【ミラノオリンピック】女子チームパシュートに銅メダルをもたら...の画像はこちら >>

メダル獲得に向けて全員で戦った女子チームパシュート photo by Asami Enomoto/JMPA

【予選から厳しい展開】

 日本の女子スピードスケートを牽引している髙木美帆(TOKIOインカラミ)と佐藤綾乃(ANA)が主力になって以降、女子チームパシュートは2018年平昌五輪で金メダルを獲得し、前回の北京五輪では銀メダルを獲得と世界トップレベルを走り続けている。そして、2大会ぶりの金メダルを狙った今大会は、予選で黄信号が灯った。

 3人で一体となって6周を滑り、8チームがタイムを競って4チームが次の決勝ラウンドへ進む予選。

金メダル獲得のためには1位通過をして、準決勝で4位通過のチームとの対戦に持ち込むこと。第2組に登場した日本は、第1組でオランダが出した2分55秒65を大きく上回ることを目標とした。

 日本チームのスタイルは、スピードを生かして前半で貯金を作る展開。それが序盤からうまくいき、5周目通過時点ではオランダを上回り1位通過も見えていた。しかし、そこからはラップタイムを徐々に落としていき、ゴールタイムはオランダを少し上回るだけの2分55秒52。結局、第4組で滑ったカナダが後半の強さを発揮して2分55秒03で1位通過を果たし、日本は2位で準決勝は3位のオランダと戦う組み合わせになった。

 その予選を髙木と佐藤はこう振り返る。

「スタートからの滑り出しは完璧でしたが、目標の1位通過を果たせなかったのは私の動きが最後に乱れて、スピードを落としすぎてしまったところ。そこがすごく悔しい。佐藤と堀川桃香(富士急行)のプッシングはすごく成長しているので、次は私が自分の滑りをどこまで改善できるかにかかっていると思います」(髙木)

「ミラノに入ってからチームの一体感はよくなっていると実感していましたが、今日はそのチーム力を100%発揮できませんでした。途中で桃香とブレードが接触するミスが2、3回あり、美帆さんが崩れてしまうまで自分の力を出させてしまったのが、カナダとの大きな差になってしまいました。本当に細かいミスが大きなミスにつながることを改めて実感しました」(佐藤)

【総力戦で獲得した銅メダル】

 それから3日後の最終ラウンドは、準決勝を行なったあと、約1時間40分後に3位決定戦と決勝があるスケジュールだった。2レース目がどちらになるかに関わらず、準決勝には予選と同じ堀川を使い、決勝には堀川の疲労を考慮して野明花菜(立教大)を起用すると決めていた。

金メダルを目指すなかで準決勝は最大の勝負の場だった。日本はオランダに勝つために攻めではなく、前半を抑え目に行く作戦を実行した。

 結果的にウイリアムソン師円コーチが「今季で一番いい、日本ベストレースだった」と高評価する滑りになった。重視したのは、予選で前の3周目よりも落ちていた4周目のラップタイムを落とさないこと。そこを上げる滑りにした日本は、5周目後半でオランダを上回り、半周を残して0秒18差をつけて決勝が見えていた。しかし、最後は逆転されて3位決定戦へとまわることになった。

 金メダルの夢は惜しくも途絶えたが、総力戦で銅メダル獲得に目標を切り替えた。2番目を滑る野明は、メダルマッチが五輪初出場という緊張感から、アメリカとの3位決定戦で、スタートで躓いて出遅れた。野明はこの時の状況をこう振り返る。

「スタートではインエッジしか使わないのに、なぜかアウトエッジに入ってしまって、個人レースでもやったことがないミスをして焦りました」

 それを救ったのが3番目にいた佐藤だった。

「私もびっくりしたけど、気づいていない美帆さんに声を掛けて、(野明が)落ち着いてスタートできるようにしました。入りの半周で固まらないと最後に響くし、そこで無理に力を使ってしまっても最後に影響するので野明をフォローしながら滑りました」

 野明を少しプッシュして半周までには隊列を整えた。

野明はゴール手前でもバランスを崩したが、佐藤は「ゴールできれば絶対にメダルは獲れると信じていたので、あそこは意地でも支えるつもりだった」と笑う。

 そんなアクシデントはあったが、レースは1周目からアメリカをリードして、銅メダルを獲得した。

 3位決定戦を見守った堀川は、「準決勝で勝って野明に託したかったけど、それができなくて悔しかったですが、勝ちきってくれたのはうれしいです」と笑顔を見せた。

【髙木と佐藤の関係性】

 一方、チームを牽引した髙木は悔しさを滲ませ反省を口にしていた。

「予選で自分がもっといい滑りをすれば、1位通過で準決勝にいけていたと思うし、準決勝も自分ができるパシュートの最良のペース展開をしようと思って臨んだのですが、ギリギリで負けて難しさを感じました。ここまで来ることはできましたが、私が先頭走者として、こういう際どいレースで自分の力を最大限発揮して、いいレースをするという経験値を、この4年間でなかなか積み上げてくることができなかったのが、一番の敗因なのかなと思っています」

 だが、平昌五輪から挑戦し続けている髙木と佐藤にとっては、金メダルと銀メダルに次ぐ3個目となる銅メダルで、誇るべきメダル獲得だった。

 長年一緒に戦ってきたふたりは、お互いの存在をこう語る。

「私がパシュートに出るようになってからの五輪3大会で、佐藤とずっと一緒にやってきたと思うと、感慨深いものがあります。最初はまだピチピチの女子大生だった佐藤が、決勝を迎える前夜に半ベソをかきそうなほど緊張していたのを覚えています。今では後輩たちを力強く支える頼もしい先輩になって、私も安心してうしろを任せられたし、ここまで一緒にやってくれてよかったなと思います」(髙木)

「パシュートについてわからなかった時は、一番年齢が近かった美帆さんが前を走りながら、私のことも気にかけていろいろなアドバイスをくれました。美帆さんはパシュートでは常に一番手をやるので、私は長い間そのお尻しか見てこなかったのですが、(彼女の)うしろを滑る経験が自分の個人の滑りにもつながったので、本当に感謝しかないです。

 美帆さんはチームパシュートに欠かせない存在だし、美帆さんが先頭で眼になって、引っ張ってくれる信頼感は大きかったです。

自分をここまでずっと世界のトップで走らせてくれた、本当にかけがえのない存在の先輩です」(佐藤)

 髙木はまだ五輪後の進退を明らかにしていないが、佐藤は「自分にとっては最後のパシュートになる」と話していたため、今後ふたりが共に滑る姿を見ることはないだろう。

 そんなベテランふたりがチームにもたらした銅メダル。これは五輪初メダルだった堀川と野明にとって、「これから銀、金へとステップアップしていけ」という思いを託した襷になったはずだ。

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