暖な地へ場所を移し、引き続き行なっている。
奇しくも前田の背番号41は、千賀から引き継いだものだ。千賀はプロ3年目に中継ぎとして51試合に登板し、1セーブ17ホールド、防御率2.40をマーク。オールスターゲームにも出場し、敢闘選手賞を受賞するなどブレイクを果たした。
「同じ背番号なので、同じように3年目でブレイクして、そこからさらにレベルアップして、まずはチームを代表する選手になりたい。そのためにも、昨年は果たせなかった開幕一軍入りを果たして、そしてずっと一軍にいて、ケガせずローテーションを守りきることが目標です」
また、これまで出力不足が挙げられることも多かったが、2年間のプロ生活での積み重ねにより昨年12月の時点で体重が入団時より11キロ増の89キロに到達。課題克服へ着々と前進している。
ソフトバンクは、ドラフト1位が大成しないと言われて久しい。
前田が入団する以前の10年間(2013年~2022年)の"ドライチ"を振り返ると、現在もソフトバンク在籍のまま一軍で活躍しているのは松本裕樹(2014年)ただひとりである。
高橋純平(2015年)、吉住晴斗(2017年)、風間球打(2021年)はすでに現役を引退し、田中正義(2016年/現・日本ハム)や甲斐野央(2018年/現・西武)は他球団移籍後に輝きを増すようになった。さらに、このオフの現役ドラフトでは佐藤直樹(2019年)の楽天移籍も決まった。
チームにまつわる悪しきジンクスを、前田悠伍なら打ち破ってくれるはずだ。










![Yuzuru Hanyu ICE STORY 2023 “GIFT” at Tokyo Dome [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41Bs8QS7x7L._SL500_.jpg)
![熱闘甲子園2024 ~第106回大会 48試合完全収録~ [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/31qkTQrSuML._SL500_.jpg)