世界選手権3冠のファンデルワウがガールズケイリン選手を「すご...の画像はこちら >>
 昨年の世界選手権でスプリント、チームスプリント、1kmタイムトライアルの3冠に輝いたオランダのヘティ・ファンデルワウ。自転車競技世界一を表すジャージ「アルカンシェル」を身にまとう彼女は今、6月から約3カ月間、全国各地の競輪場で開催されている「競輪ワールドシリーズ2026」に参戦している。
ファンデルワウが初出場した6月末の開催では3日間1着の完全優勝を達成し、その後の開催でも好成績を連発。そして7月27日(月)からの開催では、昨年の世界選手権のケイリンで優勝した佐藤水菜(神奈川・114期)との対戦も待っている。今回の来日参戦について「とても幸せ」とうれしそうに語るファンデルワウに、日本の競輪の印象や佐藤水菜の存在などについて話を聞いた。

【日本の競輪にも順応】

――今回の競輪ワールドシリーズへの参戦は、JKAからの招待状(メール)が最初の知らせだったと伺いました。それを受け取った時にはどんなお気持ちでしたか。

 とても幸せでした。以前に参戦していたオランダ人選手のテオ・ボス(通算8回参戦)やロリーヌ・ファンリーセン(通算3回参戦)から日本の競輪のことを聞いていて、すごくいい印象を持っていました。今年からまた再開することを聞いていたので、ほかの選手たちと「一緒に招待されたらいいね」と話していました。

――今回が初来日ということですが、6月26日から小倉競輪場で行なわれた競輪ワールドシリーズでいきなり完全優勝を果たすなど、好成績を残しています。日本の競輪について当初想像していたこととの違いはありましたか。

 とくに違いはないです。もちろん国際大会で使う自転車とは違いますので、ペダルやハンドルの違いはありますが、だいたいのことはもう慣れました。

――ここまでで特に印象に残っているレースはありますか。

 小倉での優勝は私にとっての最初の開催でもありましたので、どんなことが起こるのかなと思っていた部分もありました。3日目の決勝では(エレセ)アンドルーズ選手との対戦もありましたので、すごく印象に残っています。


世界選手権3冠のファンデルワウがガールズケイリン選手を「すごく尊敬できる」と称賛 絶対女王・佐藤水菜の存在も語る
競輪ワールドシリーズ2026に出場中の6選手。左からジョセフ トゥルーマン、マシュー リチャードソン、ハリー ラブレイセン、エレセ アンドルーズ、ヘティ ファンデルワウ、マチルド グロ
――女性では、エレセ アンドルーズ選手(ニュージーランド)とマチルド グロ選手(フランス)がこの競輪ワールドシリーズに参戦しています。それぞれどんなレーサーでしょうか。

 ふたりとも似たタイプで、ともにロングスプリントができる強い選手ですね。

――彼女たちと3人で京都に行くなど、行動をともにすることもありますが、レース以外ではどんな選手たちですか。

 ふたりとも人間性がすごくいいですし、とてもかわいいです。これまで国際大会で顔を合わせていたので、お互いに面識はありましたが、こうして一緒に食事をしたり観光地に行ったりして、時間を共有してみると、すごくいい人たちだなとあらためて感じました。

【世界女王同士が激突】

――7月27日から立川競輪場で行なわれる競輪ワールドシリーズでは、2024年と2025年の世界選手権のケイリンで連覇している佐藤水菜選手が出場します。昨年の世界選手権のスプリント決勝では彼女に勝っていますが、ケイリンの準決勝では佐藤選手に敗れています。彼女にはどんな印象を持っていますか。

 おっしゃるとおり、彼女はケイリンの世界チャンピオンでとても強い選手ですし、世界的に見ても尊敬されている選手だと思います。日本は彼女の本拠地でもありますので、立川ではすごく難しいレースになると思っています。

世界選手権3冠のファンデルワウがガールズケイリン選手を「すごく尊敬できる」と称賛 絶対女王・佐藤水菜の存在も語る
2025年の世界選手権のスプリントで優勝したファンデルワウ(中央)。決勝での一騎打ちで佐藤水菜(左)に競り勝った
――ここまでの開催でガールズケイリンの選手たちとも交流していますが、どんな印象を持ちましたか。

 すごくいい人たちだし、優しい人が多いですよね。だから会えてすごくうれしいです。実際に話をして、日本の選手を深く知れたことはとてもよかったです。なかでも、出産をして子育てのためにレースを離れていたという選手が、レースに出場していたのには驚きましたし、とても尊敬できました。

