安藤勝己選定「3歳牝馬番付」(前編)

 春のクラシックがいよいよ開幕する。まずは、牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(阪神・芝1600m)が4月12日に行なわれるが、今年の3歳牝馬戦線は例年にも増して大混戦だ。

 その理由のひとつは、注目の2歳重賞などを制した馬たちが次々に戦線離脱。2歳GIの阪神ジュベナイルフィリーズ(以下、阪神JF。12月14日/阪神・芝1600m)でも1番人気馬が馬券圏外に沈む、波乱の決着となったことが挙げられる。

 さらに、年が明けてからの重賞、GⅢフェアリーS(1月11日/中山・芝1600m)、GⅢクイーンC(2月14日/東京・芝1600m)でも1番人気が敗退。GⅡチューリップ賞(3月1日/阪神・芝1600m)、GⅡフィリーズレビュー(3月7日/阪神・芝1400m)、リステッド競走のアネモネS(3月14日/中山・芝1600m)と、桜花賞トライアルでもことごとく1番人気が苦杯を舐め、稀に見る混戦模様となっている。

 こうなると、第2弾のGIオークス(5月24日/東京・芝2400m)を含め、牝馬クラシックの行方はまったく予想がつかない。ということで、今年も競走馬の分析に長けた安藤勝己氏を直撃。牝馬クラシックの行方を占うとともに、安藤氏独自の視点による3歳牝馬の番付を選定してもらった――。

安藤勝己厳選の「3歳牝馬番付」 勝ち負けのチャンスがある馬が...の画像はこちら >>
 ここ数年の牝馬クラシック戦線は常に混戦状態にあるが、今年はそんな状態に一段と拍車がかかっている。ずば抜けた存在がおらず、出走メンバーに名を連ねた馬であれば、どの馬にもチャンスがあるのではないだろうか。

 だからといって、全体のレベルが低いわけではない。トライアルをはじめ、注目の重賞レースの勝ち時計が優秀であることからも、それはよくわかる。

 いずれにしても、勝ち負けに加わることができそうな馬が何頭もいて、難解なクラシックであることは間違いないだろう。

前頭筆頭:ディアダイヤモンド(牝3歳)
(父サートゥルナーリア/戦績:4戦2勝、3着1回、着外1回)

 アネモネSは本番の桜花賞との関連が薄いトライアルとされるが、チューリップ賞、フィリーズレビューを含めたトライアル戦の勝ち馬のなかでは、最も強い競馬を見せたのがこの馬。相手に恵まれた面もあるかもしれないが、2着に3馬身差の完勝だった。

 勝ち時計も1分32秒台と優秀。好位で折り合って、最後は豪快な末脚を見せて快勝。この内容は十分に評価できると思う。

 2走前のGⅢシンザン記念(1月12日/京都・芝1600m)では9着と惨敗を喫しているが、その前の未勝利戦(7月27日/新潟・芝1600m)では好スタートから先手を奪って後続に7馬身差をつけて圧勝。直線ではほとんど追うところがなかったが、いい脚を使って突き抜けた。

 現時点では全幅の信頼を置くまでにはいかないが、この先、馬自体がもっとよくなってくれば、有力勢をひと泡吹かせるシーンがあってもおかしくない。ダークホースと言える1頭ではないだろうか。

小結:アランカール(牝3歳)
(父エピファネイア/戦績:4戦2勝、3着1回、着外1回)

 新馬戦(7月5日/福島・芝1800m)、オープン特別の野路菊S(9月20日/阪神・芝1600m)と、強烈な末脚を駆使してデビュー2連勝を飾ったときは、この馬の素質が世代トップだと思っていた。

 それが、断然の1番人気に支持された阪神JFでは5着。

かなり残念な結果だった。

 それにしても、阪神JFの競馬は中途半端というか、さっぱりだった。スタートしていきなり最後方に下げて、3コーナーあたりから早めに動いていった。あれでは、力が二枚ぐらい違っていなければ勝負にならない。

 ただそれでも、最後は止まらずに掲示板を確保。馬自体の能力の高さは示した、と言えるかもしれない。

 その後、巻き返しが期待されたチューリップ賞では武豊騎手が騎乗。終(しま)いを生かす正攻法の競馬をしたが、伸びきれずに3着に終わった。あくまでもトライアルの結果、という見方もできるが、あの結果からして信頼回復までには至らない。能力的に番付から外すことはできなかったが、桜花賞、オークスでどこまでやれるだろうか......。

関脇:ギャラボーグ(牝3歳)
(父ロードカナロア/戦績:4戦1勝、2着2回、着外1回)

 未勝利勝ちを決めたあと、阪神JFに果敢に挑戦。勝ったスターアニス(牝3歳)からコンマ2秒差の2着と好走して、クラシックの有力候補に名乗りを上げた。

実際、阪神JF3着のタイセイボーグがチューリップ賞を快勝し、この馬も世代トップレベルの1頭として評価できる。

 阪神JFで2着に屈したのは、スターアニスとの"キレ味"の差。ギャラボーグも確かな末脚を持っているが、スターアニスのほうがスパッとキレる脚を使える。その分、阪神JFでは距離適性の差でスターアニスに軍配が上がったと言える。

 無論、能力的には差がない。先にも触れたとおり、ギャラボーグはスパッとキレなくても、ジワジワと伸びて長くいい脚を使える。桜花賞は何とも言えないが、オークスでは逆転可能だろう。

 馬体重も500kg前後と立派。将来性を感じさせる。が、前走のクイーンCでは9着と振るわなかった。

 その敗因が何なのか。どこか、弱いところを抱えているのだろうか。

そういった点で不安があり、「関脇」という評価にとどめた。

(つづく)◆安藤勝己の「3歳牝馬番付」 稀に見る大混戦のなか「大関」「横綱」に選定したのは?>>

安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

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