【箱根駅伝2026】青山学院大は"13〜14番目の選手もしっ...の画像はこちら >>

前編:箱根駅伝で続く「青学大王朝時代」の源流

第102回箱根駅伝を制した青山学院大が、すでに次の箱根に向け、動き始めている。史上初の2度目の3連覇、直近12回の箱根駅伝で実に9回の総合優勝を飾っても、頂点への飽くなき挑戦サイクルは、変わることはない。

青学大はなぜ箱根駅伝で長期間、強さを発揮し続けているのか。熾烈なチーム内選考の日程から、その根源を考えてみる。

【箱根優勝から8日後の現実】

 1月11日、東京・荒川河川敷で行なわれた「東京ニューイヤーハーフマラソン」。上位10位までに青山学院勢が8人を占めた。結果を見てみよう(単位は「時間:分:秒」)。

1位 榅山一颯(1年) 1:02:59  
2位 黒田然(2年) 1:03:05  
3位 鈴木耕太郎(中大・3年) 1:03:24
4位 小野真和(東洋大・1年) 1:03:28
5位 前川竜之将(1年) 1:03:35
6位 佐々木大輝(2年) 1:03:38  
7位 上野山拳士朗(1年) 1:03:39  
8位 神邑亮佑(1年) 1:03:39  
9位 日向春空(1年) 1:03:40  
10位 中村海斗(3年) 1:03:47

 この結果を受けて、他大学の監督が言った。

「青学さんは、箱根駅伝に2チーム出したとしても、ある程度勝負できるんじゃないでしょうか。"青学B"も結構強いと思います」

 優勝した椙山は62分台、そのほかの選手たちも63分台でまとめている。箱根駅伝でシード権を争った学校の選手たちのハーフマラソンの自己ベスト記録を見ると、62分台後半から63分台の選手が多い。前出の監督が続ける。

「青学さんのニューイヤーハーフ組をBチームとすると、シード権争いは十分にできそうですから、怖いですよ。10位までに入った8人のうち、下級生が7人ですから、このメンバーが力をつけてくるのは間違いない」

 箱根駅伝優勝の立役者は言うまでもなく「シン・山の神」となった黒田朝日(4年)だ。しかし、黒田が往路先頭でフィニッシュできたのは、4区の平松享祐(3年)が区間3位と、シブい、最高のつなぎの走りをしたのが大きかった。

しかし、平松は"11番目の選手"で、本来は走る予定はなかった。年末から年始にかけてのドタバタを、平松はこう振り返る。

「12月29日の区間エントリーで4区に入りましたけど、30日の夜に監督から4区は小河原(陽琉、2年)が走るからと言われて、その夜はほとんど眠れませんでした。本当に気持ちが切れてしまいましたし、これでまた3年生世代から誰も箱根を走れなくなってしまったと思って。最上級生になる来年に向けて、どうやっていくのか、改めて考えないといけない状況でした」

 しかし1区に予定されていた選手が体調不良となり、小河原が1区へコンバート、そして平松はそのまま4区を走ることになった。つまり、"代役"である。

 その平松が、近年重要度を増している4区で区間3位の走りを見せた。まず、常識ではこの快走が考えられない。代役が走るとなると、2分から3分のマイナスとなってもおかしくないからだ。ところが平松は、遜色のない走りを見せた。

【急遽起用の4区・平松享祐が快走できた背景】

 平松が"当落線上"に浮かび上がってきたのは、11月9日に行なわれた世田谷246ハーフマラソンだった。青学大の上位選手の結果を振り返ってみよう(単位は「時間:分:秒」)。

3位 佐藤愛斗 1:01:57
4位 平松享祐 1:02:04
5位 中村海斗 1:02:08

 今回の箱根駅伝で言えば、世田谷ハーフからの"当選"は佐藤と平松のふたりだったことになる。それにしても平松と中村の間に横たわる「4秒」の意味は大きい。箱根を走れるのか、走れないのかは、人生を左右する。

 青学大で気が抜けないのは、この世田谷ハーフのあとの11月下旬にMARCH対抗戦の10000mがあり、メンバー選考ではかなり大きな意味を持つことだ。世田谷ハーフの上位3人は最終4組目を走り、以下の結果にとなった。(単位は「分:秒:」)

佐藤 27:55:93 8位
平松 28:25:01 19位
中村 28:49:40 26位

 佐藤が27分台を出して、ここでメンバー当確サイン。平松が11番目の選手となったのは、MARCH対抗戦で自己ベストは出したものの、集団の競り合いから脱落した内容がマイナスに働いたからだろう。

 箱根駅伝の選手選考について、原晋監督はふたつの重要な要素があると話す。

「陸上競技というものは、数値で表わすことができて、統計学からのアプローチが可能です。まず大切なのは、選手の絶対値、自己ベストですね。最大に出力した時に、どれくらいのタイムが出せるのか。これは大切な要素です。

そしてもうひとつは再現性。ポーンと自己ベストが出る選手というのは、いるんです。でも、大切なのはそれをきちんと再現できるかどうか。たまたまコンディションが合ったのではなく、計画どおりに出せることが重要なんです」

 青山学院の強さは、この「再現性」において厳しいテストを何度も課されることだ。

 特に11月は「全日本大学駅伝→MARCHルート」と「世田谷ハーフ→MARCHルート」、この2本を当てなければ再現性があるとは認められない。

 平松についてはMARCH対抗戦が微妙な結果だったこと、その後の最終強化合宿で逆転に至らなかったことで、11番目の扱いになっていたのだろう。しかし、激しい内部競争のなかで、平松は他大学であれば往路のエース区間に配置されるような力を身につけていたことになる。

 前出の監督が言う。

「たぶん、青学さんは11番目の平松くんだけじゃなく、13番目、14番目の選手たちも同じような走りができたんじゃないでしょうか」

 なんという選手層だ。

 恐ろしいのは、原監督は再現性について1年間をかけてずっと観察していることだ。

 今回の箱根駅伝で9区の区間賞を獲得した佐藤有一(4年)が言う。

「2月の宮古島駅伝の2区で結構いい走りができたんです(区間3位)。

それを見て監督が『佐藤、すごいよ』と言ってくれて。宮古島からトラックレース、夏合宿の練習消化率、全日本、MARCH対抗戦とトータルで監督は自分の走りを見てくれていたと思います」

 原監督は再現性の高い選手を、毎年、毎年箱根駅伝に送り出してくる。

 今年もすでにニューイヤーハーフから競争は始まっているということだ。

 この大会で上位に入った椙山、そして黒田朝日の弟である黒田然が、来年、箱根駅伝でたすきをつないでいる可能性は大いにある。

 青山学院の強さ。それは1年をかけたサバイバルにある。

つづく

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