【メダルにはあと一歩届かず】

 2月19日(現地時間)、ミラノ。ミラノ・コルティナ五輪、フィギュアスケート女子フリーはまず地元イタリアのララ・ナキ・グットマンがショートプログラム(SP)から挽回して首位に立った。韓国のシン・ジアがその得点を抜いたあと、アメリカのアンバー・グレンが豪快なトリプルアクセルも成功させる渾身の演技で合計214.91点を出し、暫定1位の選手が座るリーダーズチェアに君臨した。

 グレンのハイスコアがメダルに向けてのターゲットになった。だが、誰も超えられない。最終グループに入り、中立選手として出場したロシア国籍のアデリア・ペトロシアンが4回転ジャンプに挑むも転倒し、トップは変わらなかった。

 そこで登場したのが、SP4位だった日本の千葉百音(20歳/木下グループ)だ。

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「ミラノで自分らしくのびのびと滑ることができてよかったです」

 千葉はそう振り返った。143.88得点を叩き出し合計217.88点でグレンを追い抜き、場内の歓声を一身に浴びた。リーダーズチェアでは、グレンも手放しで拍手を送るほどの演技だった。

 しかし結果から言えば、千葉は表彰台には立てなかった。そのあとに滑ったアリサ・リュウ(アメリカ)、坂本花織、中井亜美がメダルを獲得。彼女はあと一歩届かなかった。

「全力を出しきっても、なお届かなくて。どうにも言い表しがたい悔しさっていうのがあるんですけど」

 取材エリアに出てきた千葉はとつとつと振り返ったが、演技自体はほとんど完璧に見えた。

【幸せを感じながらの演技】

 冒頭、『ロミオとジュリエット』の静かな曲の立ち上がりのなか、3回転フリップ+3回転トーループを決めた姿は頼もしく映った。続く3回転ループ、3回転サルコウもきれいな着氷。曲にセリフが入って動きが出るなか、ダブルアクセルもよどみなく、フライングキャメルスピンはレベル4で、3回転ルッツ+ダブルアクセルは高得点だった。

 3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループは減点がついた。しかし、その後の3回転フリップも含めて、7本のジャンプすべてを跳びきっている。曲のなかでは鐘が鳴り、彼女のショータイムだった。リズミカルなステップシークエンスでは、手拍子が鳴り響いた。コレオはバレエダンスを入れ、スパイラルで優雅に舞った。レイバックスピンもレベル4で喝采を浴びていた。

 フィニッシュポーズを決めた千葉も、手ごたえがあったのだろう。カメラマンに向かって、ガッツポーズを見せていた。

「まず、『ロミオとジュリエット』をオリンピックの地で演じきれたのはよかったなって思います。3連続ジャンプで詰まってしまったところが減点になっていたんですけど、演技全体で集中することができていました。

6分間練習から本番に入るところで、自分の滑りができている感覚だった」

 千葉はそう説明したが、五輪でベストの演技をすることは簡単ではない。SP、フリーはどちらも4位。2本、そろえたのだ。

「ショートもフリーもオリンピックの舞台で落ち着いて演技ができました。こんなに幸せなんだなって感謝しながら。この先のスケートでもきっと生きてくるだろう、すばらしい経験だったなと思います。(濱田美栄)先生にも、『これは当たり前のことではないからね。ここで滑れることに感謝して』と言われました」

【新たなフィギュアスケート人生への誓い】

 3位のメダルまでたった3点弱の差でも、扱いは雲泥の差になるだろう。しかし、彼女自身が戦いきったことは間違いない。それは同じ舞台に立った同志には一番わかるはずだ。

「(坂本)花織ちゃんも自分と同じような感じで、言葉よりも先に涙を流していて......。お互い抱擁したら、いろんな感情がごった返しになりましたね。

(坂本の)演技を見ながら、この滑りを目に焼きつけておこうって思っていました。自分も、こんな忘れられないスケーターになりたいなって」

 千葉は心に誓うように言って、確信を持ってこう続けている。

「オリンピックはこれからも"よかったイメージ"として思い出したい試合になりました」

 ミラノでの戦いは、今後のフィギュアスケート人生の新たな道しるべになるだろう。どんなに道に迷っても心配はない。彼女は行くべき場所にたどり着ける。

「大技を取り入れる? そこは自分のなかでも"強くなる切符"のひとつと思っていますけど、それ以外にも強くなっていけると思っているんで、全エレメンツを最強に!」

 千葉はそう言って、真摯に自分のスケートと向き合う。その日々こそが、フィギュアスケーターとしてメダルと同等の価値だ。

「4年後は、誰がどうなっているかわからないです。自分は一日一日、少しでも向上できるように。まずは(3月の)世界選手権を頑張ります!」

 オリンピックは、新たなフィギュアスケート人生のスタートだ。

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