【「怖いのは顔だけ」】
ビッグレースでの共同記者会見。上位着の選手がひとりずつ席につき、自身が走ったレースを振り返る場なのだが、そこに現われる松井宏佑(神奈川・113期)はいつも落ち着き払い、その表情からは気持ちの起伏が読みづらい。
鋭い眼光、刈り上げの金髪、口ひげという威圧感のある風貌で、発する言葉も多くない。
「あまり話すのが得意じゃなくて、出すぎたことを言わないように、誤解を生まないように一つひとつの言葉に気をつけて発言しています。怖いのは顔だけだと思います。ファンキーな感じにして威圧しようとはまったく思っていなくて、ただファッションが好きなので、金髪にすることで、その幅も広がるのかなと思ってやっています」
彼に接する関係者も「本当に優しくていい選手」とその人間性に太鼓判を押す。
そんな松井にはファンキーな外見からは想像できない一面もある。
「走る前にセージ(お香)を焚く時間もあるんですが、その時には手を合わせて拝んで『今日も安全に走れますように』と願ったりしていますね」
祈りを捧げる人は自分だけではない。実家は曹洞宗のお寺で、住職である父親もレースのたびに祈願しているそうだ。
「必勝祈願として、GⅠに限らず、FⅠでも紙に日付とレース名を書いてお経を唱えてくれています。その紙には『身体健康』『道中安全』『障碍退散(しょうげたいさん)』のほかにレース結果も書かれています」
これらのおかげか、松井はこれまでの競輪人生で大きなケガに見舞われていない。
松井にもこれらの教えが染みついているか、前述の会見での落ち着いた雰囲気も納得できるところがある。また日々の練習にも手抜きがない。いやむしろ尋常ではないほどの練習量と言っていいだろう。
「この寒い期間でしっかりと体力をつけてパワーもつけていきたいと思っていて、今は1日のもがく本数を増やしています。朝は6時半から朝練をやって、その後に街道でもがいて、またバンクに戻ってきて師匠とバイク練習をして、その後にジムに行ってトレーニングしてと4部練みたいになっていて、『これ、やばいな』って自分でも思っています(笑)。もう夜は8時、9時には寝ていますね」
これらはすべて自らが望んで取り組んでいるメニュー。まさに修行というにふさわしい日常だ。
【スピードスケートから転向】
現在33歳の松井は競輪の上位クラスにあたるS級1班に所属する強豪選手のひとり。ここ数年は安定して好成績を残し、昨年は春のGⅠ「日本選手権競輪」(通称ダービー)と秋のGⅠ「競輪祭」で決勝まで進出している。
自身の走りを「脳筋レースみたい」と自嘲気味に語るが、その姿はまさに勇猛果敢。「僕は力でいくレースが多い」というように、先頭を切って後続選手を力強く引っ張っていく潔いタイプだ。そんな彼のパワフルな走りの原点は、世界を目指して挑み続けたスピードスケートにあった。
北海道出身の松井は小さい頃からスケートに慣れ親しんでおり、中学から本格的にスピードスケートに打ち込んだ。高校はスピードスケートの名門・駒大苫小牧高校に進学。オリンピックへの出場を夢見て、3年間みっちりと練習に励んだ。
さらなる成長を目指して専修大学に進み、1年時に全日本ジュニア選手権スピードスケート総合3位、世界ジュニア選手権スピードスケート パシュート4位と結果を出した。ナショナルチームの強化指定選手になったこともあり、「このままいけばオリンピック出場もゼロではないと感じていた」という。
「自分が甘かったですね。ずっとスケートに集中していたので、勉強をおろそかにしてしまいました。(実業団チームから)『うちでやらないか』というお誘いもあったのですが、僕としては大学を途中で辞めようとは思っていませんでした。ただスケート部にはいられなかったので、ひとりでトレーニングをしていました」
大学5年目はたったひとりでの練習となり、「このままではまずいな」という思いをずっと抱えていた。そんな悶々とした日々を過ごしていた時に、偶然SNSで目にしたのが、元競輪選手(上田康雅/2011年引退)が店主を務める居酒屋の存在だった。
「最初に足を運んだ時には競輪をやってみようとは思っていませんでした。僕の出身地の隣町にスピードスケートから競輪に転向した武田豊樹さん(茨城・88期)がいて、競輪ってどんなものなのかなという興味があっただけでした」
店主とは初対面ながらもその日は朝まで競輪の話で盛り上がった。すぐに転向する気にはなれなかったが、その後も店主に何度か呼ばれて競輪の話をするうちに「やってみよう」と決意。大学卒業後から練習をやり始めた。するとすぐに好成績を出し始める。
「スピードスケートのフォームと競輪のフォームは似ていましたし、高速で400mのトラックを左に回るのも同じで、それが生きました」
日本競輪学校(現日本競輪選手養成所)への入学に必要な合格基準タイムも難なく出すことができ、「練習は朝6時半から夕方まであって本当にきつかったんですが、毎日ワクワクしていた」という。
