2月19日(現地時間)で全種目を終えたミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケート。日本は今大会で団体戦を含めて金1個、銀3個、銅2個の合計6個のメダルを獲得。

史上最多記録を更新した。

 他国のメダル獲得状況は、アメリカが3個で、他は6カ国が1個ずつ分け合う結果。北京五輪後、ロシア勢不在のなかで日本が世界のフィギュアスケートをリードしていることを、今大会の結果であらためてはっきりと示した。

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【日本フィギュアの歴史的転換点】

 日本スケート連盟の竹内洋輔・フィギュアスケート強化部長は、その結果についてこう話す。

「今大会のフィギュアスケートで各国が獲得可能な最多メダル総数は団体戦を含めて13個。金メダルを含む6個と半数近いメダルを獲れたことは、日本のフィギュアスケートの歴史的な転換点であり、選手の偉業だと思っています」

 今大会、同連盟は過去最大級のサポート体制を敷いた。選手村に車で1時間以内のヴァレーゼに拠点を設け、また選手村では医科学を含めて選手のコンディショニングのサポートを強化した。

「今回の成績に結びついた要因として大きなところは、拠点のなかで選手たちがコミュニケーションを取りやすい環境をつくり出したところだと思います。コンディショニングルームで選手がリラックスして過ごしたり、コミュニケーションを取ったり。個人戦でもチームジャパンとして『みんなで頑張るんだ』『メダルを獲るんだ』という意識が浸透し、今回の成果に結びついたのではないか」(竹内氏)

 今大会で日本チームとしてのモチベーションや団結力を生み出したのは、団体戦だっただろう。日本は金メダル獲得を目標とし、そのためにペアの三浦璃来・木原龍一、女子シングルの坂本花織がショートプログラム(SP)とフリーの両方に出場。個人戦への影響が懸念されるなかでの連続出場の決断は、チームに大きなエネルギーをもたらした。

 その三浦・木原と坂本がきっちりとライバルのアメリカに勝利。

アメリカを本気モードにさせ、アイスダンスのマディソン・チョック/エバン・ベイツと男子シングルのイリア・マリニンがSPとフリーの連続出場。結果的に僅差の銀メダルだったが、総合力で上回るアメリカと大接戦ができたことは大きな成果だった。

 個人戦のペアでは、SPでミスが出て5位発進となった三浦・木原が、精神的な落ち込みを克服して逆転優勝したことも日本に勢いをつけた。他国ペアの今季の成績を見れば、計算上はふたりが団体戦と同じような演技をすれば逆転は可能だったが、心身をふだん以上にすり減らす大舞台で完璧な演技を短期間で再現することは極めて難しい。だが、それを成し遂げたふたりの精神力は、いくら賛美しても足りないほどだ。

 ペアの前に行なわれた男子シングルでは、鍵山優真と佐藤駿がきっちり力を出しきってそれぞれ銀と銅を獲得。男子ふたりの活躍も、三浦・木原をあと押ししただろう。そして、三浦・木原の金メダルは、女子シングルの坂本花織、中井亜美のダブルメダル獲得につながっていった。

 一方で、惜しいシーンもあった。男子シングルは、SP1位発進のマリニンが金メダルをもぎ取ると見られていたが、フリーで大きく崩れて総合8位に落ちるというまさかの結果に。鍵山が本来の実力を出していれば、初の王座をミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)に奪われることなく、手中に収めていたはずだ。

 また女子シングルでも、SPは中井亜美に僅差の2位につけ優勝への道筋も見えていた坂本が、後半の3回転連続ジャンプで痛いミス。

きっちり決めていたら、余裕を持って優勝を果たしていた可能性は十分にあった。

 銀メダル獲得は立派な偉業ではあるが、手が届いたはずの金メダルを目の前で逃してしまった無念さは残る。ともに次の舞台でこの経験を生かしてくれることを期待したい。

【坂本花織の引退は懸念材料】

 今後を考えれば、ペアの三浦・木原は北京五輪後に「4年後、そして8年後も考えている」と話していたが、どこまで競技を続けるか。また今大会ではフリーに進めなかった長岡柚奈・森口澄士が悔しさを糧にどこまで成長するか注目したい。

 一方で、男女シングルは心強い状況だ。男子は今大会に出場した鍵山と佐藤、三浦佳生の3人はジュニア時代から競り合ってきた関係性。彼らが切磋琢磨し、さらなる成長も望めるうえ、ジュニアからは「上の世代に勝ちたい」と強気な発言をしている中田璃士も参入してくる面白い展開になりそうだ。

 また、女子も銅メダル獲得の中井と、4位になった千葉百音も初の大舞台で自分の力を出しきった。そのふたりに加えて、トリプルアクセルと4回転トーループを武器にして、ジュニアで実績を積み上げてきた島田麻央がシニアへ上がってくるほか、下の世代にも有望なスケーターが多い。

 ただ、女子は坂本が今季限りで引退し、精神面を支えてきた大黒柱が不在になる。大きな舞台であればあるほど、彼女のような存在が若い選手たちに安心感を与え、実力を出しきる状況を生み出すものだ。

次の坂本のような存在は誰になるのかも注目したい。

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