ロコ・ソラーレの鈴木夕湖&吉田夕梨花が徹底分析
五輪に挑むフォルティウスの可能性(前編)

2026年ミラノ・コルティナ五輪が開幕した。注目は過去2大会連続でメダルを獲得してきたカーリング女子だ。

今回、女子日本代表として出場するのは、五輪初出場となるフォルティウス(リード近江谷杏菜、セカンド小谷優奈、サード小野寺佳歩、スキップ吉村紗也香、リザーブ小林未奈)だが、はたしてメダル獲得のチャンスはあるのか。その可能性について、2018年平昌五輪で銅メダル、2022年北京五輪で銀メダルを手にし、フォルティウスのことをよく知るロコ・ソラーレの鈴木夕湖と吉田夕梨花に分析してもらった――。

【ミラノ五輪】カーリング女子日本代表には大きなアドバンテージ...の画像はこちら >>
【女子日本代表のアドバンテージ】

――まずは、ミラノ・コルティナ五輪に挑むカーリング女子日本代表のフォルティウスについて、どういった特徴を持つチームなのか、教えてください。

鈴木夕湖(以下、鈴木)カーリングの長いシーズンのなかでは、どのチームも(調子の)浮き沈みはどうしてもあると思うんですが、(フォルティウスは)9月の稚内(日本代表決定戦)だったり、12月のカナダ・ケロウナ(五輪世界最終予選)だったり、一番勝ちたいところにピークをしっかり合わせてきました。そうしたピーキングの能力がすごく高いチームだと思います。

吉田夕梨花(以下、吉田)今シーズンは特に近江谷杏菜選手(リード)と小谷優奈選手(セカンド)のフロントエンドの調子がいいですし、(サードの)小野寺佳歩選手は(好不調の波がなく)ずっとうまい。

鈴木 そうだね。センターでもコーナーでも戦えるバランスのいいチーム。しかも、テイクが本当に上手なので、実際に対戦していて(ハウスの中に)ストーンを積んでいっても、小野寺選手がランバック(※1)を決めたりして、(ハウス内を)広くされてしまう。
※1=ガードの石などを使ってハウス内の石を弾き出すショット。

――五輪本番での戦いも期待されます。

吉田 どの国もそうですけれど、最後はやっぱり(司令塔である)スキップ次第になってきます。

その点、夕湖さんが言ったように日本チームは今シーズン、スキップの吉村紗也香選手の勝負強いショットで絶対に勝たなきゃいけないゲームをすでに突破してのオリンピックですから、精神的にはラクに戦える部分があるかもしれません。

鈴木 確かに。うちらも北京五輪の最終予選(2021年12月)の時がいちばんプレッシャーあった気がする。

吉田 その前のトライアル(日本代表決定戦/2021年9月)もそう。国内は国内で、やっぱりおかしな緊張感はあった。

鈴木 そうだよね。そのふたつを勝ったんだから、オリンピックはもう楽しんでほしい。

吉田 うちらの時はコロナ禍で試合数が少なかったので単純に比較はできないけれど、終わってみれば、ファイナルの舞台に立ったのは、最終予選からオリンピック出場を決めた2チーム(イギリスと日本)だった。

鈴木 結果的には(五輪前の)12月にプレッシャーのかかる試合ができてよかった。だから今回も、日本にとって最終予選を戦ったことはプラスに働くと思っています。

【下ブレが小さいスイスは間違いなく強い】

――続いて、日本と対戦する出場各国についても教えてください。2月12日(現地時間、以下同)の初日は、スウェーデンとデンマークと対戦。

その後、3戦目は14日に優勝候補のスイスと対戦します。

吉田 スウェーデンも(日本チーム同様)すごくピーキングがうまいチームです。

鈴木 シーズンによっては、「あれ? 今年(のワールドツアーで)は全然ポイントがないんだな」という印象があっても、気づけばオリンピックでは必ずメダルを持っている。自分たちのライフイベントとカーリングとのバランス、そのコントロールがすごくうまい気がします。

