この記事をまとめると
■ホンダが「SmaChari(スマチャリ)」という電動アシスト自転車を発表■コーダーブルームの自転車をベースとしてY'sロードにて9月より販売を行う
■販売予定価格は22万円(税込)となっている
今度はホンダが電動自転車に挑戦
F1やモトGPといった世界最高峰のモータースポーツの現場から、世界中の空を飛ぶ飛行機や大海原を航行する船、それから我々がもっとも親しみを持っている自動車まで、ありとあらゆる乗り物を手がけている企業。それがホンダという会社だ。
また、このほかに発電機やバッテリーや耕運機、製品化はされていないが、二足歩行のロボット「ASIMO」といった近未来的なモノまで手がけていた。
そんな「何でも屋」みたいなホンダだが、ルーツを遡るとじつはもっと小規模なモノから始まったメーカーだったりもする。かの有名な創業者、本田宗一郎氏が最初に手がけたモノは自転車用補助エンジン(開発当時の会社名は本田技術研究所)。これは通称「バタバタ」と呼ばれるモノで、正式名称は「A型(エンジン)」という。とてもシンプルな製品で、自転車に補助エンジンをくっつけて漕がずに走れるという、バイクのような、現代風にいえばエンジンアシスト自転車(!?)のようなモノである。本田宗一郎氏の母親が自転車で大変そうに買い物に行く姿を見て、「どうすれば楽にしてあげられるか」というのが、この製品が生まれたキッカケであった。このとき使用したエンジンは、50ccの2ストローク仕様で、無線機の発電用エンジンを改造したモノだったという。

戦後間もない1947年ともなれば、乗り物はとても高価なものでとても庶民が買えるモノではなかったが、このバタバタはなんとか庶民でも手が届く価格でリリースしたためヒット商品となった。小さな製品ではあるが、これが現在のホンダになるまでの礎を築いたのだ。
つまり、ホンダのルーツは、遡ると「自転車」といってもそう的外れなことではないのかもしれない。

さて、前置きが長くなったが、ホンダの原点とも言える「バタバタ」が、なんとこの令和の時代に復活したとのことで、その詳細をお届けしよう。
今回ホンダから発表されたモノは「SmaChari(スマチャリ)」と呼ばれるユニットだ。

ホンダでは、社内や社外で自らプロジェクトを発案して企画、製品化まで行う段取りを応援する新規事業創出制度「IGNITION」というのがある。この「SmaChari(スマチャリ)」もそんな「IGNITION」を利用して誕生した製品というのが特徴。企画を主導したのは、入社以来N-BOXやN-ONEを中心にNシリーズの内装設計に従事してきた野村真成(のむら なおき)さん。自身の高校時代の実体験が生かされているという。

ちなみに、なぜクロスバイクベースなのかというと、現在の高校生たちは従来の「ママチャリ」と呼ばれる自転車ではなく、スポーティで快適な移動ができる「クロスバイク」と呼ばれる自転車を使って通学することが多いとの調査結果が出たそう。しかし、自転車を使うほどの通学距離ということもあり、移動がストレスになっている事実もあるという背景から、ホンダがそういった「長距離通学」や「自転車での移動」に関する課題を解決しようと動いた結果が今回の製品の誕生秘話だ。
今年の9月から販売スタート!
今回発表されたこの「SmaChari(スマチャリ)」は、ユニットだけでは販売されず、実際に製品化されている自転車とセットで展開されることになっている。
そして、この「SmaChari(スマチャリ)」の記念すべき第1弾として、今年の9月より販売を予定されるのが、国内の一流自転車ブランド「コーダーブルーム」より販売されるクロスバイク「RAIL ACTIVE(レイルアクティブ)」をベースとした「RAIL ACTIVE-e(レイルアクティブe)」だ。

軽量かつ高剛性なアルミフレームをベースに、軽快なスポーツ走行が楽しめるスポーツタイヤや耐久性の高いシマノ製コンポーネント(一部)を採用したモデルとなっており、重量も一般的なママチャリと呼ばれる自転車のおおよそ半分となる9.9kgを実現している人気のクロスバイクだ。
それに、ホンダが開発したこの「SmaChari(スマチャリ)」が組み合わせられる。販売は、日本全国に33店舗構える大手自転車販売チェーン「Y'sロード」にて行われる。

この「RAIL ACTIVE-e(レイルアクティブe)」のダウンチューブに搭載されるバッテリーは「24V/100A/250W」という仕様で、ユニット全体の重さは5kgほど。BB(自転車のクランクが装備されている部分」にモーターなどがセットされて走りをアシストする仕組みで、構造自体は一般的な電動自転車とそう変わりない。

アシスト可能な速度は、法律で定められている24km/hまでとなっているので、それ以上はアシストされずに通常の自転車として使用できる。これ以上の出力となると法規が変わってくるので、自転車の持つ魅力である「もっとも身近なモビリティ」から離れてしまうということもあり、今回はこのような仕様になっているという。
なお、形式認定を申請中とのことなので、販売日までにはちゃんと公道で乗れるよう現在調整中とのことだ。

と、ここまで「SmaChari(スマチャリ)」のパワーユニットに関する話などをしてきたが、このユニットの1番の魅力はスマホ側のアプリにあると野村さんは語る。
この「SmaChari(スマチャリ)」を利用するためのアプリには、地図データなどを表示する機能があり、この地図にはホンダが販売しているクルマから得たデータを元に「急ブレーキポイント」などの事故が起きやすい地点を反映するサービスが搭載されている。これにより、自転車に乗る人が「危ないポイント」を把握することができるので、より安全に自転車に乗ることができるのだという。

また、自動車メーカーらしいのが「SmaChari(スマチャリ)」のアプリ設定を通してモーターを制御する「急発進抑制機能」の存在だ。

また、スマホが自転車のカギとなり、かざすだけで電動ユニットのロックを解除することもできるので、セキュリティ面も一般的な自転車より強化されている(NFCによる操作なのでNFC非搭載端末はアプリ経由でロック解除が可能)。ただし、自転車本体の物理的なロックとは連動していないので、電動ユニットのロックとは別にチェーンなどで自転車本体にも鍵をかけることを強くオススメするとのこと。
そのほか、フレンド機能などを搭載していたりするので、位置情報などを友人同士などでシェアすることも可能。アプリなので販売後にさまざまな機能を追加していきたいとも野村さんは語ってくれた。アプリのDLは無料となる。
自転車にはホンダのロゴなどが記載されず、あくまでアプリ側のみにホンダのロゴが出る仕立てになっているそうで、今後はコーダーブルーム以外の自転車などにも技術提供をし、幅広く展開していく予定とのこと。

自転車本体の価格は22万円(税込)となる。価格は若干張るかもしれないが、ホンダが手がけた新しいサービスといつでもどこでも乗れる自転車という組み合わせと考えれば、決して高すぎるということもなさそうだ。何より、ベースがスポーツタイプの自転車なので、高級感があるところもポイントと言えよう。
余計なお世話かもしれないが、個人的には「高校生向けのサブスクリプションサービス」や「学生限定レンタルサービス」を用いて「月額制の3年契約/修理や点検は期間中は無料」みたいな展開をすれば、より高校生をはじめとした学生たちに魅力が広がるのではないだろうか? と思ったりもした。
令和に蘇った最新の「バタバタ」は可能性の塊といえそうだ。
