FC町田ゼルビア
相馬勇紀インタビュー後編
◆相馬勇紀・前編>>W杯メンバー入りへ決意「前線の選手は数字でしか評価されない」
ポルトガルでの1年半は、間違いなく相馬勇紀を成長させた。
昨シーズンは新たに与えられたシャドーのポジションでFC町田ゼルビアの攻撃を牽引し、9得点・10アシストの活躍でJリーグベストイレブンを受賞。
Jリーグで輝きを放った高純度のパフォーマンスを、いかにして日本代表の勝利へ還元することができるか。インタビュー後編では、その論理的なアプローチに迫る。
熾烈な代表選考のなかで、数少ない国内組が提示すべき独自の価値とは──。カタールワールドカップと海外移籍によって育まれた28歳の「思考プロセス」を深掘りする。
※ ※ ※ ※ ※
── 名古屋グランパスで主力を務めたのち、2023年1月にポルトガル1部のカーザ・ピアに期限付き移籍しました。待望の海外挑戦となったわけですが、結果的に1年半でJリーグに復帰しています。もう少しヨーロッパでプレーしたかったという思いはありますか。「もちろん、最初は向こうで移籍先を探していました。ヨーロッパのほかのチームに行くという選択肢もあったんですが、僕は名古屋からのローンで移籍していて、期限までにいいチームがなかなか見つからなかったんです。
たとえばポルトガルで圧倒的な結果を出していれば、次のチームは見つかっていたはずなので、その意味では自分の力不足でしたね。そういったなかで環境を変える必要性を感じていたので、日本に戻ってくることに決めました」
── 今の日本代表は海外組が主体ですが、日本に帰ってきたことによって代表から遠ざかってしまうという危機感はありませんでしたか。
「逆に僕は『近づけたんじゃないかな』と思っています。戻る決断をした時には、未来がどうなるかはわかりませんでした。ただ、町田を選んで、最初はケガもあって結果を出せなかったんですが、昨シーズンはそれなりの数字を出すことができました。
そして町田でいいパフォーマンスができたからこそ、E-1選手権(2025年7月/韓国)にも行くことができた。10月の代表戦にも選ばれて、ブラジルと試合することもできました。そこでスピード感だったり、緊張感を体感できたことは、自分にとって本当に大きかった。ここでやりたいっていう気持ちもさらに高まりました。
ゴールへのイメージは、もしかしたらヨーロッパの違うチームでプレーするよりも持てているかもしれない。だから今は、この道を選んでよかったと思っています」
【海外組を相手に「ぜんぜんやれる」】
── 森保一監督は日常的に高いレベルや強度でプレーすることを重視しています。代表選考の観点で考えると、Jリーグでプレーすることは不利に働くと思いますか。
「個人的には特に思っていないですね。森保さんがおっしゃっていることは、たぶん100パーセント合っていると思います。ふだんから向こうの強度でやることが力になるってことは、僕もやっていたからこそわかります。
でも、日本でプレーしている以上、そこを考えても意味がないと思っています。日本でも圧倒的な力を示していけば選ばれる、という気持ちですね。そこはメディアのみなさんもそうだし、サポーターのみなさんも一番気にされているところかなと思うんですけど、個人的にはあまり考えてないというのが本音です」
── 昨年10月に久しぶりに海外組と一緒に練習してみて、スピードや強度の部分で差を感じることはなかったですか。
「グランパスに在籍していた前回のワールドカップの時や、ポルトガルに移籍した当初は、代表に行っても練習の1対1で剥がされるシーンがけっこうあったんですよ。だから『もっとレベルアップしなくちゃいけない』という危機感を覚えた記憶がありました。
でも、10月の時はすごく動けていたし、『ぜんぜんやれる』という感覚だったんですね。もちろん日常の環境は重要ですけど、日本でも進化できている手応えはありますし、今は自信を持ってやれています」
── Jリーグでも町田ゼルビアをはじめ、ヴィッセル神戸やサンフレッチェ広島など、強度を重視しているチームが増えてきているのも影響していますか。
「そこは難しいところです。インテンシティっていうのは感じますけど、やっぱり海外と比べちゃうと、まだまだだなと思います。誤解を恐れずに言えば、個人的にはこれをインテンシティって呼んでいいのかな、とも思うんですよね。
だから、日常的にインテンシティの高さを体感できているわけではないですが、先ほども話しましたけど、自分としてはポルトガルでの経験があって、そこで得た感覚やプレーは正しかったと思っています。
