スカウトが見た選抜2026の逸材~野手編

投手編:織田翔希、末吉良丞の現在地と急浮上した投手ふたりの衝撃評価はこちら>>

 期待どおりの活躍こそ見られなかったものの、ドラフト1位候補の横浜・織田翔希、沖縄尚学・末吉良丞らを擁した投手陣と比べると、野手は人材不足の印象が否めなかった。スカウト陣からはため息も漏れ、対象となる選手を探すのに苦労したほど。

そのため本来は投手ながら、今回は打者として評価した選手もいることをご了承いただきたい。

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【特大弾を放った菰田陽生】

 そんななか、唯一ドラフト1位候補といえるのが山梨学院の菰田陽生(はるき)だ。194センチ、102キロという堂々とした体格を誇り、MLBのスカウトからも注目を集める逸材である。昨春の選抜では最速152キロをマークし、投手としての魅力も高い。

 しかし今大会は、初戦の長崎日大戦で左手首を骨折。以降は試合に出場することなく、大会を終えた。それでも初打席では、初球のカーブをレフトスタンド中段へ運ぶ一発を放ち、大物の片鱗を見せつけた。

「これまでは投手一本で評価してきたので、投手としての姿を見たかったですね。現状では、速球への対応や守備面には厳しさがある。コンタクト率自体は悪くありませんが、ヒットになっているのは半速球が中心です。ただ、ホームランの飛距離は際立っていました。打球がなかなか落ちてこないほどでしたし、低反発バットであれだけの打球を飛ばせる選手はそういないと思います」(パ・リーグスカウトA氏)

「正直なところ、投手として評価しています。ただ、夏の甲子園でヒジを痛めて以降、150キロ台のボールを見ていないので、不安はあります。

打撃については、始動が遅くトップまでに時間がかかるため、速球には苦労しそうです。ただ、あのホームランはまさにアーチストの打球。追い込まれてバスターに切り替える場面もありますが、小さくまとまらず、思いきりのいい打撃を続けてほしいですね」(セ・リーグスカウトB氏)

「力のあるボールへの対応には課題が残りますが、スイングはコンパクトで、一定のミート力も備えています。初球のカーブを一発で仕留めた点は高く評価できますね。動きも決して鈍くないので、どこかのポジションは守れそうです。体格にも恵まれているだけに、プロでも二刀流に挑戦させてみる価値はあると思います」(パ・リーグスカウトC氏)

「投打ともに魅力がありますが、私は打者として評価しています。理由は希少価値の高さです。あのサイズの投手は増えてきていますが、大型スラッガーは数が少なく、なかなか出てこない。そういう意味でも打者ですね。打撃フォームも悪くありませんし、あのホームランは放物線を描くアーチストの打球でした。守備位置の問題や、気迫・積極性にやや欠ける面はありますが、それらを補って余りある素材だと思います」(セ・リーグスカウトD氏)

【高校野球】人材不足の野手陣 それでも選抜視察のスカウトから名前が挙がった11人の強打者、好打者たち
横浜の遊撃手・池田聖摩 photo by Ryuki Matsuhashi

【下級生から活躍する選手たちの評価は?】

 菰田についてのコメントは次々と飛び出したスカウトたちも、菰田以外の野手となると、途端に口は重くなる。そんななかで二番手として名前が挙がったのが、菰田と同様に下級生の頃から甲子園を経験し、知名度のある横浜の池田聖摩だ。

「肩は強いですし、フットワークも悪くない。

ただ、これといった武器がないのが現状です。がむしゃらにプレーしている姿勢は伝わってきますが......」(パ・リーグスカウトA氏)

「二遊間を守れる選手は価値があります。ただ、攻守ともに決め手を欠くというのが正直な印象です。ショートを守れてこそ価値が高まるタイプだと思いますが、プロでショートをまかせられるかとなると、そこはどうかな......という評価ですね」(セ・リーグスカウトB氏)

「肩は強く、送球にも力があります。足もまずまず。一方で、打撃はどうかという印象ですね。ただし打撃はプロ入り後に伸びるケースもありますから、すぐにプロというよりは、ワンクッション置いて育ててもいいのかなという評価です」(パ・リーグスカウトC氏)

 同じく下級生の頃から主力として出場し、大会前から注目を集めていたのは花巻東の古城大翔と赤間史弥だ。しかし、智辯学園の杉本真滉(まひろ)の前に無安打に終わり、見せ場をつくることはできなかった。

「木製バットを使っていて、スイングの強さは感じます。ただ、全国のトップレベルの投手と対戦した時に、まだ自分たちのスイングをさせてもらえない。もちろん素材としては一級品ですが、今後は対応力が課題になってきます」(セ・リーグスカウトB氏)

「ふたりともスイング自体は悪くないと思いますが、好投手が相手になると差し込まれてしまう。打撃は相手に対応することが重要だという点を、もう一度学んでほしいですね」(パ・リーグスカウトC氏)

 ともに大学進学が見込まれており、この先の4年間でどのような成長を遂げるかが注目される。

むしろ、花巻東でバッティングの評価を高めたのは、エース左腕の萬谷堅心(まんや・けんしん)だった

「花巻東のなかで最も打撃センスがあるのは彼でしょう。投手からすると一番嫌な打者ですね。投手としても制球力があり、スライダーのキレもいい。大学に進んで球速が伸びてくれば、上位候補に浮上する可能性は十分にあると思います」(パ・リーグスカウトA氏)

【高校野球】人材不足の野手陣 それでも選抜視察のスカウトから名前が挙がった11人の強打者、好打者たち
智辯学園の1番打者としてチームを牽引した角谷哲人 photo by Ryuki Matsuhashi

【チームの快進撃を支えた打てる捕手】

 人材難とされた打者陣のなかでは、好捕手は揃っていた印象だ。そのなかで、主将であり1番打者として智辯学園を牽引した角谷哲人は、総合力が高く評価された。

「捕球してからスローイングまでの一連の動きが素早く、高校生としては完成度の高いキャッチャーです。走攻守いずれも平均以上ですが、どちらかといえば攻撃型の捕手ですね。打てる捕手は希少価値が高く、需要もあります」(セ・リーグスカウトB氏)

 専大松戸の4番・捕手を務める吉岡伸太朗は、180センチ、95キロの恵まれた体格を誇る大型捕手だ。

「引っ張った打球には強さがありますね。ただ、足首や股関節に硬さがあり、ワンバウンドの処理やスローイングにまだ課題があります。今後は打撃を生かすという感じになるのではないでしょうか」(セ・リーグスカウトD氏)

 このほかに名前が挙がったのは、「肩がいいし、サイズもある。一生懸命だし、打席の雰囲気もある。

鍛えたい選手ですね」(パ・リーグスカウトA氏)という神村学園の梶山侑孔(ゆうしん)、「走り方がよく、身体能力の高さを感じた」(セ・リーグスカウトD氏)という東北の進藤翔愛(しょうあ)、「レベルスイングができ、強い打球を打てる」(パ・リーグスカウトC氏)という滋賀学園の吉森爽心、「ヘッドスピードがあり、すばらしいスイングをする」(セ・リーグスカウトB氏)という大垣日大の竹岡大貴らだ。

 低反発バットの時代となり、パワーだけでは通用しない、ごまかしの利かない環境になっている。夏までに実戦経験を積み、この状況を打ち破るような打者が現れることに期待したい。

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