この記事をまとめると
■道路運送車両の保安基準で、自動車へのバックカメラ装着が義務付けられている■バックカメラ装着車両に乗ると、その利便性を大いに感じることができる
■しかし、バックカメラにはまだまだ多くの問題がある
2024年5月にはすべての新車に装着されるバックカメラ
国土交通省が定める道路運送車両の保安基準において、二輪車を除く自動車にはバックカメラの装着が義務付けられている。当面は新型車に限られているが、2024年5月以降は、継続生産されている現行モデルにも適用され、中古車以外はすべての新車に装着されることになる。
バックカメラ装着車に一度でも乗ってみると、その利便性に大いに助けられる。
筆者も運転初心者の娘が購入するクルマの必須条件としてバックカメラ装着車であることとしたほどだ。
バックカメラは通常、リバースギヤにセットすると自動的に作動し、ナビゲーションモニターなどに後方の景色が映しだされ、人や障害物の有無などがモニターを通して視認できる。慣れてくればクルマの後方をミリ単位で障害物に寄せることも可能だ。

しかし、問題点も多く抱えている。ドライバーは後退時直接後方確認をしなければならない義務がある。モニターに100%頼って後方確認を怠ってはいけないということだ。しかし、そのモニターは通常ドライバーの前方にセットされており「モニターを見る=後方を直接視認していない」という矛盾が生まれるのだ。結局、ドライバーはモニターを見たり、振り返って後方を直視したりと忙しく首を振りまわさなくてはならず、人によっては方向感覚を失い、誤操作の原因になりやすい。
また、バックモニターが映し出す映像の範囲や画質も問題だ。後部バンパーの周辺しか映し出さないようなカメラならモニターを頼るのは最後の後ろ寄せの瞬間だけになる。

ワイドカメラを搭載し、幅広くモニターできるカメラの場合も、比較的近くから近接してくる自転車などが最初は小さく映り、いきなり画面中央に現れるように見える。
バックカメラにはまだまだ課題も多い
また、夜間や悪天候時の視認性も問題だ。ほとんどの車両においてバックランプは路面や周囲を照らすのではなく、近接車両等に後退中であることを知らせる程度の光量しか持たされていない。真っ暗闇のなかではその小さな光量に反射するものしかカメラに映らず、相当低速で後退しないと映った瞬間に接触してしまいかねない。

雨天では水滴がカメラレンズ周辺に付着し、また雪道など走行後にもレンズ周辺が汚れ、後退前に拭き取らなければ使いものにならない。カメラレンズクリーナー機能を備えたモデル、使用時以外カメラレンズを格納し走行中に汚れが付着するのを回避出来るシステムを搭載したモデルもあるが、まだ稀だ。
近年は「アラウンドビューモニター」など車両周辺をモニターに映し出すシステムの搭載もブームになっている。バックカメラだけでなく、前方カメラ、サイドミラー下の側方カメラの画像をシステム内で合成し、さも車両周囲を360度見渡せているようにモニター上に表示している。

しかし、この方式も完全とは言い難い。まず車両の四つの角が死角になっていて肝心の部分が見えない。狭い路地を曲がる際に車体の角が視認できなければ意味がない。それにクルマの側面に添って立っている人は脚しか映らない。
こうしたカメラシステムの搭載を前提として車体デザインをしていない車両では、後方視界などで死角が大きく、カメラの汚れや故障、周辺環境が悪ければ直接視認することも難しくなっている。

バックソナーと組み合わせ、音や光の点滅で障害物との距離を知らせる機能も重要だが、結局のところドライバーが直接視認しやすい車体形状や、夜間は周囲を照らす照明装置なども必要だろう。
こうした装備、システムを完全に機能させられなければ自動運転など到底無理だろう。
クルマの周辺状況を100%正確にドライバーに認知させ、適切な操作に反映させる機能が自動運転以前にいますぐに求められているのだ。