前編:大谷翔平「サイ・ヤング賞」獲得の可能性は?
これまでの多くの偉業を成し遂げてきた大谷翔平が唯一手にしていないのが、最優秀投手に送られる「サイ・ヤング賞」だ。「二刀流」本格復帰となる今シーズン、大谷がその栄誉を手にする可能性、そしてポイントはどこにあるのか。
【その可能性は過去の受賞者との比較でも明白】
サイ・ヤング賞は、不可能を可能にし続けてきた大谷翔平にとって、「最後の未踏峰」である。どれほど難しいのか。1956年に同賞が創設されて以来、MLBでトップのパワーヒッターがこの賞を狙うなどという話は、誰もまじめに取り合わなかった。「バリー・ボンズが......、ハンク・アーロンが......」と切り出しても、議論にならない。
しかし大谷は、能力的にそれを現実のものにできる位置にいる。
データが証明している。通算奪三振率は31.3%、被打率は.202、被OPSは.608。サイ・ヤング賞を3度受賞したペドロ・マルティネスは通算奪三振率27.7%、被打率.214、被OPS.613、5度受賞のランディ・ジョンソンは28.6%、.221、.650である。現在MLBで投手の頂点に立つタリク・スクバル(デトロイト・タイガース)も29.1%、.217、.628、ポール・スキーンズ(ピッツバーグ・パイレーツ)は31%、.198、.555である。
今年のオープン戦でも2試合に登板し、8回1/3で15奪三振、被打率は.172だった。3月24日のロサンゼルス・エンゼルス戦は最後の調整登板となったが、マイク・トラウトら開幕スタメンと見られる打線を相手に、4回まで被安打1、11奪三振。エンゼルス打線の35スイングのうち17回が空振りで、95マイル(約152キロ)以上の強い打球は1本だけだった。
大谷は、この試合後は取材対応をしなかったが、その前の3月18日のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦後にはメディアの前で話していた。昨年11月1日のワールドシリーズ第7戦以来となる実戦登板は、4回1/3を投げて1安打無失点。ノーワインドアップから力まずに投げても、直球は最速99.9マイル(約160キロ)を記録し、スプリッターやカーブで三振を奪った。セットポジションからのクイックも安定していた。3月はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンの1番DHとしてプレーし、大会では一球も投げなかったが、投手としての調整は順調だった。
「ライブBPもちゃんとやっていたので、その延長線上という形で今日は入りました。
【サイ・ヤング賞獲得への課題とポイント】
すでに触れたように、大谷は支配的な投球ができる投手である。一方で最大の課題は、それをシーズンを通して維持できるかどうかだ。フルシーズンを投げ、サイ・ヤング賞投票の対象となったのは、2022年のエンゼルス時代のみ。この年は28試合に先発し、166回で15勝9敗、防御率2.33、219奪三振、投票では4位に入った。
二刀流を続けながら、フルシーズンを投げきることは可能なのか。
「投げるスタミナは、投げることでしか身につかないと思っています。走ることやウエートトレーニングだけで得られるものではない。試合のレベルで継続していくなかで養われていく。
昨季は6月16日の復帰戦で1イニングだけ投げ、その後少しずつイニングを増やしていった。8月27日には5回を投げて勝利投手となり、ポストシーズンでは4試合に先発して20回1/3で2勝1敗。二刀流でドジャースの世界一に大きく貢献した。
「2年前はDHだけでポストシーズンに出ましたが、去年は久々に二刀流のリズムに慣れることができた。投打を両立しながらあの緊迫したなかで試合をこなすのは、負担がかかると感じました。でも、すごくいい経験ができたと思います」
大きな焦点となるのは、シーズントータルで何イニングを投げられるかだ。大谷の最高の投球シーズン2022年は166回だった。その年、大谷を抑えてア・リーグでサイ・ヤング賞を受賞したのはヒューストン・アストロズのジャスティン・バーランダーで175回。近年、ほかに少ないイニングでサイ・ヤング賞を受賞した先発投手は、2021年のミルウォーキー・ブルワーズのコービン・バーンズの167回、2024年のアトランタ・ブレーブスのクリス・セールの177回2/3である。やはり170回前後は最低でも投げる必要がある。
サイ・ヤング賞に関する質問が相次ぐなかで、大谷は個人タイトルよりもチームの3連覇を優先すると明言した。
「イニングを重ねれば、そういった賞に近づくというのはそのとおりだと思いますけど、最初からそのためにプレーすることはないですし、無理に(登板間隔を)縮めて投げることもありません。例えば投手の数が減ったり、誰かがケガで離脱したりして、自分のイニングが増えることはあると思いますが、そこは臨機応変に対応できればと思います」
とはいえ、今の大谷はメジャー9年目でサイ・ヤング賞に最も近い位置にいる。2022年シーズンはよかったが、あれから4年、30代の今、より完成度の高い投手になっている。直球の平均球速は2022年の97.3マイル(156.6キロ)から、2025年には98.4マイル(158.3キロ)へと上昇した。さらに2022年はスイーパーへの依存度が高かったが、現在は他にスプリット、カーブ、スライダー、シンカー、カッターと、多彩な球種を自在に操れる。パワーヒッターがサイ・ヤング賞を狙うのは異常なことだが、大谷なら可能だとドジャースは信じているし、アメリカのメディアやファンも大きな期待を寄せているのである。
つづく:大谷翔平が挑む「未踏峰」サイ・ヤング賞 投票権を持つ記者の評価基準と近年の変化










![Yuzuru Hanyu ICE STORY 2023 “GIFT” at Tokyo Dome [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41Bs8QS7x7L._SL500_.jpg)
![熱闘甲子園2024 ~第106回大会 48試合完全収録~ [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/31qkTQrSuML._SL500_.jpg)