今江敏晃の楽天の戦力分析&パ・リーグ順位予想 前編
3月27日にプロ野球の2026年シーズンが幕を開ける。昨シーズン、4年連続のパ・リーグ4位となった楽天は、11年ぶりに日本球界復帰を決断した前田健太をはじめ、積極的な補強を行なった。
そんな楽天の今シーズンの戦力について、2024年に同チームの監督を務め、初の交流戦優勝に導いた今江敏晃氏に分析してもらった。
【前田健太が加入した影響】
――今シーズンの楽天は新たな戦力が加わり、大きく様変わりした印象を受けます。
「積極的な補強を進めましたが、なかでも前田健太の加入はチームにとって本当に大きいと思っています。戦力としてはもちろん、野球への取り組み方や経験値など、周囲に絶大な影響を与えてくれるでしょう。前田の活躍次第では、上位進出も見えてくると思います」
――現段階の印象で、前田投手は何勝くらいできそうでしょうか?
「打線との兼ね合いはありますが、順調に登板を重ねられたら二桁近い勝利を挙げられるんじゃないかと。これまでもチームを勝たせるピッチングをしてきた投手ですし、『そのくらいはやってもらわないと困る』という首脳陣の思いもあるはずです。
近年はケガが続き、MLBでもあまり投げることができていなかった点に不安は残ります。ただ、ブルペン捕手も『思ったよりも球の勢いが強く、切れ味が鋭いスライダーも健在だった』と話していましたし、活躍してくれるんじゃないかと思っています」
――今江さんは現役時代、広島時代の前田健太投手と対戦されていますね。今の投球スタイルとは異なるかもしれませんが、当時の印象を聞かせてください。
「真横から独特の軌道で大きく曲がるスライダーが特徴的で、それを正確に、幅広いゾーンに投げ分けることができる投手でした。対戦した時は、まるでストライクゾーンが広くなったような感じでしたね」
――11年ぶりの日本球界復帰、初のパ・リーグでのプレーという点に関して、懸念される点はありますか?
「MLB時代も錚々たるホームランバッターと対戦していますし、DH制の経験もありますから、さほど違和感はないと思います。あえて言うなら、日本球界の打者が11年前よりもかなりレベルアップしているので、当時とのギャップに驚かされる場面があるかもしれませんね」
【先発の柱となりそうな投手は?】
――今シーズンの開幕投手は、荘司康誠投手が登板する予定になっています。他の先発は、瀧中瞭太投手や古謝樹投手などが中心になりそうでしょうか。
「荘司は、この2年間はケガと不調で思うような成績を残せていません。
古謝もプロでさまざまな経験を積み重ね、徐々に主力としての自覚が芽生えているようです。一方で、これまで武器にしていた力強いボールが鳴りを潜めて、きれいにまとまり過ぎてしまっているような印象もあります。プロ入り3年目、どのように自分のピッチングを確立していくのかを見守りたいですね。
瀧中も本来は貯金が作れる力がありますし、僕が監督をしていた年に頑張ってくれた藤井聖の復調や、昨秋に左肩を手術した早川隆久の復帰も待ち遠しいです」
――昨シーズン、トミー・ジョン手術から復帰した西口直人投手の先発転向も注目です。
「僕は、西口が投げるきれいな軌道の速球は、短いイニングでこそ持ち味が発揮されると思っていました。長いイニングを投げることでどのような変化が生まれるのか、どうモデルチェンジするのか楽しみです」
――さらに、ベテランの岸孝之投手や辛島航投手なども控えています。
「そうですね。長いシーズンではベテランの力が必要になるタイミングが必ずやってきます。1年間ローテーションを守るのは難しいかもしれませんが、重要な時期に実力通りの活躍を見せてくれたら、チームにとって非常に心強いでしょう」
【藤平投手の侍ジャパン入りは「本当にうれしい」】
――リリーフ陣では、藤平尚真投手が侍ジャパンの一員に選ばれ、WBCを経験しました。今江さんが監督時代に中継ぎにコンバートし、大きな飛躍を遂げた投手ですね。
「先発で投げていた頃の藤平を見て、『毎日のように試合に出たほうが、彼は気持ちを切り替えやすいのでは?』と感じ、コンバートを打診しました。藤平はもともと高い素質があり、ブルペンではいいボールを投げているのに、なかなかゲームで力が発揮できないシーズンが続いていたんです。
――今江さんも第1回の WBC(2006年)に出場し、優勝を経験しました。日の丸を背負った経験をどのように活かしてもらいたいですか?
「侍ジャパンに選ばれた選手は、これまで味わったことのないような重圧を背負ってプレーします。ほかのトップ選手と過ごした日々や、極度の緊張感のなかで試合に臨んだ経験をチームに還元してもらいたいです」
――藤平投手以外のリリーフ陣についてはいかがですか?
