【大学駅伝】駒澤大・藤田敦史監督が語る新チームの現在地 明る...の画像はこちら >>

前編:駒澤大が迎える2026年度シーズン

今年の箱根駅伝では総合6位に終わり、箱根優勝経験者すべてが卒業。新年度も万全の状態でスタートを切っているわけではない。

しかし、駒澤大の指揮官として4年目を迎えた藤田敦史監督はそんな状況を冷静に捉えつつ、選手個々の状態を把握しながらシーズンを通しての青写真を描いている。

果たして新生・駒大はどのような道を歩んでいくのか。まずは現状について、藤田監督の取材コメントを中心に紐解いてみる。

【桑田駿介がNYハーフで好走も......】

 新年度を迎えて、今年の大学駅伝界の戦力図が少しずつ見えてきた。

 そんななか、やや不透明なのが今年の箱根駅伝で優勝候補の一角に挙げられながらも6位に終わった駒澤大だ。

 箱根駅伝でエース区間の2区に抜擢され区間8位と好走した桑田駿介(3年)が、3月のニューヨークシティ・ハーフマラソンで日本人学生歴代3位となる1時間00分13秒の好記録をマークするビッグニュースもあった。また、4月4日の世田谷競技会5000mでは、牟田凜太(2年)が13分49秒16、植阪嶺児(4年)が13分49秒34の自己記録をマークするなど明るい話題はある。

 だが、全体を俯瞰すれば、主力の足並みがなかなか揃わないまま新シーズンを迎えた。

 4月5日に行なわれた関東インカレ(2部)ハーフマラソンには新谷倖生(4年)と牟田颯太(2年)が出場し、ふたりは序盤から積極的にレースを進めたが、後半に順位を落とし新谷は7位、牟田颯太は35位に終わった。

「レースを読む力がなさすぎました。山口(翔輝)君(創価大3年、優勝)みたいに力があって突っ込んでも持ち堪えるレースができるなら、それは理想ですけど。インカレは順番が大事なので、それを考えないといけなかった。(前半は)集団で息を潜めて、後半の勝負所で出なさいと言っていたんですけど。

蓋を開けたら、序盤からいっていた。他のチームの選手がいっていたからでしょうけど......。新谷は入賞で収めたからまだ粘ったかなと思いますけど、頭を使ったレースができるようにならないと、なかなか難しいですね」

 この結果に、レースを振り返る藤田敦史監督の口調は厳しかった。

 もっともスタートラインに立つべき選手が立てなかったという実情もあった。藤田監督の構想では、新谷と、2月1日の日本学生ハーフマラソン(香川丸亀国際ハーフと併催)で1時間1分台をマークした菅谷希弥(3年)と安原海晴(4年)を出場させるはずだった。

「この3人がちゃんと上がってこないといけない。3人に関東インカレは勝負させようと思っていたのですが、菅谷も安原も丸亀が終わってからキリッとしませんでした。関東インカレはチームの代表として走るレースです。走りたくても走れない選手がいるのに、自分が主力だからやらなければいけないっていう自覚がやっぱりまだない。そこを変えていかなければ」

 藤田監督は主力選手に自覚を促すとともに危機感を募らせていた。

 懸念材料は、ほかにもある。

 ひとつは桑田とともに1年時から主力を担ってきた谷中晴(3年)の状態だ。

ハーフマラソン1時間00分57秒、5000m13分49秒71の自己記録を持ちエースとしての活躍が期待される選手だが、なかなか継続した練習ができずにいる。

 今年の箱根駅伝のあとは順調に練習をこなしていたものの、シーズンインを前に背中に痛みが出て、当初出場を予定していた4月頭の世田谷競技会は出場を見送った。

「谷中は体が強くないので、練習をやったらやったぶんだけダメージを受けてしまう。下級生の頃と比べれば、だいぶ良くなりましたけどね」

 谷中が出遅れるのは今年に限ったことではない。昨年度は出雲、全日本、箱根と三大駅伝すべてに出場し、都道府県駅伝も福島県チームの一員として走っているが、その一方で、トラックシーズンは出番がなかった。過去2年間で谷中がトラックレースに出場したのは1年時の10月の出雲市陸協記録会5000mだけで、10000mのレースは高校時代にまで遡らなければならない。

「谷中は痛みがあっても、練習をやってしまうんです。だから、その前にやめさせないといけないので、練習が終わったあとは『大丈夫か?』って毎回聞いていますね」

 練習をやりすぎてしまうのは、強くなりたいという思いが強いゆえだろう。指揮官も慎重を期して指導に当たってきたが、それでも今季も出遅れてしまった。とはいえ、ポテンシャルの高さは誰もが認める。スロースタートでも、ケガが癒えた時には爆発力のある走りを見せてくれるはずだ。

【主将・村上響を筆頭に奮起が期待される4年生】

 もうひとり、なかなか戦線に戻れずにいるのが、今季の主将を務める村上響(4年)だ。

 村上は今年の箱根では往路の4区をまかされたが、レース中に右足首を痛めてしまい、区間19位と振るわなかった。

「10kmまでは想定どおりのペースでした。後ろから鈴木琉胤君(早大)と辻原輝君(國學院大)が来ていて、鈴木君に追いつかれた時も、辻原君に追いつかれた時も、ついていくのかなと思ってみていたらつかないので、これは何かあったなと。そしたら、急にペースが(1km)3分10秒まで落ちてしまって、ああ、これはやばいなって思いました。でも、よく襷をつないだと思います」(藤田監督)

 この時のケガが癒えるのに、思いのほか時間を要した。というよりも、「中途半端な状態で練習を再開しても仕方ないので、時間をかけさせました」と藤田監督が言うように、逸る気持ちを抑えて完全回復に努めさせた。

 競技会で藤田監督に会うたびに村上の状態を尋ねたが、3月上旬の時点では「ようやくジョグをできるようになってきた」だったのが、3月21日には「ジョグより少し進んだ練習ができるようになってきた」と一歩前進。4月に入ってからもまだまだ「復帰段階」という。

 藤田監督が主将に寄せる期待が大きいのも確かだ。

「自分が走れていないという引け目があって、チームを引っ張りきれていないところもあると思う。村上が走れるようになってくると、またチームの雰囲気は変わるんじゃないかなと思っています」

 主将の村上が戦線に復帰し、キャプテンシーを見せ始めた時、チーム状況も上向いてくることを期待している。

 また、村上だけでなく、4年生全体に対しても奮起を促す。

「(昨季の)4年生が抜けても、まだ自覚が見えない感じがしますね。まだ引っ張ってもらえるんじゃないかっていう感覚が残っているというか、このなかの誰が引っ張るんだ? っていうのが見えてこない。それはミーティングでも言っています。

 彼らも一生懸命やっているとは思いますけど、4年生がもっと引っ張っていく姿勢を見せないといけない。そういう姿勢がどうやって出てくるか......。新入生が入ってきたので、これから少し変わってくるとは思いますけど」

 今春、佐藤圭汰、伊藤蒼唯、山川拓馬、帰山侑大ら主力を担ってきた強力な世代が卒業した。その穴を埋めるのが簡単ではないのは当然のことだが、4年生が本領を見せ始めた時、このチームは見違えるのだろう。

 思い返せば、近年は毎年のように危機感を抱えながら新年度を迎えていた。それがひと夏を越えると、見違えるように戦う集団へと変貌を遂げてきた。今季のチームもまた、そうなる見込みは十分にある。

後編につづく:藤田敦史監督が覚悟を持って臨む新シーズン 「別格」の強さを見せる桑田駿介と頼もしい新入生たち」

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