この記事をまとめると
■ガソリン価格の上昇でリッター200円超えが現実味を帯びてきている



■原油高の背景についてはコロナ禍以降の原油の需給バランスの乱れが指摘されている



■経済産業省は燃料油価格激変緩和措置を2023年9月末以降も実施するかを検討している



史上最高値を付けそうなガソリン価格

このところ、ガソリン価格の上昇が止まらない。



経済産業省・資源エネルギー庁が2023年8月16日に発表した「給油所小売り価格調査(ガソリン・軽油・灯油)」によると、レギュラーガソリン価格はリッターあたり181.9円となった。前週のリッター180.3円からリッター1.6円の値上がりで、これで13週連続での値上がりだ。

また、軽油と灯油もレギュラーガソリンと同じく13週連続の値上がりで、それぞれリッター161.4円、120.6円となるなど燃料油が高騰している。



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この調査が始まった1990年以降、最高値は2008年8月の185.1円であり、このペースでいくと最高値を更新しかねない状況にある。



エネルギー分野の専門家はメディア向けのインタビューで「リッター200円超えが現実味を帯びてきている」とコメントしているほどだ。



今回の調査値の発表がちょうど、お盆休みの時期だったこともあり、テレビやネットのニュースでは”庶民の移動にとって大きな打撃”といった切り口で取り上げているところだ。



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お盆で渋滞する高速道路



なお、こうした調査値とは別に、ガソリン価格は全国各地でかなりのバラつきがある。



ガソリンスタンドとしては、輸送コストを含めた仕入れコストが違ったり、また周囲のライバルスタンドとの競争をどう捉えるのかという各社の経営判断があるからだ。その結果、都道府県や各地域でガソリン価格に違いがあるのが実状だ。



ガソリン価格の上昇には不安定な経済が大きく影響

では、ガソリンの元値が高くなっている背景には何があるのか?



経済産業省資源エネルギー庁のホームページには、「ガソリン価格は原油価格に連動して、価格が決定している」と表記されている。



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ガソリンスタンドのプライスサイン



実際、総務省などによる資料によれば、1970年代初頭のガソリン価格はリッター50円程度だったが、1970年代中盤の第一次オイルショックで100円の大台を超え、第二次オイルショックで170円後半まで一気に上がった。



その後も、アメリカでの金融危機であるリーマンショックなど、グローバルでの経済のバランスが崩れると、原油価格が変動しガソリン価格が乱高下してきたという経緯がある。



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金融危機のイメージ



そうしたなか、直近でのガソリン高の理由、つまりは原油高の背景については、コロナ禍以降の原油の需給バランスの乱れを指摘する声が多い。つまり、コロナ禍になり、グローバルで経済が冷え込んだためガソリンなどの需要が一気に減り、原油価格が下がったため産油国が生産を引き締めた。

それが、コロナ禍が進み国や地域によって徐々に経済活動が再開しているなかで、ガソリンの需要が増えてきても原油の供給が追いつかない状況が生まれた。または、産油国の政治的な判断などで原油の供給量が需要に対して低い状態が続いている、という解釈だ。



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石油コンビナート



ロシアのウクライナ侵攻も大きく影響している。ロシア産の原油輸出が滞り、とくに欧州ではエネルギー安全保障の観点で新しいエネルギー源を確保するため、水素の利活用に向けた動きが一気に加速している状況でもある。



さらに、原油の輸入国である日本とすれば、円安であることが原油高に直結している。



こうした状況で、経済産業省資源エネルギー庁では、これまで「コロナ禍からの経済回復の重荷となる、燃料油価格の高騰を抑制する対策」として「燃料油価格激変緩和措置」を実施してきた。これは、燃料元売りが国に申請することで、国から原資を支給する仕組み。これにより、ガソリンスタンド等の燃料油販売業者の販売価格が抑制される。



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経済産業省の看板と庁舎ビル



現在(2023年8月中旬)では、この措置の実施期間は「2023年9月末まで」としているが、同省は今度の市場動向を注視していると報道されている。



果たして、ガソリン価格はどのあたりで高止まるのだろうか?

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