伊東純也のゴールによって1-0で勝利した日本にとって、アウェーでのスコットランド戦はW杯本番を見据えたうえで有意義な試合となった。

 現在の両チームの力関係から見ても、試合結果は戦前の予想どおり。

FIFAランキングが示すとおり、18位の日本が40位のスコットランドに順当勝ちしたと言っていい。

サッカー日本代表はスコットランド戦でハイプレス&カウンターの...の画像はこちら >>
 ただし、今回は選手交代が11人まで認められた特別ルールの下で行なわれたことと、日本の決勝ゴールが決まったのはGK以外のフィールドプレーヤー10人が交代したあとの84分という時間帯だったことを考慮すれば、試合結果自体はそれほど大きな意味を持たない。

 W杯はもちろん、公式戦で適用される通常の交代ルールで行なわれた試合であれば、結果は違ったものになっていた可能性もあるからだ。

 その意味でも、この試合で注目すべきは、結果よりも試合内容になる。本番までに残された数少ない実戦の場で、チームとしての戦い方を再確認しながら、最終メンバーの選考も含めたテストをどこまで実行できたのか。とりわけ交代が7人を数えた62分までにどのようなパフォーマンスを見せたのかは重要で、それを念頭に試合を振り返ってみる。

【日本のプレスのかけ方】

 まず、この試合で森保一監督がチョイスしたスタメンは、明らかに中2日で行なわれる次のイングランド戦を意識した控え選手中心の編成で、直近のボリビア戦(昨年11月18日)同様、3-4-2-1の両ウイングバックには左にアタッカーの前田大然、右にDFの菅原由勢を配置。1トップには後藤啓介(キャップ2)、2シャドーに鈴木唯人(キャップ4)と佐野航大(キャップ1)と、代表経験の浅い選手を前線で起用した。

 小川航基、久保建英南野拓実を前線に配置したボリビア戦では、3-0で勝利を収めながら内容的に苦戦。前半途中から相手にペースを握られると、最終的にシュート数、ボール支配率、デュエルなどスタッツ面でボリビアを下回り、森保監督も「なかなか自分たちのコントロール下に置けないような試合」と試合後に振り返っている。

 しかし今回の試合では、控え選手中心で戦うなかでも同じ轍を踏むことはなかった。最大のポイントになっていたのが、日本の前からの守備、いわゆるプレスのハマり具合だ。

 基本布陣の4-2-3-1を採用したスコットランドに対し、日本は2シャドーが相手のセンターバックに、1トップの後藤が少し下がって相手のダブルボランチのひとりを消すと、ダブルボランチの田中碧と藤田譲瑠チマのどちらかが、もうひとりのボランチと相手の1トップ下をマーク。

両ウイングバックはそれぞれ対峙する相手サイドバックにプレスし、3バックの瀬古歩夢、渡辺剛、伊藤洋輝は、相手の左ウイング、1トップ、右ウイングにそれぞれつくことで、フィールド上の10人が完全にマンツーマンになるかたちで前からプレスを仕掛けた。

 相手が4-3-3だったボリビア戦でも同様の守備方法で試合に入ったが、前半途中から相手が4-2-3-1に変化するなどして日本のプレスを巧みに回避。中盤のマークがズレ始めたことで、日本が主導権を失った経緯がある。

【控え組でも組織的な守備を遂行できた】

 その点、今回の試合では4-2-3-1の相手に対しても、よりマンツーマンのかたちを明確にすることによって、ボリビア戦のようなズレが生じないように設定。もちろんスコットランドが何かしらのプレス回避策を実行していれば違ったかもしれないが、少なくとも前半は日本の前からのプレスが効果を発揮していたことは間違いない。それによって、ビルドアップに苦しむスコットランドがロングボールを蹴るシーンが目立ち、ほとんどそれを回収できた日本が試合をコントロールする展開で前半は推移した。

