過去のワールドカップを振り返ると、日本代表が勝ち上がれるか否かには、直近の五輪世代の活躍が大きく影響を及ぼしている。
日本代表が決勝トーナメントに進出したワールドカップ、すなわち2002年日韓大会では稲本潤一らのシドニー五輪世代が、2010年南アフリカ大会では本田圭佑らの北京五輪世代が、2022年カタール大会では堂安律らの東京五輪世代が、貴重な働きを見せている。
彼らはチームの中心的存在であり、ラッキーボーイ的存在でもあった。
開幕2カ月前にヴァイッド・ハリルホジッチ監督が突如解任され、スクランブル体制で大会に臨みながらグループリーグ突破を果たした2018年ロシア大会を例外とすれば、「日本代表の躍進の陰に五輪世代の活躍あり」は定説となっている。
そうなると、来る2026年北中米大会で活躍が期待されるのは、パリ五輪世代。彼らの台頭なくして、日本代表の勝ち上がりはあり得ない、ということにもなる。
ところが、昨年までの日本代表の活動を見る限り、パリ五輪世代の台頭が進んでいるとは言い難い。
アジア最終予選をレギュラー格として戦っていた、鈴木彩艶、久保建英のふたりを除けば、主力組に食い込めているのは、昨秋大きくブレイクした鈴木淳之介くらい、という寂しい状態にあったからだ。
だからこそ、年が明け、いよいよワールドカップイヤーとなった今年、どれだけパリ五輪世代が成長しているかは、日本代表の今後を占ううえでの重要なポイントのひとつだったのだが、その点ではなかなかの成果が得られた、と言えるのではないだろうか。
日本代表の2026年初戦となった、敵地グラスゴーでのスコットランド戦。1-0で勝利したこの試合に先発出場した、藤田譲瑠チマと鈴木唯人のふたりは、それぞれのポジションにおいて違いを生み出すべくプレーしていた。率直に言って退屈な時間も多かった前半において、常に試合を動かそうとしていたのはこのふたり、と言ってもいい。
2ボランチの一角で出場した藤田は、日本がボールを保持するものの手詰まり感がある展開のなかで、ゴールに直結しうるパスを何度も狙っていた。
結果的に相手にカットされたり、味方がパスを受け損なったりして、得点につながることはなかったが、これを単なるミスパスや無理なパスと判断してしまってはもったいない。
また、2シャドーの一角でプレーした鈴木唯は、スピード、キレ、力強さを兼ね備えたドリブルで、再三チームの攻撃に推進力をもたらしていた。
特に前半、鋭く相手ゴールに迫る日本の攻撃は、そのほとんどが鈴木唯が絡むことによって生まれている。
鈴木唯は、所属クラブ(当時はブレンビー/デンマーク)の事情でパリ五輪には出場できなかったが、本来なら背番号10を託され、攻撃の中心を担っていたはずの選手である。そのポテンシャルを考えれば、ここに至るまでには少々時間がかかったが、ついにパリ五輪世代の"真打ち登場"というわけだ。
ケガで南野拓実の復帰が微妙な状況にある現在、2列目の得点力を保つためには、なお一層、鈴木唯の必要性が高まっている。
そしてもうひとり、いわば"二階級特進"でワールドカップメンバー入りへ名乗りを上げたのが、塩貝健人である。2005年3月生まれの塩貝は、パリ五輪世代どころか、もうひとつ下のロス五輪世代。冒頭に記したワールドカップと五輪との関連性で言えば、次回2030年スペイン・ポルトガル・モロッコ大会での活躍が期待される存在ということになる。
だがしかし、日本代表初招集にして代表デビュー戦となったスコットランド戦では、およそ2カ月半後に迫ったワールドカップにも、十分間に合いそうなパフォーマンスを見せている。
スコットランド戦で与えられた出場時間は、アディショナルタイムを含めても15分あまり。それでもゴールへ向かう姿勢、周りを生かせるクレバーさ、大柄な相手にも当たり負けないフィジカルの強さと、自身の持つ魅力を存分に発揮した。
森保一監督も、「得点の場面は、自分で決めたかったシーンだろう」とルーキーの気持ちをおもんばかりながらも、それでも「ゴール前の得点に絡む部分で顔を出せる」ことを称え、「彼のよさは随所に出ていた」と評価している。
慶應義塾大学(休学)→横浜F・マリノス(特別指定)→NECナイメヘン(オランダ)→ヴォルフスブルク(ドイツ)と、高校卒業からわずか3年ほどで5大リーグまで一気に駆け上がった成長スピードは、まさに規格外。若手の台頭に期待するなら、この勢いを見逃す手はないだろう。
サッカーの歴史の1ページ目をつづったと言ってもいい伝統国を相手に、堂々たるプレーを見せた藤田、鈴木唯、そして塩貝。過去のワールドカップに見る定説を、彼らがまた裏づけてくれるとすれば、俄然2カ月半後が楽しみになってくる。

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