後編:順天堂大・長門俊介監督が振り返る第102回箱根駅伝
前編はこちら>>順天堂大・長門俊介監督が感じていた成長
第102回箱根駅伝で、前評判を覆す総合3位という結果を残した順天堂大。安定した走りでうまくハマった往路を6位で終えた。
【安定した走りから10区で勝負】
箱根駅伝で、かつて「逆転の順天堂大」「復路の順天堂大」と称されていた時期があった。そして、今回もその伝統の強さを見せた。
6区の終了時点で往路からひとつ順位を下げて7位だったが、7区の玉目陸(2年)が快走(区間2位)し、追いすがる創価大を突き放すと前を行く駒澤大を捉えて、再び順位を6位に上げた。
「玉目は切り札としての役割を果たしてくれました。たぶん、多くの人が8区の永原颯磨(2年)の名前を見て、『大丈夫なのか?』と思ったはずです。3000m障害の選手というイメージが強く、箱根の予選会もチーム内で11番ともうひとつでしたから。それでも、彼は夏からずっと調子がよくて、予選会ではなぜ走れなかったんだろうと不思議に思うくらいでした。全日本大学駅伝大会も起用を迷いましたが、4区で8位としっかりと走ってくれました。箱根も直前にどんどん調子を上げてきて、これなら大丈夫ということで自信を持っての8区起用でした」
2025年の全日本インカレ3000m障害優勝の実力者の永原は、長門監督の期待に応えて区間3位の快走を見せた。5位に上がると、そのまま9区の石岡大侑(4年)につないだ。この時点で目標の5位に達していたが、石岡はハイペースで入り、さらに上位を狙おうという主将らしい走りで前を追った。
10区の山本悠(2年)がスタートした時は、4位の早稲田大と46秒差に開いていた。
「早稲田の選手も中央大を追いかけていたので、その差はなかなか詰まらなかったです。ただ、2校が一緒になった時、お互いに牽制してくれれば、一気にこの差は詰まると思っていました。実際、泉岳寺付近(15km)で早稲田大が中央大に追いつき、その時点でうちの山本とはまだ30秒差があったんですが、馬場先門までの5kmくらいで一気に2校に追いつきました。追いついてから山本は躊躇なく勝負をして、前に出てくれました。まさに一瞬の出来事でした」
【過去の経験を生かす】
総合3位、ゴール地点では涙ぐむ選手もいた。長門監督は、選手が本来持っている力を出してくれたことに満足感を得ていた。OBや関係者、ファンも大いに喜び、『強い順天堂大復活』に酔いしれた。ただ、浮かれてばかりはいられないという。
「98回大会で準優勝した次の99回大会は、野村優作(トヨタ自動車)、伊豫田達弥(富士通)、四釜峻祐(ロジスティード)、西澤侑真(トヨタ紡織)ら強い4年生がそろい、3年生には三浦龍司(SUBARU)もいて、優勝を狙えるチャンスでした。でも、総合5位になり、狙った結果を残せませんでした。この経験も生かして、来季は自分も学生たちも気を引き締めていかないといけないと思っています」
実際、優勝した青学大の総合タイムは10時間37分34秒、3位の順天堂大とは、10時間43分55秒で6分21秒の差がある。
「青学大には、前回2位の時も10分ぐらい差をつけられましたし、今回も6分以上ですからね(苦笑)。
98回大会で準優勝した時も優勝争いができなかったですし、今回の3位も優勝争いをしての3位ではないんです。相手がこぼれてきたところを拾っての3位なので、やっぱり優勝争いをしていけるチームにしていかないといけないと思っています。
そのためには、出雲駅伝や全日本で優勝争いの経験をして、箱根に臨めるのが理想です。まずはこれまでの1年間やってきたことを振り返り、足元をすくわれないように進んでいくことが大事かなと思います」
【順天堂大らしい取り組みを心がける】
箱根で優勝するには、どうアプローチすべきか。
今大会後、その方法論について駒澤大の藤田敦史監督、中央大の藤原正和監督が「青学大のように箱根に特化すべきなのか」と難しい判断を抱えていることを吐露した。長門監督は現状、箱根における青学大との距離を感じているというが、そのアプローチについては、どう考えているのだろうか。
「たぶん、青学大には箱根で結果を出したいという学生が集まっていると思うんです。今の順天堂大は、多種多様といいますか、いろんな考え方を持った学生が多いです。それぞれ学生の思いを汲んでその道しるべをこちらが示してあげるのが、先輩方が作り上げてきた順天堂大のやり方かなと思います」
箱根に集中するといっても必ず勝てる保証はないが、毎年強いチームを作り、勝ち続けていく青学大・原晋監督については、どう見ているのだろうか。
「黒田朝日くんを始め、すごい選手をどんどん生み出すところとか、箱根やマラソンに向かう際のピーキングとか、本当にすごいなと思いますね。じゃあ、原さんと同じことをしたら、いいかというとそういうことでもないのかなと思います。
順天堂大の陸上競技部は、日の丸を背負う人材を輩出する組織だと思いますし、実業団でも結果を出したい選手も多くいます。さらにいえばうちは指導者になる人材も育てていかないといけない。そういう学生たちの思いを一つひとつ汲み取って指導していくのがうちのスタイルですし、箱根で勝つのは、そうしたことの延長線上にあるものだと考えています。もちろん、指導者として箱根で勝ちたい気持ちはあります。これまで3000m障害で、塩尻和也(富士通)、三浦にはいい景色を見させてもらったので、箱根でも同じ景色を見てみたいですよ(笑)」
【大エースがいなくても......】
4月からの新シーズン、その可能性が十分あるのでないだろうか。
箱根3位のメンバー9名が残り、さらに林龍正(3年)、荒牧琢登(3年)、古川達也(3年)ら主力組もいる。
「箱根まではゲームチェンジャー、大エースがいないなか、みんなが自分の役割を果たしていくというチームで成長してきました。箱根では、2区のエース区間で吉岡大翔(3年)がその役割を十分に果たしてくれたので、今回の結果にもつながったと思います。次もエースがいても同じように全員で戦っていく意識を持って、今年のようなチームになればいいなと思っています」
今年のようなチーム作りができれば、順天堂大は相当にしぶとく、強くなる。期待を込めて、「来年は『打倒!青学大』を宣言できそうですね」と、長門監督に投げかけた。
「いやいや、そう言わせたい感じですね(苦笑)。今回は、みんな100点の走りをしてくれたんですけど、80点でも今回くらいの結果を出せるような力をつけていかないといけないと思います。
箱根駅伝で総合3位という結果を残したことで、ここまで取り組んできたことの意味が深くなった。新シーズン、再現性があるチーム作りを実現していけば、次の箱根駅伝で青学大の尻尾をつかめるはずだ。



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