たとえば、クロスを上げる際のボールを置く角度ですね。代表でプレーしていても、Jリーグでプレーしていても、相手の足に当たらない角度って一緒なんですよ。そういったノウハウみたいなものは感覚として身につけられたので、そこは自分としての強みかなと思っています」
【W杯で活躍して輝かないとダメ】
── 日本代表に選ばれている国内組の選手のなかで、結束力のようなものが生まれていたりするんですか。
「(FC東京の長友)佑都さんとはあると思います。僕が代表に最初に入った時から佑都さんから何か吸収しようと思って、一緒にいさせてもらうことが多いんです。代表での移動も国内から一緒に行くので、すごく話しますね。
昨年のE-1では佑都さんがチームキャプテンで、僕はゲームキャプテンを任せてもらったんですが、あの時は初代表の選手が多かったので、雰囲気を作っていくためにたくさん話をしました。その後、昨年11月に天皇杯の準決勝でFC東京と対戦したんですけど、その時は代表戦と日程(11/14vsガーナ、11/18vsボリビア)が重なって、ふたりとも招集されなかったんです。
試合は僕らが勝ったんですが、試合が終わったあとに『優勝してくれ』とポジティブな言葉をかけてもらい、『来年は絶対にワールドカップに行こう』とも言ってくれました。僕も当然その気持ちがあるので、一緒に行けたらいいですね」
── 相馬選手の一番の強みはどこにあると自身で認識していますか。
「球際、運動量、スプリントの強度は、僕が大事にしている部分ではあります。あとはカウンターですね。カウンターを狙いにいくのはもちろん、逆にカウンターを仕掛けられた時に素早く戻るところは、代表チームとしても強く求められているので、そこで自分の特徴を出していきたいですね」
── 同じポジションの選手は気になりますか。
「11月の試合はもちろん見ましたけど、あまり気にしてないです。考えてもしょうがないというか、先ほども話しましたけど、結局はワールドカップ前のコンディションが一番重要だと思いますから、そこを意識してやっていくだけです」
── 4年前は悔しさを味わいましたが、北中米ワールドカップのメンバーに選ばれたら、どのようなプレーをしたいと思っていますか。
「4年前に痛感したのは、『ワールドカップのピッチで活躍できるかどうか』ということ。やっぱり、あそこで活躍して輝かないとダメなんです。だから常日頃から、活躍するために何をすべきかを考えています。攻撃ではどういったプレーが必要なのか。守備ではどういったプレーが求められるのか。そこを意識しながら、ワールドカップまでの日々を過ごしていきたいです」
【国内組がJリーグを盛り上げる】
── これから始まる新シーズンへの意気込みを聞かせてください。
「昨年は初タイトルを取ることができて、チームとして急激に進化していると思っています。リーグで結果を出すのはなかなか難しいですけど、優勝することが一番、チームのレベルアップになると思うので、そこは成し遂げたいと思っています。
Jリーグを盛り上げるという意味では、代表選手は注目されると思うし、そういった選手が結果を出せばメディアに出る機会も増えて、いろんな人の目につくとも思います。僕はいつかJリーグがほとんどの試合で満員になるようなリーグになってほしいと思っています。
そのために、いろんな人たちがアイデアを出して動いてくれています。その期待に応えるためにも、選手たちは激しく戦い、すばらしいゴールを決め、かっこいいプレーを見せなければいけません。自身の力をすべて発揮して、Jリーグを盛り上げられたらなと思います」
※ ※ ※ ※ ※
北中米ワールドカップまで、あと4カ月──。
海外組が主流となった今、Jリーグで磨き抜いた個の力が日本代表の武器になることを証明すべく、相馬勇紀は覚悟を持って新シーズンに臨む。
<了>
【profile】
相馬勇紀(そうま・ゆうき)
1997年2月25日生まれ、東京都調布市出身。早稲田大学在学中から特別指定選手として名古屋グランパスでJリーグデビューを果たし、2019年に正式加入。2023年にポルトガルのカーザ・ピアに期限付き移籍でプレーしたのち、2024年7月にFC町田ゼルビアへ完全移籍する。日本代表デビューは2019年12月の中国戦。2022年カタールワールドカップメンバー。国際Aマッチ19試合5得点。ポジション=FW。身長166cm、体重68kg。

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