【ミラノ五輪】踊る鍵山優真に大歓声「来い、来いという気持ちで...の画像はこちら >>

【大舞台を楽しみ尽くすような踊り】

 ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート団体、日本は開会式当日(2月6日/現地時間)の予選3種目が終わった時点で優勝候補筆頭のアメリカに2点差の2位につけた。

「欲を言えばアイスダンスでもう1点ほしかったが、アメリカと戦っていく準備はできました」と話す竹内洋輔監督。翌7日の予選最終種目の男子ショートプログラム(SP)に出場する鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)について「彼自身がやるべきことをやりきることが、金メダルへ向かっていくためにすごく重要なことだと思います」と語った。

 応援席でチームメイトの演技を見守った初日、鍵山はアイスダンスの吉田唄菜・森田真沙也の演技に、坂本花織とともに涙を流した。

「唄ちゃん(吉田)はジュニアからずっと一緒に試合に出ている仲だし、真沙也くんも同期ですごく仲良くしていて。ずっと一緒に滑ってきた仲間が五輪の舞台で演技している姿を見ていたら、いろいろな思い出がフラッシュバックして涙が出てきた。リンクから上がったふたりの顔を見たら安心して号泣してしまいました」と鍵山は話していた。

 そして仲間の思いも背負い、「優勝するためには自分の演技が大事になる」と臨んだ7日のSP。「緊張した」とは言うが、それを上回る気迫を見せた。

 序盤の滑りは少し硬さもにじんだが、最初の4回転トーループ+3回転トーループはGOE(出来ばえ点)をすべて4~5点の高い加点を得るジャンプにすると、次の4回転サルコウもGOE3~4点を並べるジャンプで、丁寧な滑りを見せる。そしてトリプルアクセルも決め、「降りた瞬間はすごくホッとした」。

 その後は、彼の真骨頂と言える演技だった。ステップシークエンスは「レベルをしっかり取ることに集中しながらも、周りのお客さんも見えました」と、鍵山らしさを存分に見せつけた。

オリンピックを楽しもうと思っていたし、ステップの時は『盛り上がらずにはいられないよな』という感じで『来い、来い』という気持ち。何も反応がなかったらすごく寂しかったけど、一か八かで賭けに出ました」と、アドリブでバックサイドの観客を挑発するように盛り上げる仕草を見せた。

それで大きな歓声が湧き上がると、「踊る鍵山」の表情はさらに豊かに、オリンピックの舞台を心の底から楽しみ尽くすように滑っていた。

 そのステップシークエンスはジャッジ全員がGOE加点で満点の5点をつけた。演技を終えた瞬間には両手を突き上げると、さらに叫びながらガッツポーズをし、跳び上がって喜びを表現した。

【自己最高得点に迫り世界王者を破る】

 竹内監督は鍵山の演技をこう評価する。

「すばらしいのひと言に尽きます。彼には一番プレッシャーがかかったと思います。りくりゅう(三浦璃来・木原龍一)や坂本花織の気合いのこもったパフォーマンスを見て、自分も続かなければと思っただろうし、そんななかで本当に集中をしていた。だからこその、最後のあの喜びのパフォーマンスだったと思います」

 鍵山の得点は、昨年12月のGPファイナルで更新した自己最高得点108.77点に0.1点届かないだけの108.67点。そのあとに滑った世界王者、イリア・マリニン(アメリカ)は鍵山の得点を意識したのか、予定していた冒頭の4回転アクセル+3回転トーループをこれまで高得点を出していた4回転フリップに変更した。

 だが、その後のトリプルアクセルは少し詰まる着氷になって減点されると、後半の4回転ルッツ+3回転トーループでもルッツが回転不足の判定となる。珍しくミスの出る滑りで98.00点にとどまり、鍵山が1位の10点を獲得。アメリカと日本の得点差を1点までに縮めた。

 人並み外れた高い資質を見せつけるようにハイレベルな演技を続けてきたマリニンが、初めてプレッシャーを感じた戦いだったのかもしれない。

「ミラノに来てからはうまくいっている感覚がすごくあって、オリンピックと相性がいいのかなって思っているんですけど(笑)。その感覚が本番でも出ていることはいいことだと思います。自己ベストに近い点数が出たことはすごく大きいけど、まずはチームに貢献できたことを一番うれしく思います。このあとの個人戦もすごく大事になってくるので、今日の感覚を忘れず、しっかりと研ぎ澄ませながら頑張りたいと思います」

 鍵山はそう振り返った。

 優勝を狙うと仲間たちと誓ったこの団体で渾身の演技ができたことは、鍵山が殻を破るための大きなきっかけとなったかもしれない。そういう意味では、単にマリニンから勝利を挙げた結果以上に、今後の演技の充実に向けても得るものが大きかっただろう。

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