 GK鈴木彩艶のビッグセーブに救われたスコットランドの決定機(8分)を除けば、日本は危なげないゲーム運びを披露。それは前半のスタッツにも表われていて、シュート数では田中のシュートがバーに弾かれたシーン(38分)を含め、日本が前半だけで11本を記録したのに対し、スコットランドは2本のみ。ボール支配率でも上回った(日本=55%、スコットランド=45% ※sofascore調べ)。

 惜しむらくは、主導権を握り続けたなかでゴールを奪えなかったことだろう。この点については、アタッキングサードでのパスやシュートの精度を欠いたことが大きく、代表経験の浅い選手で編成された攻撃陣の個のクオリティには課題が残った。

 とはいえ、組織的な守備を遂行できていたこと、時間の経過とともにゴールチャンスを作れていたことなどを考えれば、前線3人のテスト結果は及第点以上と言える。また、ボランチの藤田も上々の出来で、こちらも今後に向けた収穫になった。

【選手交代で盛り返したが......】

 ただ、順調に見えたこの試合の日本だったが、W杯に出場するスコットランドがそのまま指をくわえていたわけではなかった。

 日本が3選手を交代した後半が始まると、前半はミドルゾーンからブロックを形成して守っていたスコットランドが守備方法を修正。4-2-3-1の両ウイングと1トップが前に出て、日本の3バックにプレスをかけるように変化すると、今度は日本がビルドアップで苦戦。48分、52分、55分と立て続けにシュートを記録するなど、一転、後半立ち上がりはスコットランドのペースになった。

 そんななか、日本ベンチは62分に4枚代えを断行。プランどおりの選手交代かもしれないが、おそらく戦況を見たうえでの、予定より早いタイミングでの決断だったと思われる。いずれにしても、その段階で日本は7人の選手を投入したことになる。

 しかも、途中出場する選手はイングランド戦での先発が予想される主力組。それに対し、ほぼベストメンバーで臨んだスコットランドは、63分、71分、81分と、3度の2枚代えによって主力から控え選手にシフトダウンした。それを考えれば、最終的に個のクオリティで上回る日本がゴールを奪ったのもロジカルな展開だった。

 もちろん、78分の3枚代えによって日本が3-1-4-1(3-5-2)に布陣変更したことも、試合結果に影響した。確かに鎌田大地を「1」に配置し、3バック以外はすべてアタッカーを並べたその采配は、どうしてもゴールが必要な戦況を想定した交代策と言える。

 しかし、公式戦のルールの下では実現不可能な策であったのも事実で、そういう意味では延長戦を除いて1試合の交代が5人に限定されるW杯本番で、その布陣が同じような効果を発揮するかは、この段階では未知数と見るのが妥当だろう。

【遅攻、クロスは少なくなっている】

 それよりも、本番を前に確認しておきたいのは、昨年9月からの強化試合で見え始めた攻撃における顕著な傾向だ。11月の2試合もそうだったが、この試合でもマイボールになってからフィニッシュに至るまでにかかった時間は、CKを除いて10秒以内が4本、10~15秒以内が5本。それ以外も、前半40分の佐野航大のシュートが19秒、そして決勝ゴールとなった秀逸な崩しも23秒と、すべてが速い攻撃から生まれたシュートだった。

 その結果、アタッキングサードでのくさびの縦パスは激減しており、この試合で前後半に各3本を記録した縦パスのうち、アタッキングサードでのパスは1本だけ。加えて、サイドからのクロスも減少傾向にあり、試合をコントロールしていた前半が6本、後半も7本のみに終わっている。特にこの試合では、サイドで出場した選手のキャラクターが影響し、左サイドからのクロスは13本中2本しかなかった。

 確かに日本にはスタミナのある選手が多く、ハイプレスからのカウンタースタイルは現代サッカーの主流ではあるが、90分間それを続けるのが極めて困難なことは想像に難くない。しかも、酷暑で行なわれる短期決戦のW杯で勝ち上がるためには、エネルギーの消耗を回避するための試合のコントロールという部分も極めて重要なポイントになる。

 果たして、日本はこの傾向を継続したまま本番に挑むのか。イングランドの多くの主力が戦線離脱したとはいえ、強豪イングランドとの試合ではその部分も注目ポイントになる。

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