今回の投手16人という編成は、チャイニーズ・タイペイ(以下、台湾)にとって、過去の国際大会を振り返っても最多となる。しかも16人中9人が国外でプレーするなど、これほど海外組の比率が高い編成は前例がない。
【質量ともに充実の投手陣】
ただし、それはかつてのように「海外組を招集しなければチームを編成できない」という消極的な理由からではない。むしろ、CPBL(台湾プロ野球)の若手が着実に成長し、国内外で活躍する人材が充実してきた結果だ。今回の陣容は、台湾野球全体の底上げが結実した姿といえる。
投手を16人も揃えたのは、WBC特有の球数制限に対応するためだけではない。海外組の場合は、所属球団ごとの登板制限や個別の取り決めを順守する必要があるからだ。たとえマイナーリーグ所属の選手であっても、起用にあたっては「1試合1イニングまで」「連投は禁止」といった条件が課されるケースが少なくない。
そうした制約のある投手陣を、いかに効果的に運用するかがカギになる。CPBLの関係者はこう語る。
「まず初戦(5日)の豪州と4戦目(8日)の韓国に総力を挙げて臨んでくると考えられます。決して日本戦を軽視しているわけではありません。ただ豪州と韓国に勝てば、日本に敗れたとしても東京プールを2位で通過し、決勝ラウンドが行なわれるアメリカへ進むことができる。いわば、それが最も現実的なルートだというわけです」
そうなると、日本戦でどの投手が先発してくるのか、現時点では予想がつかない。
いずれにしても、中心になるのは日本ハムの古林睿煬(グーリン・ルェヤン)と、今季ソフトバンクに入団した徐若熙(シュー・ルオシー)のふたりだ。
不安があるとすれば、絶対的な抑え候補だった楽天の宋家豪(ソン・チャーホウ)が不参加となり、その代役がまだ完全には決まっていないことだ。
そんな台湾代表投手陣だが、侍ジャパンに唯一リードしていることがある。それがピッチクロックとピッチコムへの対応だ。ピッチクロックは、すでに台湾プロ野球リーグで導入されている。ただ、走者なしの場合は20秒、走者ありは25秒で、WBCの走者なし15秒、走者あり18秒に比べると若干長い。すべて同じというわけではないが、それでも慣れというメリットはあるはずだ。
【長打力とスピードを兼ね備えた攻撃陣】
次に攻撃面だが、打線の中核を担うのは経験豊富な強打者たちである。
台湾史上最高の打者と称される張育成(ジャン・ユーチェン)を筆頭に、過去二度の本塁打王を獲得したギリギラウ・コンクアンがクリーンアップを務める。さらに、身体能力に優れた台湾系アメリカ人のスチュアート・フェアチャイルドが、上位打線の起爆剤として加わった。
屈指の好打者である林立(リン・リー)は故障のため不参加となったが、層の厚みを増した現在の陣容において、その穴が致命的な得点力低下につながるとの見方は少ない。
また、今大会から導入されるピッチクロックを逆手に取ったスピード野球も健在だ。陳晨威(チェン・チェンウェイ)をはじめとする俊足の選手たちが、相手投手にプレッシャーをかける。
懸念されるのは、短期決戦で命取りとなる自滅だ。これはどの国も同じだが、具体的には四死球や失策といったミスだ。
「若いピッチャーが多いからこそ、力んで制球を乱したり、守備で足を引っ張ったりする自滅は避けたい。そこはメンタル対応のドリルを繰り返し実施しています」(前出・CPBL関係者)
これまで、台湾代表は幾度となくミスから自滅してきた。その経験も踏まえ、曾豪駒(ツェン・ハオジュ)代表監督は「モチベーター型」の指揮官として存在感を発揮している。選手とのコミュニケーションを重視し、一体感を作る手腕は、プレミア12での優勝でも証明済みだ。
【侍ジャパン・井端監督との因縁】
また、台湾と井端監督には因縁がある。
今から13年前の第3回WBC。台湾は9回二死まで日本を追い詰めながら、そこから同点に追いつかれ、延長で敗れた苦い経験がある。その9回二死から、起死回生の同点タイムリーを放ったのが、現在、侍ジャパンの指揮を執る井端監督である。
あの"夜の記憶"は、ドキュメンタリー映画となり、選手たちのモチベーションを上げるアイテムとなっていた。
だが、時代は変わった。前出のCPBL関係者は言う。
「今の台湾の若い選手たちは、日本にやられ続けてきたという感覚は持っていません。大谷フィーバーや山本由伸のすごさは、毎日のメジャー中継で知っていますが、戦う前からリスペクトしすぎて萎縮するという時代ではありません。日本戦は2位通過のために消耗しないという考え方もありますが、勝てるチャンスがあれば一気に食ってやろうと、選手たちは思っているはずです」
ちなみに、2024年のプレミア12決勝で、井端監督率いる侍ジャパンは台湾に苦杯を舐めさせられた。
かつて「グッドルーザー」と呼ばれた面影は、もはや台湾にはない。曾監督のもと、役割を明確化した攻撃陣と、質量ともに充実した投手陣が、野心を胸に東京へ乗り込む。2013年大会、日本を「あとひとり」まで追い詰めながら逃した悔恨を、今度こそ歓喜へと塗り替える準備は整っている。










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