吉田 今季も(スウェーデン代表チームの)世界ランキングはそこまで高くないし(12位。2月1日現在)、(ツアーなどで)こなしてきた試合数も多くない。

鈴木 そうそう。でもそれが、オリンピックシーズンにおける"あえて"のスケジュールだったらちょっと怖い。

吉田 デンマークも今年に入って調子を上げてきた印象があります。

鈴木 ここ1カ月の間に、パース(スコットランド)とカールスタッド(スウェーデン)の2大会を勝っているのはすごい。私たちもカールスタッドの決勝でしっかり負けたし......。ほんと、強かったです。

試合勘をしっかりキープしたまま、イタリアに入っていけるはずです。

吉田 スイスは、間違いなく強いです。

鈴木 どのチームも「今日は調子悪そうだな」という日があるけれど、スイスにはそれがあまりない。下ブレがいちばん小さいチームだなって思います。

吉田 気になって調べたら、スイスは全然点を取られてないんだよね。うちらも含めて、どのチームも大きなスコアを取れていない。

鈴木 これはあくまでも私の感覚なんだけど、ちょっとミスが出るなっていうのが、2エンド目くらいまでなんだよね。

吉田 あ~、最初の往復(※2)だけね。
※2=カーリングは「シート」と言われるプレーエリアの両端にターゲットとなる円(ハウス)があるため、エンドごとに向きを変えて同じ場所を往復する。

鈴木 そうそう。だから、つけ入る隙があるとすれば、前半かなって思う。その後、スコア的にはアップ(リード)がもちろんいいけれど、タイとか、悪くても1ダウン(1点ビハインド)でついていくしかない。

相手に追わせる形を作って、ドロー系とかソフトウェイト系を投げさせられれば、勝つチャンスが生まれる気がする。

吉田 そうだね。とにかく2点ダウンにならないことがとても重要。(フォースの)アリーナ・ペッツ選手は、今大会も私が注目する選手のひとりです。

鈴木 私もフォースとしては、彼女がいちばん好きかもしれない。感情の起伏がなくて、(ショットを)決めても普通だし、ごくごく稀にミスが出ても「OK」とクール。ブチギレしている姿とか見たことない。あのフラットな感じがすごく羨ましいし、カッコいい。

吉田 ベースがハッピーな人で、そのままカーリングを楽しそうにしているよね。

鈴木 ああいうふうには、なろうと思ってもなれない。持ち合わせている何かが違うんだと思う。

吉田 でも、世界選手権で3連覇して、グランドスラムも何度も勝っているあのチーム(※3)が、まだ五輪ではメダルを持っていない。


※3=今回出場するチーム・トリンゾーニのこと。歴代のスイス代表は過去に2度、銀メダルを獲得している。

鈴木 そうそう! あの強さであり得ない。

――前回の北京五輪では、準決勝で日本代表(ロコ・ソラーレ)が勝っています。

鈴木 そうなんですけれど、あれは一度、終わりかけたので(ラウンドロビン敗退だと勘違いして)、開き直れた。

吉田「まだ試合できるんだ! ありがとうございます!」みたいな奇跡的な感じで、メダルとか、プレッシャーとか、何も考えてなかったのがよかったんだと思います。

鈴木 でもあれ以来、チーム・トリンゾーニにはしばらく勝てなかった。

吉田(スイスには)10回に1回くらいは勝てるくらいの感覚だったと思うんですが、その1回が巡ってくるのが、オリンピックという舞台なんだと思います。

(つづく)◆鈴木夕湖&吉田夕梨花が語る、フォルティウスが勝ち上がるためのポイント>>

鈴木夕湖(すずき・ゆうみ)
1991年12月2日生まれ。北海道北見市常呂町出身。ロコ・ソラーレ所属。小柄ながらスイープ力には定評があるセカンド。

2018年平昌五輪銅メダル、2022年北京五輪銀メダル。

吉田夕梨花(よしだ・ゆりか)
1993年7月7日生まれ。北海道北見市常呂町出身。ロコ・ソラーレ所属。安定したショットでゲームを組み立てるリード。2018年平昌五輪銅メダル、2022年北京五輪銀メダル。

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