現地発! スペイン人記者「久保建英コラム」

 今シーズン前半の不調から脱し、昨年末から好プレーを続けていた久保建英だったが、バルセロナ戦で負傷離脱した。今回はペッレグリーノ・マタラッツォ監督就任後の久保のプレーとケガの状態について、サン・セバスティアンの地元紙『ノティシアス・デ・ギプスコア』で、長年レアル・ソシエダの番記者を務めるマルコ・ロドリゴ記者に言及してもらった。

久保建英の戦線離脱は地元スペイン人記者も「残念でしかたがない...の画像はこちら >>

【サイドでも中央でもプレーして結果を出す】

 昨年末に成績不振で解任されたセルヒオ・フランシスコの後任としてやって来たペッレグリーノ・マタラッツォ監督は、現時点で精神面と戦術面の両方でチームにプラスの効果をもたらしている。

 久保建英のコンディションは昨年末からすでに改善傾向にあったが、マタラッツォ指揮下になってからは、はるかにエネルギッシュにプレーするようになった。監督交代という刺激に反応したチームが全体的に機能することで、久保のパフォーマンスは向上している。データは嘘をつかない。マタラッツォ体制での最初の3試合で2アシストを記録し、さらに決定機を増やしていた。

 戦術面で言えば、久保は攻撃において役割の変化が少なかった選手のひとりだ。マタラッツォは前任者同様、相手にダメージを与えるため、久保にイマノル・アルグアシル時代のようにサイドに張りつかせるのではなく、いわゆる「8番のポジション(攻撃的MF)」でボールを受け、中央付近でプレーさせることを求めている。

 これは、久保がサイドでプレーしていないという意味ではない。マタラッツォの特徴にはセンターバックによるビルドアップがあり、このメカニズムにおいて久保は、ウイングとしてサイドに開き、チームに幅を与える役割も担っている。

 PK戦の末に勝利した1月13日の国王杯ラウンド16オサスナ戦後、途中出場からすばらしいプレーを披露したアルバロ・オドリオソラに関する質問を受けたマタラッツォ監督はその重要性について、「サイドから攻撃参加し、久保が中央でボールを受けられるようにする攻撃力にある」とコメントした。

 ラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)の多くの選手が役割や状況を変えるなか、久保は右サイドに留まり、攻撃においては純粋なウイングとやや中央寄りのFWのようなポジションを交互に務めている。久保にとって、インサイドでも十分に貢献できると新監督に認められていることは非常に重要だ。なぜなら彼のプレーは、より中央、よりゴールに近い位置でプレーすればするほど輝くからだ。

【新監督は久保を称賛】

 一方、チームの守備が変化しているなかで、久保にも新たな任務が生じている。

 ラ・レアルは今、プレスのかけ方が変わっている。以前は攻撃で採用していた4-3-3で、久保は相手の左センターバックと左サイドバックの中間に位置していた。アグレッシブな動きが求められる場合はセンターバックに積極的にプレスし、より慎重にプレーする必要がある場合は後ろに下がり、相手のサイドバックをマークした。

 マタラッツォに代わってからのラ・レアルは、よりベーシックな4-4-2でプレスをかけている。久保は右サイドに留まり、相手チームの左サイドバックだけを警戒すればよくなった。しかし、バルセロナ戦で見られたように、相手を追いかけて自陣のディフェンスライン近くまで下がらざるを得ない局面も生じている。

 久保は事実上、5バックの右ウイングバックのような役割を担い、本来のポジションではないエリアでプレーしながらも懸命に動き回り、与えられた役割を全うしていた。

 バルセロナ戦前、シーズンの佳境を迎えるにあたり、久保への期待は大きかった。なぜなら彼が本来のレベルを取り戻し、マタラッツォが全幅の信頼を寄せていたからだ。監督はそれを行動で示し、ゲームプランで重要な役割を与えていた。また、そのことを言葉でも明らかにしている。

