この記事をまとめると
■セキュリティシステムや防犯カメラなどの普及で車両盗難は全体として減少傾向にある



■それでも無くなってはおらず、クルマ好きにとってみればおちおち枕を高くして寝てもいられない



■車両盗難被害にあったとある人物の不幸な物語を紹介する



駐車場にある愛車から感じる違和感

クルマ好きとしてもっとも耐え難いことといえば、事故や悪質ないたずらで愛車にダメージを受けることでしょうか。あるいは、盗難というのも心に深い傷を負うものかと。近年はさまざまなセキュリティデバイスや防犯カメラの増加といった環境面から少なくなってきているかのようで、実際、発生件数は減少傾向にあり、検挙率は向上しています。



が、恐ろしいのは盗難車両の4台に3台は「キーなし」状態で、また約3分の1が一般住宅で盗まれているということ。つまり、ウチの駐車場に「ロック」して置いてあっても盗まれるときは盗まれるということにほかなりません。また、ナンバープレートが盗まれるケースも増加しており、クルマ好きとしてはおちおち高い枕では眠れないといっても過言ではなさそうです。



シャコタン化したな……と思ったらタイヤないじゃん! 人ごとじ...の画像はこちら >>



「およそ、私ほど運に見放された男もいないでしょう」タケイさん(仮名)は小さな背中を丸め、ため息まじりでつぶやきました。都下の団体職員で、そこそこのポジションを務めていますが、実家はちょっと知られた大地主の家系です(ただし三男なので立ち位置は微妙)。若いころからクルマに心血を注ぎ「週末の湾岸」や「大黒ふ頭」に自慢の愛車でたびたび出没していたそうです。



「一番はじめに盗まれたのはステッカーでした。当時●PTIONのステッカーは人気だったので、気軽に貼っていたのも悪かったのですがね」と昔を見つめるように目を細めるタケイさん。盗まれた場所は「多分、どこかのパーキングエリアでしょう。ボコボコのFC(RX-7)に乗った目つきの悪いふたり組がずっとこっちを見てましたからね」



シャコタン化したな……と思ったらタイヤないじゃん! 人ごとじゃない「盗難地獄」を見た男の悲惨すぎる末路



深夜とはいえ、照明も整備されているパーキングエリアでの大胆な犯行。タケイさんは苦々しげに口を歪めたのでした。



「次はアルミホイール、お約束ですよね」歪んだ口もとに小さな笑みのようなものが見えました。

「朝、ウチの裏にある駐車場にいくとなんとなく違和感があったんですよ。車高がやけに低いっていうね。いくら自分でもこんなにシャコタンだったっけと、笑ってしまいました」



ホイールを外した後、犯人はブロックを車体下にかませていったため、残されたクルマの車高が見事に下がっていたということでしょう。



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「車高が低いものですから、すぐにはホイールがないことに気づけませんでね。あやうくそのまま乗り込んで出勤してしまうところでした」恥ずかしげに鼻の頭をかくタケイさん。それにしても、盗難対策などは施していなかったのでしょうか。



「タイヤショップですすめられて、振動検知式のセキュリティデバイスをつけました。クルマの外からインジケーターがピコピコ光るやつ。ですが、あれこそ窃盗団にとって目印になってしまうのでしょうね。装備した翌週だったかな、再びシャコタンになってました。警報音? まったく聞こえませんでしたよ。やつら、解除用のリモコンでも持ってんじゃないですかね」



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筆者が知るケースでは、ショップのセンサー取付担当者が窃盗団とグルだったこともあります。

それをやんわりとタケイさんに伝えると「私も頭に浮かびましたが、証明のしようもないでしょう。それでも泣き寝入りだけはしたくなかったので、保険料が上がるのを承知で車両保険を使いました」



ただでさえ高額になりがちな車両保険ですが、盗難事案によって料率が上がってしまうのは痛い出費。「それでも、クルマを盗まれるよりはましだと思っていたのです」そう言うと、タケイさんの瞳に獣のような光がともりました。



いまも昔も人気モデルは盗難対象になりやすい

「当時、AMGのC36は人気車で、納車に1年も待たされていました。辛抱できなかった私はディーラーで即納できるC230を手に入れて、ルックスだけでもAMGにしようと思い、200万円ほどかけてドレスアップしたのです」



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タケイさんによれば、外装はもちろん内装もレザーシートを張り替え、ブラックアイドメープルのパネルやシフトノブなど「AMGのセールスマンが見てもC36としか思わない仕上がり」だったそう。ですが、このマニアックさが裏目に出ました。「空港の場外パーキングで盗まれました」。



当然、パーキング側の補償などもあったでしょうが、顛末は意外な方向に。



「1週間もたたないうちに、パーキングから『戻ってきました』との連絡がありました。私のC230が、きれいな状態のままパーキングの裏手に置き去りにされていたというのです。パーキング側は不思議そうにしていましたが、犯人は乗ってみたら本物のAMGでないのがわかったのだと思います」



普通の人からしたら「不幸中の幸い」などと受け止めるかもしれませんが、クルマ好きなタケイさんにとっては「不幸も不幸」で、愛車が勝手に他人の手で運転されたのですから煮えくり返る思いだったに違いありません。



「悔しいとか、頭にくるというのを通り過ぎて、しばらくは茫然自失といった状態でした。

が、ラッキーなこともあってディーラーのほかに頼んでいた業者からC36の即納車が見つかったという連絡が入り、予定よりも早くAMGに乗れたのです」



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奇妙なことに、ここでタケイさんの表情が少しだけ曇ったのです。



「いま思えば、もしかしたらあのC36も盗難車だったのかもしれません。詳しくは言えませんが、やけに安かったし、あとで調べたところ名義変更のタイミングに不自然なところもありましたから」



言葉を濁したものの、タケイさんはなにか確信めいたものがあるようでした。



まったく憎むべき窃盗犯ですが、驚くべきはC36の超絶人気! 同様にランクルも窃盗犯から徹底的に狙われた時期がありましたっけ。



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「ああ、兄貴たちのランクルもやられました。犯人たちは捕まったそうですが、クルマは大陸に送られたようで返ってくることはありませんでしたけどね。テロ組織とかに使われてなければいいね、なんて家族で心配しましたよ」



なるほど、盗難車のほとんどは海外に送られるとは聞いていましたが、まさかテロ組織とは! 実際、資金に余裕がある組織はランクルやレクサスに目がないとも。たしかに、自分の愛車が犯罪、とりわけテロ活動に使われているなど、クルマ好きにとっては悪夢以外の何物でもないでしょう。



さて、タケイさんの不運はこれだけにとどまりませんでした。さらなる悲劇はつい最近のこと。



「ずっとクルマにうつつを抜かしていたせいでしょうか、女房に逃げられましてね。出張から帰ったら家の中はもぬけの殻。

預金通帳やら金目のものは一切合切なくなっていましたけど、一番つらかったのは買ったばかりの(マセラティ)MC20を持っていかれたこと。なにしろ予約してから2年も待ちましたからね」



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たしかに同情を禁じえませんが、どこかしら納得しがたい思いも(笑)とにかく、盗難事件に油断は禁物! くれぐれもお気を付けくださいませ。

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