――ガールズケイリンの選手のなかには、「ファンデルワウ選手はすごく大きくて、一緒に走るのがいろんな意味で怖かった」と言う選手もいました。

 私は背が高いですからね(笑)。でも怖くはないですよ(笑)。

――すでにいくつかの競輪場でのレースを経験していますが、日本の競輪の環境についてはどのような印象を持ちましたか。

 本当に競輪場がたくさんありますよね。ほかの国ではここまで環境は整っていませんので、その面でもすごくいいと思っています。それから競輪選手もたくさんいますし、日本競輪選手養成所にも候補生がたくさんいるので、日本のナショナルチームのコーチたちは、才能を見つけ出すのが簡単なのではないかと思いますね(笑)。

世界選手権3冠のファンデルワウがガールズケイリン選手を「すごく尊敬できる」と称賛 絶対女王・佐藤水菜の存在も語る
日本の競輪用の自転車にも慣れ、好成績を連発するファンデルワウ

【不遇を乗り越え世界一に】

――ファンデルワウ選手は国際大会に出場し始めた当初は結果を出せず、不遇の時期を過ごしていました。ただ、今は世界選手権での3冠、そして1kmタイムトライアルの世界記録保持者でもあります。どんな思いを持ってここまで上り詰めたのでしょうか。

 私は19~20歳くらいの時に両親が離婚して悲しい時期を過ごしましたし、競技面でも辛い時期でした。というのも、当時のコーチから「体重を落とせ」と言われたんですが、それが原因でスプリンターとして必要なエネルギーを摂れず、同時に成績も下がってしまいました。それにより自分の技術に満足することができず、自分にいい印象も持てませんでした。だから東京オリンピックに選ばれることができませんでした。

 そこからは次のパリオリンピックに向けて、ひたすらトレーニングに励みました。その結果、少しずつ成績がよくなってきて、今度こそチャンスがあると確信できる状態までいけました。そしてパリオリンピックではケイリンで銀メダル、スプリントとチームスプリントで4位になることができました。

――ここまでの道のりを伺うと、とても精神的な強さを感じますが、ご自身ではどんな性格だと分析していますか。

 基本的にポジティブな性格だと思っています。

ときどきストレスを感じることもありますが、前向きに考えたほうが気分も上がりますので、そう考えるようにしています。(20代前半の)調子が悪かった時は周りの環境がよくありませんでしたが、環境が整えば頑張れると思っています。

――今着ているのが、世界一の証であるアルカンシェルですが、それを着用するとどんなお気持ちになりますか。

 これを着ると、周りから世界チャンピオンだと思われているのは感じますし、自分が着ていていいのかなと思うこともありますね。こうして話す機会があると、自分は3種目で世界チャンピオンになったんだなと気づきますし、どうしてなれたんだろうと思うこともあります。今は周りも強くて競争も激しいから、自分にプレッシャーをかけないようにしようとは心がけています。

世界選手権3冠のファンデルワウがガールズケイリン選手を「すごく尊敬できる」と称賛 絶対女王・佐藤水菜の存在も語る
フランス語で虹を意味する「アルカンシェル」を着るファンデルワウ。女王でありながら謙虚さを崩さず、笑顔で受け答えする姿が印象的 photo by Hiroshi Gunki
――世界チャンピオンとして、今、競輪ワールドシリーズに臨んでいますが、このあとに続く開催ではどんなレースを披露したいですか。

 もちろんすべて勝ちたいです。強い姿を見せるのは当然ですが、技術的にも高いレベルのレースをしたいですね。

――最後に日本の競輪ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

 いつも競輪場に見に来てくれてありがとうございます。日本の選手たちに比べたらまだ自分たちの印象はそれほどないと思いますが、スタンドで自分の名前を掲げてくれている人がいたり、名前を叫んでくれたりする人がいるのは、本当にうれしいです。

これからも応援をよろしくお願いします。

【Profile】
ヘティ ファンデルワウ(Hetty van de Wouw)
1998年5月29日生まれ、オランダ出身。幼少期からスポーツに励み、体操、スピードスケート、ロードレースを経験。友人の影響でトラック競技をやり始め、15歳から短距離の国内選手権に出場する。その後ジュニア欧州選手権、U23欧州選手権などでメダルを獲得するなど実力を発揮。2022年頃から国際大会で上位に名を連ねるようになり、パリオリンピックではケイリンで銀メダルを獲得。2025年の世界選手権でスプリント、チームスプリント、1kmタイムトライアルで優勝を飾り、同大会で1kmタイムトライアルの世界新記録を樹立した。

text by Sportiva

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