スカウトが見た選抜2026の逸材~投手編
昨春の選抜を制した横浜の織田翔希、昨夏の甲子園を制した沖縄尚学の末吉良丞、そして昨春の選抜で最速152キロをマークし、夏はベスト4入りを果たした山梨学院の二刀流・菰田陽生(はるき)。今春の第98回選抜大会では、昨年から甲子園を沸かせてきた3人が顔を揃えた。
大会前は「BIG3」の競演と盛り上がったが、横浜と沖縄尚学はいずれも初戦敗退。さらに菰田も初戦で骨折し、2回戦以降は欠場になるなど、ドラフトの観点から見れば寂しい大会になった。そんななか、スカウトの目に留まった選手はいたのか。投手から紹介したい。
【初戦敗退の織田翔希と末吉良丞の評価】
まず現時点でドラフト1位の呼び声が高い織田と末吉だが、選抜でのピッチングはスカウトにどう映ったのか。
織田は初戦の神村学園戦、立ち上がりから調子が上がらず、7回2/3を投げて被安打7、奪三振5、失点2と、本来の力を発揮できず途中降板となった。
「ポテンシャルはとんでもない。彼の一番の武器は角度です。練習試合を見ましたが、ものすごい角度のある球を投げていました。神村学園戦は緊張なのか、気負ったのかわかりませんが、よくなかったですね。いい時の角度ではなかったから、バットに当てられていました。角度のある真っすぐさえ投げることができれば、変化球はカーブひとつでも抑えられる。それくらいの逸材です」(パ・リーグスカウトA氏)
「指にかかった時のストレートの出力、そして縦回転のスピンが効いた真っすぐは、ほかの高校生には見られないものだと思います。
「素材は抜群。もちろん1位候補です。肩まわりの柔らかさとリリースの強さは大きな魅力です。神村学園戦のように調子が悪いと、横振りでカット気味のリリースになってしまいますが、状態がいい時は、ゆったりとしたフォームでトップをつくり、一気に腕を振って投げることができる。あとは再現性だけだと思います。今回のピッチングで評価を落としたということは、まったくありません」(パ・リーグスカウトC氏)
「高校生としては完成度が高いですよね。真っすぐが強いし、腕が振れる。投げっぷりもいいですし、フォークとチェンジアップの投げ分けもできる。
「調子が上がっていないと聞いていましたが、思っていたよりはよかったですね。球の質も悪くありません。ただ、ストレートで押しきれるタイプの投手ではない。現時点ではチェンジアップやフォークの精度がカギになると思います。スライダーなどの変化球がもう一段よくなってくれば......。期待が大きいだけに、どうしても求めるレベルも高くなりますよね」(パ・リーグスカウトC氏)
「夏に比べて球速が落ちているので、本人もスピードを求めて力んで投げているように見える点が気になります。ただ、彼の最大の武器はスライダーですね。スピン量が多く、キレもある。もちろんストレートがあってこそのスライダーですが、真っすぐの状態がよければ、高校生レベルではまったく対応できないでしょう。プロでも左打者は打つのが難しいレベルだと思います」(セ・リーグスカウトB氏)
【スカウトが絶賛した2人のエース】
織田、末吉がスカウトの期待どおりの結果を残せなかった一方で、評価を大きく上げたのが智辯学園の左腕・杉本真滉(まひろ)だ。初戦で花巻東を完封するなど、準決勝までの35イニングで自責点はわずか1。スカウトのスピードガンでは最速148キロを計測し、一気にドラフト2、3位クラスへと評価を高めた。
「ややトルネード気味のフォームでインステップしますが、体が流れない。
「秋は制球に苦しんでいましたが、今大会ではその成長を最も感じさせた投手ですね。狙ったところに投げるコマンド力はまだ発展途上ですが、ストライクは取れる。爆発力もあり、伸びしろも大きい。2回戦では立ち上がりに失点しましたが、その後はカーブの割合を増やし、体を縦に使えるようになった。修正能力の高さも大きな魅力です」(セ・リーグスカウトD氏)
