【箱根駅伝2026】國學院大・前田康弘監督が分析する「総合2...の画像はこちら >>

前編:國學院大・前田康弘監督が振り返る第102回箱根駅伝

初の総合優勝を目指し、満を持して臨んだ第102回箱根駅伝。エース格を並べた1月2日の往路は4位で折り返し、3日の復路では総合2位まで追い上げた。

過去最高位で終えた國學院大の前田康弘監督にあらためて大会を振り返ってもらい、準備の舞台裏、区間配置の戦略などを聞いた。いまだから話せることもある。

【主将・上原琉翔が中心に進めた周到な準備】

 1年前に総合3位で終えた顔とは違っていた。

 1月3日、過去最高の総合2位でフィニッシュしたあと、國學院大の前田監督は悔しさをにじませつつも、テレビカメラの前で「清々しさもある」と口にした。いま持っている力を出しきれたという。予定どおりのベストオーダーを組み、出走メンバーは万全に近い状態でスタートラインに立つこともできた。

 その背景には、周到な準備があった。過去2年は大会前に感染症に悩まされたが、102回大会はいままで以上に学生主体でマネジメントし、体調を徹底して管理していた。

「主将の上原琉翔(4年)がリーダーとなり、どうすれば、感染症を未然に防げるのか、いかにベストコンディションで臨めるのかを選手ミーティングで確認していました。

 彼自身もかつての失敗を見てきたこともあったと思います。寮生活は、やっぱり選手間の意思統一が重要なんです。根本的なところで血が通っていないと、よくないことも起きるので」

 指導者が選手寮に住み込み、共同生活を送っているわけではない。監督と選手が顔を合わせるのは練習を含め、限られた時間だけ。

1日のほとんどは、学生同士で過ごしている。前田監督の目が行き届かないところもある。部員数は50人を超えるが、箱根駅伝のメンバー入りするのは16人、さらに出走するのは10人のみ。エントリーから漏れる部員が大半である。もう箱根出場のチャンスがない最上級生のマネジメントは、とくに難しい。

「上原はメンバー外の4年生たちとも一緒に御飯を食べに行くなど、ずっと密なコミュニケーションを取り、『最後まで頼むな』と話していました。新チームをスタートしたときから人と人のつながりを大事にしていたんです。これは結構、大事。チームの雰囲気、流れが変わってきますから。

 12月20日からは(感染症対策のために)選手間の取り決めで、外出禁止にしていました。私からは何も言っていません。仮に監督が強制的にそれをしてしまえば、不満が出たりします。

結果的にミスを生む原因になるんです」

【過去の反省を生かした練習計画が奏功】

【箱根駅伝2026】國學院大・前田康弘監督が分析する「総合2位」につながるチームづくりの変化と手応え「これだな、というパターンが見つかりました」
全日本から箱根までの調整法を変えたことが奏功したという國學院大・前田康弘監督 photo by Sportiva

 箱根駅伝の本番に合わせるピーキングも前年度とは違っていた。11月までの流れは、成功体験をもとにルーティンができている。出雲駅伝では2連覇を達成し、前年度は全日本大学駅伝で初優勝した実績がある。課題は11月から1月までの2カ月の調整だった。正解がなかなか見つからず、自信をあまり持てていなかったが、今回は過去の反省を踏まえて、いままでにない練習スケジュールを組み立てた。

「うちなりに勝負に出て、うまくはまったと思っています。これだな、というパターンが見つかりました」

 前年度まではメンバー選考に注力するあまり、練習をやりすぎてしまう傾向にあったという。当然、当落選上の選手たちはレギュラーの座を得るために必死になる。箱根路を走れなければ、それこそ1年の苦労が水泡に帰す。トライアルの回数が増えていくと、絶対に外せないという重圧がかかり、そのぶんだけ疲労は重なっていく。悩ましい問題である。

「多くの選手たちは選考練習で100%の状態に持ってくるので、ピーキングがズレてしまうんです。ピークアウト気味で本番を迎えることもあって......」

 そして、行き着いた先の答えは選考練習を減らすことだった。

「2~3回やっていた見極めを1回のみにしました。キャプテンの上原ら幹部たちには選考に力を注がず、コンディション重視で箱根に臨みたいという意向を伝え、納得してもらったんです。『こちら側の見る目を信じてほしい』と。選手からも『監督の目で決めてほしい』と言われたので、その方向性になりました」

 なかには一度きりの選考練習で外してしまい、涙をこぼす選手もいた。苦渋の決断を下せざるを得なかったが、これもまた次のステップへ進むためである。区間オーダーを出す前には選手たちの意見も聞き、確認を取った。最終的には指導陣と選手たちの考えはほとんど一致し、チーム一丸となって正月の大舞台へ。

【好走・野中恒亨への物足りなさは期待の裏返し】

「うちはセオリーどおり、往路を全力で取りにいくつもりでした。戦力の割合でいけば、9対1くらいのイメージです」

 攻めるところは攻め、守るところは守る--。大会前に前田監督が何度も話していた真意は、どこにあったのか。

「1、3、4区は攻め、2、5区は守りでした。1区の青木瑠郁(4年)が首位前後で渡し、2区の上原琉翔は粘る。

3区の野中恒亨、4区の辻原輝(ともに3年)で突き放し、5区の髙石樹(1年)で逃げ切るプランでした」

 練習から好調を維持していた青木と辻原は、ほぼ想定どおり。4年生のスターターは区間新の区間賞、4区を志願した3年生はふたりを抜いて区間4位と力走した。少し思惑と違ったのは野中。出雲駅伝、全日本大学駅伝といずれも3区で区間2位、区間賞と好走したジョーカーには大きな期待を寄せていたのだ。当初は前回同様の1区で起用する構想もあった。

「野中はタイムを出す前から(11月、10000mで27分36秒64をマーク)強いのはわかっていました。前回、中央大の吉居駿恭選手(4年)が大逃げしたようなパターンも考えましたが、それは大きなギャンブルでした。警戒もされますからね」

 現実的に考えて、起用したのは3区。当日は6位で襷をもらい、区間3位でまとめて5位に押し上げた。外したわけではないものの、出雲、全日本のように流れを変えるゲームチェンジャーの役割までは果たせなかった。本来のポテンシャルを考えると、物足りなさは拭えない。区間タイムは1時間01分22秒。

同世代である中央大の本間颯(3年)が1時間00分08秒で区間賞を獲得しており、前田監督はエース候補に奮起を促していた。

「野中はIQが高いので、今回の経験からいまの自分に何が足りないのかも、わかったはずです。決して失敗ではないのですが、あそこで他大学に勝たないと。持っている能力を考えれば、60分(1時間00分)30秒は切れたのかなと思います。

 新チームでは、もうひと回り大きくなると思っています。彼が主軸となり、駅伝力を発揮しなければ、どのタイトルも取れなくなります」

 周囲にとって、大きな驚きだったのは鬼門の5区だろう。過去2大会は山上りで順位を落とし、先頭と大きなタイム差をつけられてきた。102回大会では、その「山問題」を見事に解決してみせた。

後編へつづく〉〉〉國學院大・前田康弘監督が固めた総合優勝への決意「覚悟を決めて考えないと、一生、原さんの時代で終わってしまう」

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