衝撃の箱根駅伝3連覇から約1カ月。青山学院大が新チームとして臨んだ初の駅伝で、さっそく結果を残した。
2月8日に行なわれた宮古島大学駅伝ワイドー・ズミ2026(6区間、82.0km)に出場した青学大は4時間07分01秒の大会新記録で初優勝を飾った。メンバーは1年生が5人、2年生が1人という構成。原晋監督が「次世代のスター軍団」と称した有望株たちである。1年生の人数は、単独出場した12大学のなかで最も多かった。
温暖な沖縄県での合宿を兼ねた交流色の強い大会ではあるが、年々出場校が増え、今年は青学大のほか、年始の箱根でシード権を獲得した國學院大、順天堂大、中央大、帝京大をはじめ箱根出場12校が単独校として出場した。各チームとも箱根経験を持つ実力派ランナーも多く見られた。
そんななか、強風とアップダウンにさらされた南国の島で、青学大の下級生たちが見せたライバルを上回る走りは、王者が誇る層の厚さを見せつけるのには十分なものだった。
【原監督が評する新2年生は「常勝軍団になるための世代」】
原監督が考案した今大会の作戦名は「宮古ブルー大作戦」。その名のとおり、宮古島のエメラルドグリーンに輝く美しい海を思わせる青緑色のユニフォームが、盤石なレース展開を見せた。
1区の椙山一颯(1年)がトップと8秒差の3位で2区の石川浩輝(1年)にタスキをつないだ。順位をキープし、箱根の一区間に匹敵する最長20.1kmの3区では黒田然(2年)がひとつ順位を上げる。
4区の上野山拳士朗(1年)が順天堂大を抜いて首位に立つと、その後は5区の日向春空(1年)、6区アンカーの前川竜之将(1年)が2位と20秒差以内という時間帯も多いなかでしっかり逃げきり、トップでゴールテープを切った。
前日会見で「駅伝に出る以上は勝つ。
その期待に違わぬ走りを見せた選手たち。5人のうち4人は5000mで13分台、2人は10000mで28分台の記録を持つが、原監督は「トラックレースのタイムだけでは評価できないものが駅伝にはある。今回はしっかり駅伝をしてくれたと思います」と高く評価した。
例に挙げたのは、1区の椙山と6区の前川の走りだ。
「1区は遅れたとしても、先頭と何秒差でタスキが渡すかが最低限の仕事です。今回は椙山が10秒差以内で渡すことができました。アンカーは極端な話、区間最下位でも1番でゴールする。途中リタイアがあってはいけないし、オーバーペースで走って脱水症状で倒れてもいけない。前川は厳しいタイム差のなかでも1番でゴールできたことがすばらしいですよね」
6区の前川については、向かい風が強いなかで最初の1kmを「2分52秒くらい」で入り、18.6kmの長い道のりを波の少ない走りで駆けた。
【部内競争に拍車「先輩、後輩関係なく......」】
当の選手たちが口にしたのは、結果に対する評価にとどまらない強烈な野心である。その目は、すでに11カ月後の第103回箱根駅伝に向いていた。
「箱根に出るだけじゃつまらないので、優勝に貢献できる走りを目標に頑張っていきたいと思います」
そう言いきったのは、椙山だ。「箱根11区」と呼ばれる東京ニューイヤーハーフマラソンのほか、「箱根0区」と言われる昨年末の10000m学内記録会でもトップ。昨年の全日本大学駅伝では1区12位だった。5000mの自己ベストは13分47秒73とスピードがあり、箱根往路を走れるだけのポテンシャルを有するが、今回の箱根は登録メンバーから漏れた。悔しさが大きかっただけに、「今年は箱根に向けて全力で、熱意を持ち、頑張っていきたいです」と力強く語った。
前川もまた、無念さを力に変える。「ずっと準備をしてきたのにもかかわらず、箱根はメンバーにも入れず、すごく悔しかったです。優勝したチームを誇りに思うからこそ、このチームで走りたいという思いがいっそう強まりました」と振り返る。
掲げるのはスピードの強化だ。
今年の箱根で1年生でただひとり出走し、6区3位の好成績を残した石川は「箱根を走った経験もあるので、これから入ってくる新1年生ともコミュニケーションを取り、チームを引っ張っていける立場になれたら」と自覚を語る。黒田朝日(4年)という大エースが抜ける新シーズン、「上位層は当然結果を残し、中間層、ボトム層もしっかり底上げして、総合力の高さで勝っていきたいです。自分も平地の力はまわりの選手より全然劣るので、切磋琢磨していきたいです」と続け、言葉の端々に主力のひとりとしての意識の高さがにじんだ。
なんと頼もしい1年生たちか。
今回の宮古島駅伝でただひとりの2年生だった黒田は「競技力の高い選手がかなり揃っている」と語り、強い刺激を受けているようだった。新進気鋭の下級生たちが部内競争に拍車をかけ、チーム力を底上げしていることは間違いないだろう。
【"山の神"候補の上野山は「遊行寺の坂」イメージして快走】
なかでも、10.0kmの4区を30分04で走ってチーム唯一の区間賞に輝いた上野山は原監督へのアピールに成功したと言えるだろう。箱根5区を走る「山の神」の後継として期待される存在だ。昨年、この区間を走った黒田朝日は29分29秒で、記録は35秒の差があるが、レースの組み立ては見事だった。
トップと23秒差の2位でタスキを受けた。
「4区は上りが多く、自分が得意としているコース。最後は自信を持っていけました」と納得の表情を浮かべた。
上野山は高校時代の5000mの自己ベストが14分13秒92。石川や椙山など、入学時点で13秒台が5人いた同期のなかでは決して目立つ存在ではなかった。しかし、猛者にもまれるなかで着実に力をつけ、今は13分52秒93まで記録を伸ばした。さらに昨年11月のMARCH対抗戦では10000mのデビュー戦ながら、28分20秒82の好タイムで3組トップとなり、1年生にして箱根の16人の登録メンバー入りを果たした。
当初2区にエントリーされ、当日変更で出走こそ叶わなかったが、チームからの期待感の高さがうかがえる。伴走車に乗った原監督の声かけも箱根仕様だった。上野山が振り返る。
「原監督から『いいよ、いいよ、拳士朗いいよ。8区の遊行寺の坂をイメージして上れてるよ』みたいな声を掛けられました。それでしっかり上れましたね」
遊行寺の坂とは、箱根8区の15km過ぎのポイントで、約800mで標高差30m超の急坂を上る難所である。自身は以前から箱根5区への出走を希望しているが、体力的に厳しい区間終盤の上り坂で加速できた宮古島駅伝での走りは、原監督の評価をさらに押し上げたはずだ。
上野山自身、来年の箱根に向けて「総合4連覇がかかっているので、チーム一丸で頑張っていきたいと思います」と語り、その一角を担う覚悟をにじませた。
今年の箱根の優勝経験者でいえば、黒田朝日、宇田川瞬矢、塩出翔太、佐藤有一という4年生4人が抜けたが、黒田朝日の弟である黒田然は不敵な笑みを浮かべ、箱根4連覇に向けてこう言った。
「プレッシャーはありますが、それと同じくらい、自信もあります」
血気盛んな1年生たちが台頭し、部内競争や重圧を糧に個々がさらなる成長を見据える青学大。次の箱根に向け、どのような姿に変貌していくのか。新世代からも目が離せない。



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