日本競輪学校には一発で合格。学校では、世界で活躍できる選手の育成を目的とした「HPD教場」にも選ばれて鍛錬を積み、在校成績3位で卒業した。
そして2018年7月、25歳の時に競輪選手としてスタートを切る。「デビュー戦はめちゃくちゃ緊張した」というが、その後は破竹の勢いで勝ち続け、デビューからわずか137日でS級2班へ特別昇級。この記録は当時史上3番目の早さだった。
【激しく叱責されたレース】
今年デビューから9年目となる松井には、忘れられないレースがある。それは2020年のGⅠでのことだった。
「自分は先行すると言ったんですが、それをしないで一旦後ろに引いて、自分だけまくり追い込みで3着に入ったんです。ただラインのほかの選手は全員3着までに入れませんでした。普段はすごく優しい先輩なんですが、その時はめちゃくちゃ怒られました。勝ちにこだわるのもいいんですが、『ラインを導いてこその競輪だ』ということを改めて痛感しました」
練習仲間や同じ県、同じ地区などとチームを組む"ライン"。競輪ではレースの終盤までライン同士による壮絶な戦いが繰り広げられ、最後は個人対個人の戦いとなる。ラインには並ぶ位置によって役割があり、互いにサポートし合うことで、自らもそして仲間たちも勝利に近づける。
松井はこのレースでその役割をこなさず、自分勝手に走ったことで、先輩選手に激しく叱責された。翌日の準決勝は「もぬけの殻、心ここにあらずの状態で、ボーッとしながら走っていた」というとおり8着に沈み、決勝には進めなかった。
これを機に松井は徹底的にラインでの走り方を考え直し、練習や実際のレースのなかで試行錯誤を繰り返した。そうして少しずつ周りの選手からの信頼を取り戻し、2023年の競輪祭では「これだ」と思える確かな手ごたえをつかむことができた。
「深谷(知広/静岡・96期)さんのおかげもあって決勝で2着でしたが、そこまでの勝ち上がりもよかったですし、『競輪』ができているなという感覚がありました」
レースを繰り返すうちに競輪の奥深さを知った松井は、その魅力についてこう語る。
「前と後ろの選手の絶妙なチームワークの動きは面白いですね。先行の選手が頑張って後ろの選手が他のラインを邪魔するみたいな、その息の合ったプレーを見るとすごいと思います。順位のところではなくて、その着になるまでのプロセスのところを、ぜひ見てもらいたいです」
続けて「みんな熱い気持ちを持って走っています」と言葉に力を込めた。
【いずれは僧侶に】
松井が日々ハードな練習に取り組むのは、タイトルへの渇望があるからだ。今ターゲットにしているのが、ホームバンクの平塚競輪場で開催されるGⅠ「日本選手権競輪」(5月1~6日)だ。
「ダービーで結果を出すのが今の一番大きな目標です。もし優勝できたらグランプリの出場もあるので、それに向けて今頑張っています」
松井はこれまでGⅠ決勝に6度進出しているが、あと一歩のところで優勝できておらず、獲得賞金ランキングでもギリギリのところで「KEIRINグランプリ」の出場権に届いていない。ビッグタイトルの獲得は松井の悲願でもある。
そんな松井に今後の競輪人生の目標について聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「選手は長くやらないかもしれません。実家がお寺ですし、僧侶になりたいという思いもあります。選手を長く続けると、そこから修行をして僧侶になるのは現実的に難しいかもしれませんので、競輪に満足したら、その道も考えています」
松井は幼い頃から家の手伝いをし、中学・高校時代は「お盆参りで各家を回ることもしていて、そこでお経を唱えていた」という。
高校はスピードスケートに打ち込むために名門校を選んだが、そこでは仏教専修科を選択し、修行も経験している。そのころから将来の姿を描いてきたのだろう。
松井のこれまでの紆余曲折の人生、練習への取り組み方を知るにつけ、この先どんな道に進んだとしても、日常生活の一つひとつに向き合い、決して手を抜くことはないと思えてくる。その姿勢から我々は学ぶべきことがあるのではないだろうか。松井の走る背中から伝わってくるものをしっかりとキャッチしていきたい。
【Profile】
松井宏佑(まつい・こうゆう)
1992年9月24日生まれ、北海道出身。中学からスピードスケートに励み、大学時代にはナショナルチームの強化指定選手となる。その後、競輪選手を目指し、2017年24歳の時に日本競輪学校(現日本競輪選手養成所)に入学。翌年デビューを飾ると史上3番目の早さでS級2班へ特別昇級を果たす。ナショナルチームでも活躍し、2019年6月、初の国際大会となるモスクワグランプリのケイリンでいきなり優勝すると、同11月のワールドカップのケイリンで銅メダルを獲得する。2022年9月から競輪に専念。持ち前のパワフルな走りでビッグレースの常連選手となり、現在はS級1班として活躍している。



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