エースをねらえ! ヤクルト再建を託された4人の投手(前編)

 ヤクルトは池山隆寛新監督のもと、新シーズンをスタートさせた。チーム刷新の原動力として期待されているのが、先発投手陣だ。

3年連続でチーム防御率がリーグ最下位という厳しい現実はあるものの、先発ローテーション候補の顔ぶれを見れば、その若さとポテンシャルに大きな可能性を感じさせる。

 沖縄・浦添での春季キャンプ。エース候補として期待される右腕の吉村貢司郎と奥川恭伸、左腕の高橋奎二、山野太一の4人に話を聞いた。

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【初の開幕投手に指名された吉村貢司郎】

 吉村の今季のテーマは「真っすぐと再現性」だ。オフにはジャンプ系などの瞬発力に重きを置いたトレーニングを大幅に増やし、体つきもひと回り大きくなった。昨季の最速は152キロ。

「ボールをもっと強くしていかないとダメですし、真っすぐをしっかり投げて、空振りやファウルをとって、その再現性を高める。それを1年間つづけることが大事ですし、そうなればもっとうまくいくと思っています」

 昨年までのプロ3年間の通算成績は、21勝16敗。昨年は9、10月に4試合に登板して4勝0敗、防御率1.61と好成績を残し、自身2度目の月間MVPを受賞。2024年に9勝、25年は8勝を挙げ、2年連続でチーム最多勝を記録。先発陣の「エース格」と言える存在になった。

「まだまだ満足できてないですし、もっと成長していかないといけない。エースと呼ばれるには、信頼と信用を勝ち取ることが必要です。

そこにしっかり名乗りを上げ、責任と強い意志を持って取り組んでいきたいです」

 吉村といえば、左足で反動をつけて投げる「振り子投法」が代名詞だったが、2024年シーズン途中にこれを封印。今キャンプでは、その動きをコンパクトにした"小さな振り子投法"へとモデルチェンジしている。

「どうすればタイミングが合うのか、いろいろ考えながら、多少の変化も恐れずに取り組んだ結果、今の形になりました。自分は常にいいものをチョイスしていくので、いいと思ったことは積極的に取り入れていこうと思っています」

 今季の先発陣と自身のシーズンのイメージについて、「僕らの世代が多いので」と前置きし、こう続けた。

「先発全員が1年間しっかりローテーションを守り、少しでも長く、多くのイニングを投げることができれば、勝利に近づくと思います。しっかりゼロを並べて、先発陣でチームを引っ張っていきたいです。僕自身、2ケタ勝利は結果としてついてくると思っていますし、それ以上を挙げなければいけない。そのためにもイニングをしっかり投げ、チームの勝ちを積み重ねられるといいですね」

 オープン戦の登板では「本当にいいボールが増えてきた」と、状態を上げてきた。

「その確率をどれだけ上げられるか。再現性を高めつつ、まだまだ修正すべき点もあるので、いい感じに開幕を迎えられるといいなと思います」

 池山監督は、3月27日のDeNAとの開幕戦に吉村を指名した。初の大役を任された吉村は、こう語る。

「チーム全体のスタートでもあるので、開幕投手として、少しでも長いイニングを投げ、チームを勢いづけられるピッチングができればいいなと思っています」

【弱かった自分に決別】

 奥川の今季のテーマは「元気に、強く、大きく! 弱かった自分とのお別れ」だ。オフシーズンは、厳しい寒さのなかでも半袖で練習を続け、キャンプ第3クールでは自身最長となる5日連続のブルペン入りもあった。

「とにかく投げています。練習も"投げること"に全振りしている感覚です。強さを出すという意味では、繊細さの反対というか、いい意味での"鈍感力"を大事にしています。多少のことは気にせず、流していこうと。1試合100球にこだわらず、求められれば『何球でも投げます』と言えるタフさを身につけたい。とにかく投げて、投げて、ですね(笑)」