「昨シーズン、中継ぎとして63試合に登板した西垣雅矢も、オープン戦で最終回に投げることが多くなっていますね。それ以外は、手術明けの鈴木翔天、新外国人のロアンシー・コントレラスなどがリリーフとして起用されることになりそうですが......1年間フルで投げられるかどうかについては、不安があるかもしれません。開幕後にどうやりくりしていくのか、注目したいです」
【課題の長打力不足の解消は?】
――続けて野手について伺います。まずキャッチャーは、昨シーズンは太田光選手が111試合でマスクを被りました。
「スローイングが魅力の太田光と、やはり昨年に出場機会を増やした堀内謙伍を中心に、石原彪(つよし)、YG安田、横浜から移籍した伊藤光など、人材は揃っている印象です。
伊藤の起用法はまだ不透明ですが、豊富な経験があり、正捕手を争う若手選手の刺激になるでしょう。アクシデントに冷静に対応できる点でも、控えていてくれるだけで心強いのではないかと思います」
――若手野手でいうと、昨シーズンにベストナインに選ばれた宗山塁選手のさらなる飛躍に期待ですね。
「とにかく完成度の高い選手ですが、ルーキーだった昨シーズンは、首脳陣が疲労やケガに気を配りながら起用しているような感じもありました。宗山自身は全試合出場を目標に掲げているようですし、彼の存在は本当に心強い。2年目に懸ける意気込みがどのような数字に現れるのか。今シーズンの楽しみのひとつです」
――ショートからサードにコンバートされた村林一輝選手も、昨シーズンはゴールデングラブ賞とベストナイン、最多安打のタイトルを獲得し、自己最高成績を残しました。
「もともと素晴らしかった守備に加えて、二軍で必死に苦労しながら考え抜いたバッティングがようやく形になった印象ですね。タイトルを獲った自信とともに、思いきりのいい打撃を活かして、まだまだ上を目指してほしいです」
――楽天打線の課題としては、昨シーズンのチーム本塁打数が70本でリーグ最下位と、長打力や得点力にあるかと思います。
「昨シーズン途中に加入して打率.300、13本塁打を放ったルーク・ボイトや、オスカー・ゴンザレス、新加入のカーソン・マッカスカーらの長打力に期待せざるを得ない部分はあると思います。外国人選手枠に限りがあるなかで、三木肇監督はどのように起用していくのか。そして、本拠地の外野のフェンスが狭くなり、本塁打が出やすくなった状況をどのように勝利に結びつけていくのかといった点も注目です」
【「やってもらわなきゃいけない選手たち」の復活にも期待】
――新外国人選手が加わった外野は、ポジション争いが熾烈です。
「誰が先発に起用されるのかはわかりませんが、外国人選手はどうしても、その時の感情がプレーに出やすい傾向があります。首脳陣は緻密なコミュニケーションを取りながらモチベーションを維持し、チームのために戦ってもらうような雰囲気作りが求められるんじゃないかと思います。日本ハムの新庄剛志監督のように、試合に出られない選手の気持ちを奮い立たせるのは、簡単なことではありません」
――外野には、捲土重来を期す小郷裕哉選手、辰己涼介選手といった面々も控えています。
「僕が監督をしていた2024年は、小郷はイニングフル出場、辰己は最多安打のタイトルを手にする活躍でチームを支えてくれましたが、昨シーズンは思うような結果が残せず苦しみました。起用が限られてくると、成績を残す難しさがあると思いますが、チームとしては『やってもらわなきゃいけない選手たち』ですね」
――そして昨季は規定打席に到達し、22盗塁をマークした3年目の中島大輔選手も、チームの欠かせない存在に成長しました。
「中島大輔は勘が鋭くて、首脳陣が求めるプレーを的確に表現できる選手。僕も多くの場面で助けられました。
あとは、現役ドラフトで加わった佐藤直樹(ソフトバンク→楽天)も存在感を示しています。そういった選手が実力を発揮できるような環境が整えば、上位進出も期待できると思います」
(後編:今江敏晃のパ・リーグ順位予想は「勢いの差」で1位を決定 楽天など3位以降は「どう入れ替わってもおかしくない」>>)
【プロフィール】
今江敏晃(いまえ・としあき)
1983年8月26日生まれ、京都府出身。PL学園では1年時から活躍し、2001年のドラフト3位でロッテに入団。勝負強い打撃、ゴールデングラブ賞を4度受賞した守備で中心選手として活躍。2005年、2010年のロッテの日本一にも大きく貢献し、いずれもシリーズMVPに輝いた。2006年にはWBC日本代表として優勝に貢献した。2016年に楽天に移籍し、2019年に引退。2020年から楽天でコーチを務め、2024年には監督としてチームを率いた。










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