 新年最初のアトレティコ・マドリード戦前日の記者会見で、日本人選手全般に対する強い信頼を示しつつ、久保を称賛した。

この監督がドイツのシュトゥットガルトで遠藤航や伊藤洋輝と一緒に仕事をしていたことは特筆に値する。会見ではさらに、昨年3月に家族全員で日本を訪れ、文化や日本人の特徴を直接知ろうとしたとも明かした。

 好調を維持していた久保は、少なくとも中期的に監督の構想のなかで確固たる地位を築いているように見えた。シーズン序盤に最も活躍していたアンデル・バレネチェアが調子を崩しているため、有利な状況にあったのだ。

 前線のレギュラーとして確実視されていた久保は、近い将来システム変更があった場合でも完璧に順応できるだろう。マタラッツォは今、4-2-3-1を採用しているが、ラ・レアル監督就任時、森保一監督が日本代表で採用する3-4-2-1を好む監督という評判だった。そのため、システム変更があった場合、久保はそのシステムを熟知する選手のひとりになるはずだった。

 しかし、残念ながら彼は今、戦線離脱を余儀なくされてしまった。

【今年に入りほぼフル稼働だった】

 この2カ月間、久保が再び笑顔を見せていただけに、本当に残念でしかたがない。チームは2026年を順調にスタートし、首位のバルセロナ相手に2-1の大金星を挙げたにもかかわらず、筋肉系のトラブルで負傷交代することになった。ある意味、彼は新監督の信頼による犠牲者となってしまったのだ。

 マタラッツォ監督は非常に過酷な1週間を乗りきるために、久保に重要な役割を与えていた。

ヘタフェ戦で90分間、オサスナとの国王杯では延長戦を含め120分間フル出場し、バルセロナ戦ではハードワークを強いられた。

 攻撃時は右ウイングでプレーし、守備では左サイドバックのアレハンドロ・バルデと激しく競り合い、最終的にはディフェンスラインに吸収され、右ウイングバックのようにプレーした。

 さらにマタラッツォは後半半ば、右ウイングバックの本職アルバロ・オドリオソラを投入した際、久保を休ませることなく前線に残し、最前線でプレスをかけ、深い位置のスペースへ走り込むよう指示を出した。今年に入りほぼフル稼働した結果、久保の左足の筋肉はそのスプリントの最中に限界を迎えてしまった。

 試合後の記者会見でマタラッツォは久保について、「筋肉に痛みがあるのは明らかだ。ケガの深刻さの確認を待っている。タケは攻撃面だけでなく、守備面と献身性においても、我々にとって非常に重要な選手なので問題だ」とプラン変更の可能性を示唆した。

 1月19日にクラブが発表したメディカルレポートでは、左足ハムストリングの負傷を伝えただけで、ケガの程度や復帰までの推定期間を明らかにしていない。いずれにせよ、数週間の離脱が見込まれている。

 このあと、アスレティック・ビルバオとのバスクダービーや国王杯準々決勝アラベス戦などの大一番を控えているため、チームにとって大きな痛手となるが、ケガが重傷の場合は久保自身にとっても、3月下旬の代表戦、つまりワールドカップ前の最後の代表招集が危ぶまれる可能性もある。

 今回のケガからどれほど早く回復できるか現時点で不透明なのは、ラ・レアルでの3年半のキャリアのなかで、彼が筋肉系の大きなケガを一度も経験したことがなかったからだ。

 これまでは肩や足首の外傷だったが、今回は試合中に何度もスプリントを繰り返したあと、筋肉系の負傷でピッチに倒れ込んだ。

ピッチで動けず地面に横たわる久保にスタンド全体から「クボ、クボ」と声援が送られるなか、担架で運び出されていた。

 久保は最高の時期も最悪の時期もサポーターから最も愛される選手のひとりだ。サン・セバスティアンでは誰もが、早期復帰を心から願っている。

髙橋智行●翻訳(translation by Tomoyuki Takahashi)

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