 とにかく投げるという取り組みは、昨年7月に途中加入した青柳晃洋の助言がきっかけだった。

「青柳さんは阪神で投げてきた方なので、違う文化から多くの刺激を受けています。いろいろ話を聞くなかで、最も影響を受けたのは、積極的に球数を投げるという考え方です。そこに刺激を受けて、自分もやってみようと思いました。今はまだ効果を実感できていませんが、これから出てきてくれればいいなという思いで投げ込んでいます」

 奥川は高卒2年目の2021年に9勝を挙げ、チームの日本一に貢献。その後はケガに苦しんだが、昨年は4勝8敗に終わりながらも、シーズンを完走した。

「昨年はケガをしないという目標は達成できましたが、まだローテーションを守りきったことがないので、しっかり1年間回って、規定投球回(143回)を投げる。

そのなかで勝ち星を増やし、負けを減らす。チームの中心として活躍できれば、今までの弱かった自分とはお別れだなと」

【阪神に雪辱を果たしたい】

 これまでは、「対戦するのが嫌だ」と感じるチームもあったという。

「個々の能力が高いだけでなく、試合運びもうまく、チームとして強さを発揮する。そういうチームですね。今年はそうした意識に区切りをつけたいというか、そういうチームから勝ちたい。そのためにも、圧倒的な力をつけたい。そうなれば安定した成績も残せるし、それを1年だけで終わらせず、3年、4年と積み重ねていくことで、"エース"と呼ばれるようになれるのではないかと思います」

 昨年、奥川は阪神相手に1勝4敗と負け越した。

「その悔しさを晴らしたいですね。どの球団も同じだと思いますが、僕たちは昨年最下位に終わっているので、阪神と互角に戦えるくらいにならないと優勝は見えてこない」

 今季のスワローズ先発陣のイメージについて尋ねると、次のように答えた。

「誰かが勝てば『次は自分が勝たないと』と刺激し合える関係になれたらいいですね。そうなればチームはもっと強くなると思いますし、いい雰囲気も生まれるはずです。チームにはいい投手が多いので、まずはそのなかで競り負けないこと。ローテーションをつかんだら離さず、どんな形でも規定投球回と2ケタ勝利は達成したいと思っています。

 そして、数字として残る実績がなければ"エース"とは呼ばれないと思うので、通算1500イニングもひとつの目標です。ここまで少し時間はかかりましたが、これからさらに数字を積み上げていきたいです」

 オープン戦では4試合に登板。0勝2敗ではあったが、防御率1.80、奪三振は投球回(15)を上回る18個を記録した。本拠地開幕カードとなる広島との3連戦の3戦目の先発が見込まれている。

【規定投球回クリアは最低条件】

 小川泰弘は、2013年のプロ1年目からスワローズ先発ローテーションの柱として役割を果たし、規定投球回や2ケタ勝利をクリアしてきた。ここまで一軍のオープン戦での登板はなかったが、池山監督は小川を前述の神宮開幕カード初戦の先発投手に指名した。

 このベテラン右腕の目に、吉村と奥川はどのように映っているのだろうか。

「吉村は本当によく練習しますし、見てのとおり体も強く、ボールの力もありますよね。ローテーションの柱として1年間守れる選手ですし、苦しい状況でも試合をつくれる。ただ、石川(雅規)さんもよく話されていますが、先発は規定投球回をクリアしてこそ一人前。それができる選手ですし、やらなければいけない選手だと思います。

 奥川は元気に投げ込みができているのが、とてもいいことだと思います。

持っているものはすばらしいので、それに甘えず、気持ちも技術も磨いてステップアップしてほしい。そのためには、自分自身で壁を乗り越えるしかありません。先ほども話しましたが、規定投球回を意地でもクリアすることが、成長につながっていくのではないかと思います」

 小川が語るように、吉村と奥川が規定投球回をクリアすれば、スワローズ先発陣にはまず2本の柱が打ち立てられることになる。

つづく>>

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