この記事をまとめると
■クルマのCd値について詳しく解説■空気抵抗の大小を示す係数だ
■しかしCd値の大小だけで空力を論ずることはできない
「ボディ表面の空気がどれだけスムースに流れるか」を表す係数
空力フォルムという言葉がある。空力特性に優れたデザインのことを指す言葉だが、では、空力とは何だろうか? 少しむずかしい話になるが、空力すなわち空気力学とは、走行中の自動車に働く6つの力(係数)を総称したもので、その内訳は、横力係数、空気抵抗係数、揚力係数、ピッチングモーメント係数、ローリングモーメント係数、ヨーイングモーメント係数が、その構成要素となっている。
このうち、空気抵抗の大小を示す係数が空気抵抗係数で、一般にはCd値と呼ばれることで知られている。
もっとも、逆の言い方をすれば、前面投影面積が同じなら、Cd値の小さなクルマのほうが空気抵抗値は小さくなる。では、Cd値とはいったいなんなのか、という話になるわけだが、簡単に言ってしまえば、ボディ表面の空気がどれだけスムーズに流れるか、を表す係数のことである。自動車の場合で言えば、たとえばボディ面が滑らかな形状と突起物がある形状とでは、突起物が空気の流れに対して抵抗となるため、空気抵抗係数は大きくなってしまう。
さて、クルマのセールスコピーを見てみると、Cd値が小さい(空気抵抗が小さい)から、燃費性能(=高速性能)に優れる、という表現がなされている。まさにそのとおりなのだが、走行中の車両に発生する空気抵抗は、車速が低い場合には空気との間に粘性抵抗が発生し、これは速度の増加に比例して大きくなる特性を持つが、高速走行になると慣性抵抗(進路上の空気を押しのけてはじき飛ばすのに必要な力)が発生し、これは速度の2乗に比例して大きくなる特徴を持っている。
これを現実的な実車走行の例に置き換えると、60km/hで走行中にクルマが受ける空気抵抗の大きさを1とすると、速度が倍の120km/hで走行中にクルマが受ける空気抵抗は速度の2乗、つまり4倍の大きさになるのである。
新型プリウスのCd値は先代よりも大きい
自動車メーカーが燃費性能を向上させるために空気抵抗、すなわちCd値の良化に努めるのは、空気抵抗にはこうした特性があるためで、燃費性能を謳うモデル(たとえばハイブリッド車など)では、空気抵抗(Cd値)を小さくする工夫がデザイン処理で行われていることが見て取れる。実例を挙げれば、プリウスのデザイン変遷を見ればわかりやすいと思う。ボンネットからフロントウインドウにいたるAピラーの立ち上がり角度が、モデルを経るごとに寝た角度となり、車両を正面から見た場合、前面投影面積となる部分の空気流処理に細かな配慮が積み重ねられていることに気付くはずだ。
補足だが、最新のプリウスはCd値0.27と前モデルの0.24から0.03ほど後退した値となっている。これはボディトップの位置が前モデルより後方に下げられたためで、聞くところによると、これは車両デザインを優先させたための結果だとか。しかし、車両全体が受ける空気抵抗値を悪化させないようにするため、車高を40mm下げたりタイヤ幅を狭めたり(205から195幅)することで、前面投影面積の低減化を図ったり、エンジン効率の改善、車重の増加抑止対策などを煮詰めることで、燃費特性の向上が図られている。
しかし、Cd値の変化と燃費の関係をたとえば定常的なパーセンテージで捉えることはむずかしい。それは、車両それぞれが持つ特徴、エンジン排気量、前面投影面積、車重、走行抵抗などが異なるためで、現状断言できるのは、Cd値が向上すれば燃費特性の良化につながる、という事実関係だけだろうか。
ひと昔前、Cd値0.3といえば先進空力、エアロダイナミクスに優れた車両と言われていたが、先代プリウスで0.24、新型クラウンではこれを上まわる数値と聞くと、環境性能時代を迎え、Cd値に代表される空力特性が持つ意味を、改めて実感させられてしまう。

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