そしてもうひとり、今大会で評価を急上昇させたのが専大松戸の門倉昂大(こうた)だ。
「左が杉本くんなら、右は門倉くんでしょう。これまでノーマークでしたが、『こんなピッチャーがいたのか?』と驚かされました。ストレートはラインが出ていて力があり、スライダーも大きく曲がる。フォークもしっかり落ちますし、フォームのバランスもいいですね」(パ・リーグスカウトA氏)
「軸がしっかりしているので、でんでん太鼓のように腕が自然に振れる。力感がなくてもスピードが出ている印象ですし、本人も無理に球速を求めているわけではないでしょう。手元で伸びのある強いボールが投げられている。無駄な動きがなく、再現性も高い。理想的な投手だと思います」(セ・リーグスカウトB氏)
「大会前はリストに入っていなかったのですが......。手足が長く、スリークォーターから力のあるストレートを投げる投手です。スライダーもよく、打者にとっては非常に打ちづらいタイプですね。
【素材の高さをアピールした6人の投手】
4人以外で名前が挙がったのが、高川学園の木下瑛二。四死球に自らの失策、暴投などひとり相撲で初戦敗退に終わったが、ポテンシャルの高さを見せた。
「ボールが指にかかった時には、相手を圧倒できる力があります。最速147キロをマークしましたし、パワーカーブ系の縦スライダーもいい。チェンジアップにも抜けのよさがある。あとは、そのクオリティをいかに維持できるかという点でしょう」(セ・リーグスカウトB氏)
「ストレートの角度はそれほど感じませんでしたが、ボールの質のよさは伝わってきました。ただ、変化球のあとにストレートを引っかける場面が多かったのは気になります。フォーム自体は悪くないものの、再現性には課題がある。とはいえ、将来が楽しみな素材ではあります」(パ・リーグスカウトC氏)
八戸学院光星の大型右腕、187センチの北口晃大(あきひろ)も、本来の力を発揮したとはいかなかったものの、素材のよさは十分に示した。
「体のサイズはあるし、変化球の質もなかなかいい。横に膨らまないスライダーを投げられるのは大きな魅力ですね。高校生レベルであれば圧倒できる力はあると思います。
「素材としては非常におもしろい存在ですね。球速も145キロまで上がってきています。ただ、あの体格がありながら、技巧派のように変化球主体のピッチングをする。チェンジアップをストライクゾーンに集められることで抑えている印象です。上半身に硬さがあるので、そのあたりが課題になるでしょう」(セ・リーグスカウトD氏)
このほかにも名前が挙がった投手は多い。沖縄尚学の新垣有絃(ゆいと)については「バランスがよく、角度もある。体が細いので、ワンクッション置けば将来性は十分」(セ・リーグスカウトB氏)、英明の左腕・冨岡琥希(こうき)には「打ちとる術を知っている。ストレートはまだ発展途上だが、変化球のキレはある。大学に進めばさらに伸びそう」(パ・リーグスカウトA氏)と評価が集まった。
さらに、中京大中京の左腕・太田匠哉(たくや)には「体を縦に使えるため、縦に曲がるスライダーを投げられる」(セ・リーグスカウトD氏)、花咲徳栄の黒川凌大についても「スライダーのキレが最大の武器。制球も安定しており、大崩れしない。きっかけひとつで大きく化ける可能性がある」(パ・リーグスカウトC氏)といった声が聞かれた。
情報があふれる現代にあっても、大会前はノーマークだった門倉のような投手が現れるのが高校野球の面白さであり、魅力でもある。名前が挙がった選手も、そうでなかった選手も、期待どおりの結果を残した者も、そうでなかった者も、夏に向けてどのような成長を遂げるのか楽しみにしたい。
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