SVリーグ 主要選手インタビュー 
山本智大/大阪ブルテオン 後編(全3回)

【ブリザールとプレーすると目が輝く】

「(日本)代表では、ロス五輪に向けて、まずは出場するために今年のアジア選手権でしっかり勝つことですね」

 山本智大はそう言って、堅実に未来を見据えている。

【男子バレー】ベテラン山本智大の飽くなき向上心「まだいける」...の画像はこちら >>

「もちろん、SVリーグでも優勝を目標にしています。リベロとしていいプレーを保ちながら、チャンピオンシップに向かっていきたいです。

昨シーズンは悔しい思いをしました(レギュラシーズンを首位で終えながら、チャンピオンシップは準決勝で敗退)。

 今シーズンはサントリー(サンバーズ大阪)が安定した強さで、数字でも抜けていますが、まずは離されないようにくっついていって。勝てない相手ではないので、クオリティを維持することが大事。チャンピオンシップは一発勝負ですからね」

 今オフ、大阪ブルテオンにはフランス代表の一員としてパリ五輪で優勝した天才セッター、アントワーヌ・ブリザールが入団した。そのインパクトは尋常ではない。SVリーグ全体の技術をイノベーションするほど、と言ってもよさそうなほどに。

「ブリザールと近くでプレーすると、選手の目が輝いていますね。SVリーグのチームがトップレベルの高身長の外国人セッターを取ったのは初めてだと思います。でも(ブリザールの成功によって)、これから増えるかもしれません」

 そう話す山本の目もキラキラしている。

「ブリザールは長身(196cm)のセッターで、"トスの出"が速いんです。相手ブロッカーが間に合わないので、自ずと相手のブロックが1枚とか、薄くなる。それに彼自身、得点力も高く、少なくとも1試合あたり5、6点は取れる。

練習では打たないんですけどね(笑)。

 自分のパスは普段もっと短めですが、(ブリザールには)わざと打てるようなパスを出して、ツーアタックもトスもできるように。自分もトスでアシストした気分になったりして、めっちゃバレーが楽しいです!」

【リベロのライバル、小川智大とはご飯にも行く仲】

 昨年9月にフィリピンで開催された世界バレーの取材エリアで、山本は現地の人たちに囲まれていた。石川祐希、髙橋藍の人気は別格として、それに次ぐ人の多さだった。バレー漫画『ハイキュー!!』の登場人物である西谷夕の実写版──そんなキャラクターで注目を集めていたようだ。

 拾う、つなぐ、ラリーの応酬。そうした日本バレーの粘り強さの象徴として、山本はフィリピンでも好評だった。

「小川(智大)選手もそうですが、日本のリベロは世界のトップで活躍できる力を持っていると思います。実際、海外で日本人リベロが活躍するようになっています。(自分は)その流れを作れたのかな」

 山本はそう誇らしげに言う。今や日本バレーはリベロ大国と言っていいだろう。

 日本代表では、山本、小川という優れたリベロがしのぎを削っている。甲乙つけ難いふたりが静かに散らす火花。

それは日本バレーを明るく照らすようになった。

 そこで、山本に問うた。

──小川選手はどんな存在ですか? 切磋琢磨する刺激的な存在か、勝って一番を誇りたいライバルか、融和的に戦う仲間か?

 山本は一拍だけ置いて答えた。

「どれも全部ありますね。でもコートに入ったら、"絶対に負けない"という気持ちでやっています。普段は普通に仲が良いし、ご飯も行く間柄。リベロならではの、バレーの会話もできる。そんな人、なかなかいないんですよ、同じポジションで、敵じゃないですか。でも、僕は彼をリスペクトしている。お互いコートに入ったら、"やってやる"って気持ちですけどね」

