【大学駅伝】駒澤大・藤田敦史監督が覚悟を持って臨む新シーズン...の画像はこちら >>

後編:駒澤大が迎える2026年度シーズン

学生長距離界で再び高みを目指す駒澤大は、主力の足並みが揃わない状況で2026年度シーズンのスタートを切った。藤田敦史監督は現状に危機感を募らせながらも、海外のハーフでエースらしい走りを見せた3年生エース、そして頼もしい新入生たちの成長に手応えを感じている。


自身が勧誘した選手が全学年に揃って臨む初めてのシーズン、藤田監督はどのような采配を見せるのか。

前編〉〉〉「藤田敦史監督が語る現在地 明るい材料と主力の足並みが揃わぬ危機感の狭間で」

【「別格」クラスの存在感を放つ桑田駿介】

 ポジティブな側面に目を向ければ、やはり桑田駿介(3年)の成長が大きい。

 今年の箱根駅伝で急遽エース区間の2区をまかされた桑田は1時間06分19秒の好記録で区間8位と踏ん張り、田澤廉(現・トヨタ自動車)が持つ2区の駒澤大記録にもあと6秒と肉薄した。

 藤田監督もこう話す。

「やっぱり自信になったと思います。自信がついてきたから、いろんなことに臆せずに向かっていくことができている」

 そして、3月のニューヨークシティ・ハーフマラソンでは起伏のあるコースで6位までが59分台という高速レースを経験。59分台には届かなかったものの、パリ五輪10000m銅メダリストのグラント・フィッシャーにも先着し、日本歴代6位、日本人学生歴代3位となる1時間00分13秒の好タイムで10位と踏ん張った。

 桑田のニューヨークシティハーフの5kmごとの通過タイムは以下のとおりだった。

 5km13分58秒
 10km27分57秒(13分59秒)
 15km42分24秒(14分27秒)
 20km57分03秒(14分39秒)

 後半はさすがにペースダウンしたものの、10kmの通過タイムは桑田の10000mの自己記録(28分12秒02)よりも速かった。

「桑田本人も『最後は置いていかれましたけど、揺さぶりに対応できるようになったので、だいぶ自信になりました』と話していました。10km通過も27分台だったので、『トラックでも27分台を出せるイメージが湧いてきた』って言っていました。これからトラックが楽しみです」

 ハーフマラソンの日本歴代上位記録は、コースが平坦で高速レースで知られる香川丸亀国際ハーフマラソンで出されたものが多い。男子の上位5位までは同大会の記録が占めている。

そこに割って入って歴代6位にランクインしたのだから、その価値はいっそう大きい。

「桑田は強いですよ。ニューヨークシティハーフは、昔は下りのコースだったのが、今は上りのコースに変わりました。それであのタイムですからね。まして、ペースの上げ下げが大きく、揺さぶりがある中でのレースですから」と藤田監督も高く評価している。

 昨季の桑田は出雲駅伝で3区9位と振るわず、全日本大学駅伝は出場することもできなかった。そんなどん底から這い上がり、箱根駅伝、ニューヨークシティハーフと快走を連発。苦しい時期がありながらも、順当に成長を見せ、大八木弘明総監督が率いるプロジェクトGgoat(ジーゴート)にも、練習生から昇格し今季から正式に加入した。

「桑田はもう別格みたいな感覚がある」と藤田監督が言うように、チーム内でも突出した存在になりつつあるが、桑田の背中を追いかける選手が出てくれば、チームはなおのこと活性化するはずだ。

【5000m13分台4人の新入生たち】

【大学駅伝】駒澤大・藤田敦史監督が覚悟を持って臨む新シーズン 「別格」の強さを見せる桑田駿介と頼もしい新入生たち
今季の駒大ルーキーの中で5000m最速タイムを持つ土間董哉 photo by Satoshi Wada

 今季は力のあるルーキーも多数加わった。

「新入生は面白いですよ。今はまだ段階を踏んで練習に取り組んでいる状況ですが、それでも先日の練習では3000m8分一ケタで簡単に走っていましたから。

能力は高いです。あとはどこまで練習が積めるかでしょうね。

 上級生と同じ練習ができるようになってきたら、みんな負かされてしまいますね。出雲、全日本の距離が短い区間だったら新入生でも走ると思いますけど、やっぱり箱根になったら上級生が頑張らないといけません」

 ルーキーズの存在は上級生の発奮材料にもなりそうだ。

 今季の新入生のうち、5000m13分台は4人を数える。

 その筆頭、13分39秒13を持つ土間董哉(広島・世羅高出身)は、昨季の駅伝では振るわなかったが、国民スポーツ大会では5000mで8位入賞している。

 勝負強さが光るのは、13分46秒10が自己ベストの鈴木大翔(宮城・仙台育英高)だ。いずれも5000mでインターハイ5位、U 20日本選手権2位とトラックでも実績を残しながらも、全国高校駅伝では3区3位、都道府県男子駅伝では1区で区間新記録を打ち立てて増子陽太(福島・学法石川高→早大)に競り勝って区間賞を獲得し、宮城県チームの優勝に貢献した。

 13分48秒83の今村仁(佐賀・鳥栖工高出身)は、インターハイに1500mと5000mの2種目で出場。国民スポーツ大会は5000mで5位だった。2月の唐津10マイルロードでは10kmロードで29分07秒の好記録で優勝を飾っており、マルチな活躍が期待できる。

 13分55秒61の池谷陸斗(東京・駒大高出身)は、秋以降一気に力をつけて13分台を複数回マークしている。

 3000m障害でインターハイ7位、U 20日本選手権3位と実績のある岸本莞爾(長野・長野日大高出身)は、標高の高い山を駆け上がるスカイランニングという競技でも活躍。2023年のユーススカイランニング世界選手権で銀メダルを獲得している。となれば、いやがうえにも、山上り候補として期待したくなる。

 また、後藤颯星(山形・酒田南高出身)は、5000m14分13秒97ながら即戦力候補だ。

「強い選手たちが入ってきましたが、すぐに出てきそうな選手と、ちょっと時間がかかりそうな選手とに分かれますね。体力がある子とない子との差がすごくあります。3月中旬に新入生の合宿を行なったのですが、後藤や池谷、今村はすぐに出てきそうですね。鈴木と土間は、この1年は体力づくりっていう感じになるかもしれないですね」

 トラックシーズン、そして夏合宿を経て、彼らはどう変貌を遂げるか。いずれにせよ、駅伝シーズンに絡んでくる1年生も出てくるだろう。

 今季は、藤田監督が就任して4年目のシーズンとなる。つまりは、「ちょうど私が監督になった年の1年生が今の4年生で、4学年が揃います」と言うように、4学年すべてが藤田体制になってからの選手になる。その一方で、箱根駅伝の総合優勝を経験した学生も皆、卒業してしまった。

「この3年間は(大八木弘明)総監督が築いてきたものを頼りにしながら指導に当たってきましたが、これからは自分が勧誘してきた選手たちを育てて、その力で戦っていかないといけない。ある意味、自分の真価が問われる。ここからが本当の勝負かなと思っています」

 指揮官にとっても、覚悟を持って臨むシーズンになる。

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