かつてWBCの舞台で日本を幾度も苦しめた「宿敵・韓国」の雄姿は、今や遠い過去の記憶となりつつある。2006年や2009年の黄金期をピークとするなら、現在の停滞ぶりは目を覆いたくなるほどだ。
その深刻さは、今大会のチーム編成を見ても変わらない。打線は昨秋の日韓シリーズを上回る破壊力を秘めているものの、投手陣の層の薄さは否めない。
【大黒柱不在、実力不足を否めない投手陣】
選出された先発陣の多くは、所属球団でローテーションの柱を担うタイプではなく、その脇を固めるクラスが中心だ。長いイニングを任せられるのは、本格派右腕の郭彬(クァク・ビン)、経験豊富な左腕・柳賢振(リュ・ヒョンジン)、変則右腕の高永表(コ・ヨンピョ)、そして蘇珩準(ソ・ヒョンジュン)らごくわずかに限られる。
招集メンバーの先発陣に各チームの3、4番手クラスが目立つのは、KBO(韓国プロ野球)の各球団が1番手、2番手の役割を軒並み外国人投手に依存しているからだ。力でねじ伏せるタイプはおらず、球威、制球、変化球とすべてにおいて物足りなさを感じてしまう。
リリーフ陣に目を向けても、各球団のセットアッパーやクローザー級を揃えてはいるものの、楽観視することはできない。
強化試合では、同じ韓国リーグの控え主体、いわば「一軍半」クラスの打者に容易に打ち返される場面が散見され、調整不足を露呈している。抑えを務める朴英賢(パク・ヨンヒョン)にしても、国際大会で格上の打者と対峙するとなれば一抹の不安を拭いきれない。
こうした窮状の背景には、主力級の故障が相次いだ不運もある。文棟柱(ムン・ドンジュ)や元兌仁(ウォン・テイン)、ライリー・オブライエンといった中心選手がエントリーから漏れただけでなく、現メンバーのなかにもヒジの違和感を訴える投手が出るなど、首脳陣の苦悩は深い。
しかし、仮に文棟柱や元兌仁が万全の状態だったとしても、果たして日本を相手に通用したかどうかは疑問が残る。今の韓国球界における投手力の衰退は、寂しい限りと言わざるを得ない。
【打線のカギ握るメジャー組の適応力】
対照的に、野手陣には投手陣に比べて明るい材料が少なくない。昨秋の状態を再現できれば、「得点力不足」に陥る心配はないという手応えがある。
とりわけ、金倒永(キム・ドヨン)、文保景(ムン・ボギョン)、安賢民(アン・ヒョンミン)といった長打力を期待できる打者たちは、いずれも調子を上げている。さらに、昨秋の日韓戦で大勢から同点本塁打を放った金周元(キム・ジュウォン)も健在だ。
ここにメジャーリーガーのジャイアンツ・李政厚(イ・ジョンフ)、ドジャースの金慧成(キム・ヘソン)が加われば、一定の得点源として機能するだろう。ただし、主砲の盧施煥(ノ・シファン)が深刻な不調に苦しんでいる点は、大きな懸念材料だ。
また、アメリカでプレーする韓国系選手についても、過度な期待は禁物だ。前回大会で沈黙したトミー・エドマン(ドジャース)の例もあり、今回新たに合流するシェイ・ウィットコム(アストロズ)やジャマイ・ジョーンズ(タイガース)が、どこまでチームにフィットするかは未知数である。彼らの適応力が、チームの得点力を大きく左右することになりそうだ。
こうした戦力バランスを踏まえた韓国代表の戦略は、極めて現実的だ。エースの郭彬を、必勝を期す台湾戦に投入。先発に長いイニングを求めず、傷口が広がる前に「第2先発」からリリーフ陣を次々とつぎ込む継投策を想定している。
韓国としては、台湾を下して米国での準々決勝進出さえ果たせれば、たとえ日本戦を落としたとしても、最低限のメンツは保てるという算段だろう。
とはいえ、チェコや豪州を相手に確実に白星を拾える保証はない。とりわけ豪州戦は、試合の展開次第では、勝敗がどちらに転んでもおかしくない混戦が予想される。
【広がる日本との戦力格差】
第2回WBC(2009年)を控えた頃だったろうか。当時、韓国代表を率いていた金寅植(キム・インシク)監督は、こう語っていた。
「日本は代表チームを組もうと思えば3つつくれるが、我が国はひとつしかつくれない。それが日韓の野球の差だ」
それでも当時の選手たちは、日本への"憧れ"を捨て、闘志を剥き出しにして挑んできた。そうした魂のぶつかり合いが、「日韓戦」という激闘の歴史を築き上げてきた。
しかし時が経ち、日韓の戦力差は縮まるどころか、むしろさらに広がってしまった。その原因を挙げるとすれば、育成システムの機能不全や外国人枠への過度な依存など、韓国球界が長年目を背けてきた課題があまりにも山積していると言わざるを得ない。
果たして今大会、宿敵の名を返上しつつある韓国代表は、世界を相手にどのような戦いを見せるのか。その姿こそが、いまの韓国野球の現在地を映し出すことになるだろう。










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