この記事をまとめると
■クリーンエネルギー車にはCEV補助金が用意されている



■しかし電気自動車や燃料電池車は高価だ



■経済的に余裕がある人への補助金に意味はあるのだろうか



トリクルダウン理論からすると正しい

電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)といったクリーンエネルギー車(CEV)には購入をアシストするCEV補助金が用意されている。



残念ながら、令和4年度の補助金は2022年12月15日到着分をもって申請受付を終了してしまっているが、もろもろの条件を満たすと、EVであれば最大92万円(軽EVは最大55万円)、FCVは最大238万円もの補助金が設定されていた。また、プラグインハイブリッドやクリーンディーゼル車にも補助金は用意されている。



たとえば、最大92万円のCEV補助金が設定されていたモデルとして日産アリアがあるが、補助金の金額を決定した当時の車両価格は税抜き490万円だった。



高額なEVやFCVに補助金って金持ち優遇だろ! 安いクルマし...の画像はこちら >>



税込みにすると500万円半ばに迫ろうという価格帯のクルマを買えるような経済的余裕のある人よりも、庶民がクルマを買いやすいよう補助金を給付すべき! という見方があるのも事実だ。



はたして、CEV補助金は金持ち優遇策といえるのだろうか。



金持ち優遇策には、経済全体を活性化させるというトリクルダウン理論がある。詳細については「トリクルダウン」で検索すれば経済学の専門家による意見を見ることができるのでここでは省略するが、要は金持ちを優遇すると庶民にもおこぼれがあり、経済全体に好影響があるという理論だ。



高額なEVやFCVに補助金って金持ち優遇だろ! 安いクルマしか買えない庶民こそ「補助金が必要説」は正しいのか?
三菱アウトランダーPHEVのフロントスタイリング



シャンパンタワーのような状態をイメージするとわかりやすいが、満遍なく補助金を給付するよりもトップ層にだけ給付するカタチにすれば給付という行為にかかるコストが抑えられるという見方もできるだろう。



そんなトリクルダウン理論には、現実的には効果がないといった否定的な見方も少なくないが、こと新車販売においては過去に実績にある手法ともいえる。



売れるほどにコストダウンが進み普及が加速する

日本の自動車市場は、世界的にも珍しいほどハイブリッド比率が高いという話を目にしたことはあるだろう。



これは、主に2009年と2012年に実施された「エコカー補助金」の成果とする見方もある。経済産業省のまとめた資料は、給付した政府側に都合よくしようというバイアスがかかっているかもしれないが、たしかにエコカー補助金は自動車販売全体に好影響があったといえるのだ。



また、EVを中心とするクリーンエネルギー車は、その性能からするとまだまだ割高であるのも事実だ。いくら金銭的に余裕のある富裕層だからといって、割高な商品に食指は動かないだろう。

そこで補助金を設定することで購入へのインセンティブが生まれる。



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日産サクラのフロントスタイリング



クルマに限らず工業製品は売れるほどにコストダウンが進み、さらに普及が加速するという傾向がある。普及の呼び水として富裕層がお金を出すように仕向ける補助金というのは意味があるのだ。EVほどの高価格ではなかったが、過去2回のエコカー補助金によってハイブリッドカーが普及したことを思えば、けっして筋の悪い政策とはいえないだろう。



とはいえ、「庶民の我々は新車など買えず、中古車が購入対象なのだから補助金など関係ない」という意見もあるだろう。そう決めつけるのは早計だ。



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中古車のイメージ



昨今の中古車相場は納期遅れの影響で新車並みのプレミア価格をつけていることも少なくないが、基本的には新車価格と中古車価格は連動する。具体的には、新車価格が下がれば、同等クラスの中古車価格も下げる傾向にある。



一時期、EVの中古車は安いというトレンドだったが、そこには補助金の存在も影響していた。メーカー希望小売価格が400万円だったとしても、85万円の補助金が設定されていれば、新車価格は315万円相当として中古車市場は判断せざるを得ない。



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日産リーフ(初代)のフロントスタイリング



実際、数年前はそうした影響によりEVの中古車相場がかなり下がっていた。それによって、庶民の予算感でも中古EVが購入しやすかったのも事実だ。

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