 リベロは原則的にひとつのポジションを争う。しかも五輪代表のリベロ枠は、基本的にひとつ。攻撃に参加しないだけに、守りでミスが許されない。

言わば引き算のポジションで、その重圧に耐えられる者だけのポジションだ。

 山本と小川は親密な空気のなか、それぞれリベロという仕事と向き合っているのだろう。リベロ以外の選手は、息苦しくて耐えきれないかもしれない。

 では、小川にあって山本にない、山本にあって小川にないものがあるとしたら、それは何なのだろうか。

「うーん......難しい質問ですね。『取り方も似ている』ってよく言われるし、サイズやディフェンスや動き方も......。このレベルでも、この日はいい、悪いという調子の波がある。

 それは僕と小川だけじゃなく、世界的なトップリベロの(フランス代表ジェニア・)グラベニコフ選手も、(アメリカ代表エリック・)ショージ選手も、(ポーランド代表パベウ・)ザトルスキ選手にも、"いつも通りじゃない"とか、逆に"やっぱりうまいな"って日があるんです。そこで自分は"より波を少なくする"、"普通のプレーを続ける"というのを心がけています」

【「声かけ、連携、指示出し、人との信頼関係」】

 たとえ調子が悪くても、これ以下は下げない。その地力とバランスこそ、ハイレベルな守備者が目指すところか。

「バレーは小1からずっとやっていますけど、僕にはこれまで、"やばい、どうしようもない"と感じた試合があまりないんです。安定したプレーが自分の強みかもしれません。

ディグを得意とするリベロとしては、スーパーなプレーも求められますけど、"普通にセッターに返す"とか、当たり前を当たり前にプレーするっていうのがすごく大事で」

 普通にやる。それはやるべきことを怠らずにやることだが、それが一番難しい。

「ブロックフォローひとつとっても、やり続けることが信頼につながるんです。そこをなおざりにすると、日本代表にはなれない。目立つプレー以上に、普通を続けられるか。日本には僕や小川だけじゃなく、良いリベロが多く出てきましたけど、声かけ、連携、指示出し、人との信頼関係など、全部がつながらないと代表で活躍するのは難しいと思います」

 かつて、山本に「タイムマシンで過去に戻り、バレーを始めたばかりの自分に会えたら、何と伝えますか?」と尋ねたことがあった。彼は「何も言いません。手は何ひとつ抜いてこなかったんで」と答えていた。その実直さと自負心が彼の本性だろう。

 そこで最後に訊いた。

──タイムマシンで、天寿をまっとうしようとしている未来の自分に会えたら、今の山本選手に何と言ってくると思いますか。

「えー、どうですかね。

今の僕への言葉ですよね? うーん、『謙虚な気持ちを忘れず、もっと上を目指せ』とか、ですかね。リベロ賞をもらって、オリンピックも出て、とかありますけど、自分の中で"まだいける'と思っているので。

 単純に、"今のは取れた"、"まだいける"っていうのがあるんですよ。年齢的にもリベロは比較的長くやれる。やれるところまでやって、日本バレー界に貢献したいです。リベロとしてやるべきことはまだたくさんあるので、上を目指したいなって」

 31歳の山本はそう言って、満月が柔らかく輝くような笑みを浮かべた。その光は闇夜も照らす希望のひと筋か。

 リベロ山本、底はまだ見えない。

(了)

前編へ戻る >>> 日本代表と大阪ブルテオンの守備職人、山本智大の横顔「見返してやると思ったときが一番の転機」

山本智大(やまもと・ともひろ)
1994年11月5日生まれ、北海道江別市出身。小学1年生のときにバレーボールを始め、酪農学園大附とわの森三愛高、日本体育大を経て、2017年にFC東京(現・東京グレートベアーズ)に加入。2018年に日本製鉄堺ブレイザーズへ移籍するとレギュラーに定着し、2019年に日本代表に初選出された。東京、パリと2度の五輪のほか、世界選手権に5回、ネーションズリーグに5回、ワールドカップに2回出場。

日本随一のリベロの座を確立している。2024-25シーズンのSVリーグのベストリベロ、2025年世界クラブ選手権のベストリベロにも選出されている。

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