西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第91回 フェデリコ・バルベルデ
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
チャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントで、レアル・マドリードのフェデリコ・バルベルデがマンチェスター・シティ相手にハットトリック。攻守に渡って大活躍だったその圧巻の内容を追います。
【すべてのポジションで貢献できる能力】
ズラタン・イブラヒモビッチが「ベストイレブンに誰を選ぶか?」という問いに、全ポジションに「俺」を選んでいる動画を見た時には笑ったものだが、誰を11人集めたら一番強そうかと言えば、今なら「フェデリコ・バルベルデ」と答えて異論は出ないのではないかと思う。
CLのラウンド16初戦、レアル・マドリードはホームにマンチェスター・シティを迎えて3-0と撃破。3得点はすべてバルベルデ、前半だけでハットトリックだった。守ってはシティで最も危険な選手だったジェレミー・ドクを抑え、攻守万能ぶりを発揮していた。走れて守れて、つなげるし得点もとれる。バルベルデより攻撃力に秀でている選手はいるし、守備の強い選手もいるが、ひとりでチームを作るならバルベルデだろう。すべてのポジションで貢献できる能力がある。たぶんGKをやらせてもうまいのではないか。
シティ戦でのレアル・マドリードは4-4-2の守備ブロックを敷いていた。バルベルデはMFの右サイドを担当。しかし、押し込まれた時には5バックになっていて、シティの左ウイング、ドクと対峙することもあった。
29分の1対1ではあっさりボールを奪っている。レアル・マドリードはダブルチームでドクに対応。時には3人で突破を諦めさせるなど、かなり神経を使っていたのだが、終盤にはっきり5バック化してバルベルデがマークすると、ドクにボールが来なくなった。無双のドクをもってしてもかないそうもないオーラが、この日のバルベルデからは発せられていたのかもしれない。
【バルベルデの走力が決めた試合】
レアル・マドリードの先制点は20分。GKティボー・クルトワのロングパスが右サイドのバルベルデへ。シティの左サイドバック(SB)ニコ・オライリーが戻ってきて対峙しようとした瞬間、バルベルデはワンタッチで大きくボールを放り出し、オライリーを置き去りにする。飛び出したGKジャンルイジ・ドンナルンマを"裏街道"でかわして無人のゴールへ流し込んだ。
182センチのバルベルデはそんなに速く見えないが、大きなストライドでの加速がすばらしく、かつては右ウイングとしても活躍している。追いかけてきたオライリーが止まりかけた瞬間にワンタッチコントロールで一気に加速するタイミングが抜群だった。
2点目は27分、カウンターからヴィニシウス・ジュニオールのパスを受けて左足でファーポストへきっちり収めるシュート。
守備では右SBトレント・アレクサンダー=アーノルドのサポート、あるいは右SBのポジションまで戻り、攻撃では最前線へ駆け上がる運動量が凄まじい。
42分の3点目はブラヒム・ディアスの小さなロブで抜け出し、カバーにきたマーク・グエイの頭上にボールを浮かせて入れ替わる"シャペウ"からのシュート。ディアスの掬い上げるパスも見事だったが、バルベルデの個人技が圧巻だった。
レアル・マドリードはヴィニシウスとブラヒム・ディアスの2トップだが、攻撃ではヴィニシウスが得意の左サイドへ開く。そこで空いている右サイドで幅をとるのはバルベルデの役割になっていた。守備にはほぼ参加せず、左へ流れてパスを待っているヴィニシウスと違い、バルベルデはSBから前線まで動き続けていたわけだが、この動きのスケールと走力にシティがついていけなかった。バルベルデの走力が決めた試合と言えるかもしれない。
終了の笛が吹かれた時、バルベルデはまるで敗者のように座り込んでいたのが印象的だった。
【便利屋!? の独壇場】
ここまですべてを兼ね備えた選手も珍しい。ボックス・トゥ・ボックスのMFとして、リバプールで活躍したスティーブン・ジェラードがよく引き合いに出されるが、背格好も含めて確かに似ていると思う。カルロ・アンチェロッティが「足に石がついている」と評したキック力もある。
スター揃いのレアル・マドリードにおいて、バルベルデは時に便利屋のように使われてきた。本職はMFだがウイングで起用され、SBでプレーすることもある。この点ではリバプールのドミニク・ソボスライと同じで、何でもできるがゆえに割を食っている感は否めない。
しかし、その万能性がシティ戦のようにひとりで試合を決めてしまうこともある。決定的なパスやシュートだけでなく、攻守において決定的なプレーをし続けての独壇場。こんなことができる選手はほとんどいない。
チームのために何でもする、何でもできる。そんな選手が精根尽きるまで走って勝利をもたらすのだから、ファンの信頼は絶大だ。たんなる才能の発露ではなく、人としての偉業なのだ。
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