蘇る名馬の真髄
連載第37回:アグネスタキオン

かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。

ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第37回は、キャリア4戦4勝でGⅠ皐月賞を制しながら、故障により引退を余儀なくされたアグネスタキオンを取り上げる。

『ウマ娘』では研究者肌という特異なキャラクター 「幻の三冠馬...の画像はこちら >>
 科学力を駆使し、速度の限界を追い求める研究者肌――。それが『ウマ娘』のアグネスタキオンだ。ウマ娘の肉体に興味を持ち、その身体能力を高めるための研究や実験に余念がない。そんな特異なキャラクターとなっている。

 このウマ娘のモデルになったのは、競走馬のアグネスタキオン。4戦無敗で2001年のGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)を制し、圧倒的な強さを見せた1頭だ。

 しかし、その皐月賞のあとに故障が判明。引退を余儀なくされた。過去4戦の内容があまりに強かったことから、「幻の三冠馬」とまで言われる存在である。

 ちなみに、同馬の名にある「タキオン」とは「超光速の粒子」という意味を持つ。こういった要素が"速度の限界を求める研究者肌"という設定につながったのかもしれない。

 競走馬のアグネスタキオンは、2000年12月に3歳(現2歳。※2001年度から国際化の一環として、数え年から満年齢に変更。以下同)でデビュー。その新馬戦を楽勝すると、2戦目にはいきなり重賞に挑戦した。それも、当時毎年のように素質馬が集結し、クラシック三冠に向けた登竜門となっていたGⅢラジオたんぱ杯3歳S(阪神・芝2000m)にだ。

 この年も、同レースにはスター候補がズラリと顔をそろえた。1.4倍の圧倒的1番人気になったのは、新馬戦2着後、驚異的な強さで連勝を飾って駒を進めてきた外国産馬のクロフネ。新馬戦を勝ったばかりのアグネスタキオンはそれに続く2番人気となった。さらに3番人気には、デビュー2連勝でGⅢ札幌3歳S(札幌・芝1800m)を制したジャングルポケットが続いた。

 このレースにおいて、アグネスタキオンがただ者ではないことを誰もが認識する。

 道中、クロフネとジャングルポケットの後ろでレースを進めたアグネスタキオンは、4コーナーで進出を開始したクロフネに外からスッと並んでいく。そして直線に入ると、ほとんどムチも使わずに大本命馬を突き放していった。

 離されたクロフネに変わって、今度はジャングルポケットが追い込むが、アグネスタキオンとの差はまったく縮まらない。圧巻の末脚を繰り出したアグネスタキオンはそのまま突き抜けて、ジャングルポケットに2馬身半の差をつけて快勝。クロフネはさらに遅れて3着に敗れた。

 名うての外国産馬と重賞馬をあっさりと下したことから、アグネスタキオンの評価は一気に高まった。年が明けて、断然の支持を受けた前哨戦のGⅡ弥生賞(中山・芝2000m)でも5馬身差の勝利。完全なる主役として、クラシック初戦の皐月賞に挑んだ。

 1.3倍の1番人気でレースを迎えたアグネスタキオン。ゲートが開くと、5番手の好位置をキープする。4コーナーに入るまで、無駄な動きは取らずにこのポジションで進めていった。

 迎えた直線、アグネスタキオンは馬なりのまま先頭に並びかけていく。

その外から2番人気のジャングルポケット、3番人気のダンツフレームも一緒に追い上げを図り、人気馬同士の争いとなった。

 そのなかで確かな強さを見せたのは、やはりアグネスタキオンだった。ライバルたちが内外から懸命に追いすがるなか、アグネスタキオンは特に無理することなく、軽快な脚取りで急坂も駆け上がっていった。

 結果、後続に1馬身半差をつけての完勝。その差はどこまでいっても詰まりそうもなかった。その次元の違う強さから、テレビ中継の実況アナも三冠を意識して「アグネスタキオン、まず一冠!」と口にした。

 だが、この皐月賞から約半月後、アグネスタキオンは屈腱炎を発症。三冠はおろか、引退を余儀なくされてしまった。まさしく光のように駆け抜けた競走生活だったと言えよう。

 その後、ジャングルポケットやクロフネ、ダンツフレームらライバルたちが次々にGIを制覇。ハイレベルだった2001年のクラシック世代だが、なかでも断トツに強かったのは、アグネスタキオンだった。

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